中山優馬、ジャニーズを辞めようと思った過去 それでも「ジャニーズにいて良かった」
児童相談所虐待対応ダイヤルを冠した映画『189(イチハチキュウ)』(公開中)で苦悩する主人公を演じた中山優馬が、本作への熱い思い、そして多くのアイドルグループが所属するジャニーズ事務所で、俳優として生きる覚悟を決めたきっかけを明かした。
実際に起こった事件をモチーフにした本作は、新米児童福祉司・坂本大河(中山)が、児童虐待にまつわる現実に苦悩し、葛藤しながらも、子どもの命を救うべく奔走する姿を描く。
中山は、役づくりにあたり、大河の年齢や生い立ちを踏まえ「なぜそうした行動に至るのか」を紐解いていったという。児童相談所の仕組みや現状について学んだからこそ、感情に突き動かされて大河がとる行動を「不自然」とも表現した。「本当に正しい行動なのかわからない。正解がないという難しさがありましたね」と作品が完成してもなお考え続けている。
中山は本作を「残酷だけど、愛の物語」と表し、タイトルでもある“189”が広く知られることを願う。「危険性を感じたらすぐ“189”に電話するっていう行動に繋がればいいなと思います。110番じゃないので、ためらわなくていい。間違いであることがむしろ、嬉しいわけですから」
社会的なテーマを描く本作へのオファーに対し「ぜひやりたいです」と即答。主演であることは後に知ったという。「何年経っても、その時代のテーマを残し続けられるのが映画の魅力だと思います。とくにこうした作品は、嘘をついたら見抜かれてしまう。だからこそ本気で向き合いたいし、伝えていきたい」と熱い思いを口にする。映画への思いを強くしたきっかけは、主演を務めたドラマ「北斗-ある殺人者の回心-」(2017)だった。ドラマ作品ながら、映画方式で撮影されており「ワンカットに懸ける思い、ワンカットの重み」を知った。「本気でつくる熱量に感動しましたし、僕も『一瞬に懸ける俳優でありたい』と思いました」と瞳を輝かせる。
中山が芸能活動を始めたのは2006年、12歳のころ。芝居の道に進みたいという思いが芽生えたのは「15歳」ときっぱり。きっかけは、主演作「恋して悪魔 ~ヴァンパイア☆ボーイ~」(2009)のオンエアを観たことだった。「『なんや、こいつの芝居。おもろない!』って思ったんです。正直、もっとできてると思っていました。もっとこうしていれば、みたいな後悔が強かった」と振り返る。また、同世代の染谷将太や仲野太賀の存在も大きかった。彼らが自分たちでカメラを回し、映像を編集する姿に刺激を受け、当時住んでいた地元・大阪で友人らと短編を作ったこともあったという。「やりたい道は完全に俳優だと、その頃には決まっていました」と述懐する。
当時の中山はまず「全力で取り組むこと」から始め、俳優としてやっていきたい思いは、15歳で道を決めたときからマネージャーに伝えていたという。「それまでは全力の意味もわからないまま、こなしていた部分もあったと思うんです。でもそこからは本気で、全力で取り組んで、そのときのベストを尽くしました」と包み隠さず打ち明ける。それでもなお「もっとできたはず」と撮了後の後悔は尽きないというが「撮影時より成長した証だと思っています」と前向きに受け止めている。
俳優として「ジャニーズ事務所所属」という意識は「あまりない」という中山。「ないって言ったら失礼なんちゃうかな」と気を配りながら、会社への率直な思いを述べる。「俳優の事務所ではないですから、何回か辞めようと思ったこともありました。でも、やりたいことを選択させてくれるっていうのは、ジャニーズにいて良かったなって思います。舞台での表現では歌やダンスの経験も活きますし、ありがたいなって」とジャニーズだからこその強みも見つけている。「それに、すばらしい俳優さんがいっぱいいらっしゃるので。岡田(准一)さんは、俳優に活動を絞っていなくともすごい存在ですから」と先輩の活躍も、中山の夢を後押ししているようだ。
俳優に道を定めて10年超。現在は「まだまだチャレンジしていきたい時期。目標は『30歳で役者になる』こと。30歳には役者として一本、筋を通したいんです。それまでにどれだけ経験を積んで振り幅のある仕事をしたかが大事だと思うので、チャレンジしていきたい。そこからは、守るところ守りに入ります(笑)」と冗談っぽく笑った。柔和で、サービス精神旺盛な中山は、自身のパブリックイメージに少々疑問符を抱いているよう。最後に、27歳の素顔を教えてくれた。
「そんなに真面目じゃないのになぁ、とは思いますね。人に見られているときは真面目にしますもん(笑)。僕は凝り性ですね。好きなことはやりすぎちゃう。料理、釣りが趣味で、今日も魚を捌いてからここにきました」と笑った。先述した、学生時代に撮影した映像作品においても、監督・脚本・カメラマン・出演まで担った。本人はその作品を「ひどかった(笑)」と振り返り、遊びと表現するが、10代当時に50分ほどの作品まで撮ったというのだからその熱量は本物だ。中山はこの先も「一瞬に懸ける俳優」をポリシーに、ワンカットにこだわり続けていく。(取材・文:新亜希子)