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オスカーノミネート直前予想!『ドライブ・マイ・カー』はどこまで食い込めるか

第94回アカデミー賞

『ドライブ・マイ・カー』はどこまで食い込めるか?
『ドライブ・マイ・カー』はどこまで食い込めるか? - (c) 2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

 第94回アカデミー賞のノミネーション発表が目の前に迫った。日本人として今年一番気になるのは、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』がどこまで食い込むかである。国際長編映画部門に候補入りするのはもはや当然。そこで喜んでいる場合ではない。今、非常に勢いがついている今作の場合、作品、脚色、監督など主要な部門に期待しても、決して野心的すぎるわけではないのだ。(文:猿渡由紀)

【画像】カンヌのトロフィーをしげしげと眺める西島秀俊

 オスカーに候補入りするか、そして実際に受賞するかどうかには、作品や演技の質はもちろんのこと、それ以外のXファクターも関わってくる。「投票者の心理」や「勢い」などだ。「投票者の心理」というのは、例えば「この人にはそろそろ取らせてあげるべきだ」というような気持ち。今年、主演男優部門で『ドリームプラン』のウィル・スミスが最有力視されるのも、彼の演技が素晴らしい上、その要素もプラスされるからだ。「勢い」は、言うまでもなく盛り上がり度。早すぎる時期にピークに達してしまって、肝心の投票の時には下火になったということを避けるよう、キャンペーン担当者は頭を捻り、あらゆる努力をする。それでも、これは思うようにコントロールできるものではない。

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 だが『ドライブ・マイ・カー』には、今、とても勢いがある。それも、急に来たわけではなく、時間をかけて静かに高まってきたものだ。まず12月頭に、ニューヨーク映画批評家協会賞で、外国語映画賞を飛び越えて作品賞を受賞。同月半ばには、ロサンゼルス映画批評家協会も同様に今作に作品賞を与えた。さらに1月上旬には、全米映画批評家協会賞で作品、監督、脚本、主演男優の4部門を制覇するという快挙を達成してみせている。それ以外の批評家協会賞でも、軒並み外国語映画部門を制した。

 批評家賞に投票するのは批評家で、オスカーに投票する人たちとはかぶらない。しかし、批評家の仕事は映画を観ることであり、映画を作ることを仕事とするアカデミー会員より、ずっと多くの映画を観ている。「実はまだ候補になりそうな映画をあまり観ていなくて」というアカデミー会員も、ここまで良い評判を聞けば、「これは観ておかなければいけないな」と気に留めるというもの。そんなところへ来て、今月3日に発表された英国アカデミー賞のノミネーションで、『ドライブ・マイ・カー』は監督、脚色、非英語作品の3部門に食い込んだのである。これがさらなる勢いを与えた。

 オスカーと英国アカデミーの結果は必ずしも一致しないとはいえ、投票者のかぶりはあるし、オスカーの予測上、結構大事だ。例えばチャドウィック・ボーズマン(『マ・レイニーのブラックボトム』)の主演男優賞受賞が絶対視されていた昨年、英国アカデミーが『ファーザー』のアンソニー・ホプキンスに与えたと思ったら、オスカーもそうなった。英国アカデミーの監督、脚色部門に入ったことで、『ドライブ・マイ・カー』がオスカーでも主要部門に候補入りできる可能性は高まったと言って間違いない。

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 さらにラッキーなことに、今年はオスカー作品部門に10作品が候補入りすると決まったのだ。第84回以降、作品賞候補は「6本以上、10本以内」となっていたが、10本あったことはなかった。確実に10本まで枠を拡大したことで、外国語の映画である『ドライブ・マイ・カー』には、とりわけチャンスが増えたといえる。現実的に見て、『ドライブ・マイ・カー』の作品賞における立ち位置は、今のところ10本中の10本目。すなわちボーダーラインだ。『ベルファスト』『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のように、余裕たっぷりのところにはいない。『ドライブ・マイ・カー』の一番のライバルは、同様に英国アカデミーの作品部門候補から漏れた『愛すべき夫妻の秘密』『tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!』あたりと思われる。

西島秀俊
主演男優賞はどうなる? - 『ドライブ・マイ・カー』での西島秀俊

 さて、主演男優部門はどうか。西島秀俊は先にも挙げた全米映画批評家協会賞に加え、ボストン映画批評家協会賞でも主演男優賞を受賞しており、評価は高い。そもそも、静かで内向的な3時間の映画が、退屈させないどころか、後々まで余韻を感じさせるものになったのは主演俳優の実力があってこそだ。そこは多くが認めるところではあるが、なにせ他が相当にパワフルである。先にも述べたように、今年はウィル・スミスがいよいよかという空気があるし、他にもベネディクト・カンバーバッチ(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)、アンドリュー・ガーフィールド(『tick, tick...BOOM!~』)、デンゼル・ワシントン(『マクベス』)、レオナルド・ディカプリオ(『ドント・ルック・アップ』)など超大物が並ぶ。

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 しかし一方で、オスカーはサプライズを入れるのも得意だ。例えば2019年のオスカーでは、『ROMA/ローマ』のヤリッツァ・アパリシオが主演女優部門に食い込んでみせた。『ROMA/ローマ』も、外国語映画部門(※現在の国際長編映画部門)の受賞は当然視され(実際に取った)、作品部門でも最有力と呼ばれるところまでいった、外国の映画である。この前例と同じくらいに『ドライブ・マイ・カー』が突っ走れるものだろうか。まずは8日のノミネーション発表に期待がかかる。

第94回アカデミー賞授賞式は、3月28日(月)午前7時30分よりWOWOWプライム、WOWOWオンデマンドにて生中継

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