『ドライブ・マイ・カー』西島秀俊・岡田将生ら米アカデミー賞授賞式出席へ「いろんなものを見て感じたい」
第94回アカデミー賞
第94回アカデミー賞で作品賞をはじめ4部門でノミネートされている映画『ドライブ・マイ・カー』の出演者が、日本時間3月28日(現地時間3月27日)にアメリカ・ロサンゼルスで開催される授賞式に出席する。式の前日となる27日には、濱口竜介監督と主演の西島秀俊、岡田将生、霧島れいから4名が、ロス市内のホテルで開かれた記者会見に出席。それぞれが、本番直前の思いや授賞式での楽しみなどを語った。
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授賞式に合わせてロスに到着したばかりという西島は、「本当に映画を愛して、映画を制作している人たちの集まりなので、どこか、同じ制作をする仲間として参加して。後は、なかなか行けない場所なので、いろんなものを見て感じて、それを持ち帰って、日本の若い俳優、女優さんたちとスタッフと共有して、若い世代がもっとここに来れるように少しでも何かを伝えられたらと思っています」と真摯(しんし)に思いを語る。
また、霧島は「ずっと夢心地で、今も信じられない気持ちです。昔から映画館のスクリーンで観ている方達が同じ会場にいるのかと思うと、多分目の前で見ても信じられないといった感じだと思います。でも、なかなかできない体験なのでしっかりと味わって、目に焼き付けて楽しみたいと思います」と語った。
さらに岡田も、西島や霧島と同様に、今の気持ちを素直に明かした。「まだ現実味がないというか、本当に明日、皆さんとあの場に立った時に、やっとことの重大さがわかるというか。一生に一度の経験じゃないかと思うので、本当にその場でたくさんの人と会って、いろんなものを吸収したいと思っています」。
濱口監督は「本当に夢の世界というか。ハリウッドのみならず世界中から素晴らしい映画人が集まってくる場なので、いち映画ファンとして、あんなところにデンゼル・ワシントンが! あんなところにペネロペ・クルスがいる! といったことを単純に楽しみたいです。それと今年のアカデミー賞がどこにいくのかということですね」と笑顔。
先週からロス入りした濱口監督は、候補者として毎日多くのイベントをこなしてきた。特に印象に残ったのは、候補者たちとの夕食会で、共に監督賞にノミネートされた巨匠スティーヴン・スピルバーグと話ができたことだという。「みんながスピルバーグさんと話したがるので、なかなか順番が回ってこなかったんですが、でもお話しを伺えて。一つ一つ(の会話)が、映画史そのものでした。僕がとても尊敬しているジョン・カサヴェテス監督のところでインターンをしていた話とか、(ジョージ・)ルーカスと(フランシス・フォード・)コッポラと『スター・ウォーズ』を編集前に見て、最初に(タイトルロールが)上がっていくのは(ブライアン・)デ・パルマが提案したんだとか言うんですよ。『ドライブ・マイ・カー』に関しては、“家族みんなで観た。そしてとても素晴らしかったよ”と言ってくれました」と嬉しそうだった。
そして、ロシアによるウクライナ侵攻中に開催されるアカデミー賞について尋ねられると、濱口監督は、映画の可能性について次のように語った。「映画に何ができるのかとか、文化に何ができるのかということは、震災の時にも取り沙汰されましたが、この力を過大評価すべきじゃないと思います。映画では戦争は止められないし、直接的な力はないということ。もちろん戦争は起こるべきものじゃないし、すぐに収束してほしいと心から思っています。おそらく緊急事態みたいなものが終わった時に効果を発揮するのが、文化であったり、ひとつひとつの映画だというふうに思います。そのベースになっているものは、日常的な感情だと思うんです。日常的に誰かを愛したり、誰かを大切にしたり、そういう価値観というものが映画の中に自然と描かれているっていうことがすごく大事だし、それは実際そうした生活がないと、絵空事になってしまいます。我々にできることは、そんなに多くはないわけです。本当に、自分が出来ることをひとつひとつやっていくしかない。それが何かにつながっているということを信じるしかない、ということは思います。なので、外側に向けて大きくメッセージを発するということは自分にはできないけれども、とにかくひとつひとつ、時に批判を受けたら、それをちゃんと受け止めてやっていくしかないと思います」
『ドライブ・マイ・カー』は作品賞、脚色賞、監督賞、国際長編映画賞にノミネートされており、ハリウッド業界誌の予想では、国際映画賞での受賞が確実視されている。同部門以外に、どれか1つでも受賞することになれば、日本映画初となる作品賞、脚色賞受賞に加え、1955年に外国語映画賞と衣装デザイン賞を受賞した『地獄門』以来の複数部門での受賞という歴史的快挙となる。
授賞式には、脚本の大江崇允、山本晃久プロデューサー、韓国から出演したパク・ユリム、ジン・デヨン、ソニア・ユアン、アン・フィテらも参加予定。(取材・文・写真:吉川優子/細谷佳史・Yuko Yoshikawa / Yoshifumi Hosoya)