『夜を走る』佐向大監督、背中を押してくれた大杉漣さんに感謝
映画『夜を走る』初日舞台あいさつが13日、テアトル新宿にて行われ、本作のメガホンをとった佐向大監督が登壇し、故・大杉漣さんに背中を押してもらった企画が10年の歳月を経て公開できたことに感謝を述べた。舞台あいさつには足立智充、玉置玲央、菜 葉 菜、高橋努、玉井らん、坂巻有紗、宇野祥平も出席した。
本作は『教誨師(きょうかいし)』などの佐向監督が、人間の絶望と再生を描いたオリジナルストーリー。ある出来事がきっかけで、地方都市の鉄くず工場で働く独身男性の秋本太一(足立)と、妻子を持つ谷口渉(玉置)の平穏無事な日常が一変してしまうさまがスリリングに活写される。
大杉漣さんの最後の主演作となった『教誨師(きょうかいし)』のメガホンをとった佐向監督。本作は、約10年前に「こういう映画をやりたい」と大杉さんに相談したとき「やってみたらいい」と背中を押され、作品の原型ができたという。
佐向監督は「そこからだいぶ内容は変わったのですが、10年かけてようやく皆さんに観ていただけることができて良かった」と感慨深い表情を見せると「大杉さんは亡くなられましたが、きっかけを作ってくださった方。とても感謝しています」としみじみ語っていた。
佐向監督渾身の作品で、玉置と共にダブル主演を務めた足立は「これほどいろいろな経験をしてきた人間を演じるのは初めてでした」と語ると「皆さんに秋本という男がどう受け取られるのか、とても楽しみです」と期待を口にする。
一方、佐向監督の前作『教誨師(きょうかいし)』では、死刑囚を演じて高い評価を得た玉置は「前作で演じた役も、いろいろな面を持った男でしたが、今回演じた谷口という役も、日常生活での顔、会社での顔など、多面的な人物。『人間ってそうだよな』と思えるキャラクターだと思います」と一筋縄ではいかない人間であることを強調する。
無情な社会で生きる人間の絶望と再生が描かれた本作。佐向監督は「普段自分たちが考えている常識や倫理観が本当に正しいのか……。そんなことを考えてもらえるきっかけになれば」と作品に込めた思いを語っていた。(磯部正和)