朝井リョウ「少女は卒業しない」河合優実主演で映画化 2023年公開
「桐島、部活やめるってよ」「何者」などで知られる直木賞作家・朝井リョウの小説「少女は卒業しない」が映画化され、2023年2月23日より全国公開されることが決定した。女優・河合優実らが出演し、校舎の取り壊しを目前に控えたとある地方高校を舞台に、世界のすべてだった“学校”と“恋”にさよならを告げる4人の少女たちの卒業式までの2日間が描かれる。
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原作は、朝井が2012年に発表した連作短編小説。短編映画『カランコエの花』で、国内映画祭において計13冠に輝く中川駿が監督・脚本を手掛け、原作の魅力はそのままに群像劇へと構成を変え、繊細な少女たちの心の機微を描き出す。
『サマーフィルムにのって』『由宇子の天秤』などの話題作で多数の新人賞に輝き、数々の映画でバイプレーヤーとして存在感を発揮する河合優実が初主演。彼氏へのある“想い”を抱えながら卒業生代表の答辞を担当する料理部部長の主人公・山城まなみを演じ「誰もが生きる上で経験する『絶対的な終わり』をいまどう捉えて物語に向き合うか、じっくり自分に問いながら臨みました」と撮影を振り返っている。
そのほか、進路の違いから彼氏と離れることを選んだバスケ部の部長・後藤由貴役を『アルプススタンドのはしの方』の小野莉奈、中学校からの同級生に恋心を抱く軽音部部長・神田杏子役を『ヤクザと家族 The Family』で銀幕デビューした小宮山莉渚、クラスに馴染めず図書室に通いながら先生に密かな想いを寄せる作田詩織役をミスiD出身の中井友望が務める。
原作の朝井は、「十年以上前に書いた小説に新たな命が吹き込まれることを、本当に嬉しく、そして幸運に思います」とコメントする一方で、7編の物語から4編を抜き出して再構築する試みに当初は「正直難しいのでは」と思ったことを告白。しかし、脚本を読んでその心配はなくなったようで「とても巧みな再構築具合とセンスの光るオリジナル要素の数々に『これは映像で観てみたい』と素直に胸が高鳴りました。一人の観客として完成を楽しみにしています」と期待をかける。キャスト、監督、原作者のコメント全文は以下の通り。(編集部・入倉功一)
映画『少女は卒業しない』は2023年2月23日より新宿シネマカリテ、渋谷シネクイントほか全国公開
河合優実(山城まなみ役)
この映画は卒業というひとつのリミットに直面する高校生たちの群像劇です。誰もが生きる上で経験する「絶対的な終わり」をいまどう捉えて物語に向き合うか、じっくり自分に問いながら臨みました。また、主演という形でお話を頂き、肩肘張らずに挑もうとは思いましたが、やはり1番目に名前がくるとなると良いものを作りたいという気持ちがいつも以上にメラメラと燃えはじめたのを最初から感じていました。中川監督が有難いことに私たち若いキャストと常に同じ目線に立とうとして下さったので、なんとか感覚を伝えあおうと沢山言葉を交わしながらシーンを紡いでいきました。キャストの皆さんとの日々も、とても瑞々しく感じられる出会いや再会が重なった春でした。ラストカットを残して、皆が出番を終えて現場を去ってゆく体育館で、人知れず泣いてしまったほどです。あの時それぞれの中に映っていた景色が、観てくださる方の胸にもたしかに反射するような映画になっていたらいいなと願っています。
小野莉奈(後藤由貴役)
後藤の性格や思考回路はとても共感できてこの役を自分が演じられるのはとても光栄だと思いました。また脚本には描かれていないこれまでの後藤の人生も沢山想像した上で現場でどんな後藤という人物像が生まれるのかも楽しみでした。
中川監督は役者さん1人1人を信じて、寄り添いながら演出してくださる方だと思いました。私は監督が役者を信じて期待している感じが嬉しく、心地良くて、その気持ちにしっかり応えられるお芝居がしたいと想いながら毎日撮影に挑んでいました。
本当に撮影現場では共演者の子たちとよく笑っていました。同世代の子とたわいもない話をして、まるで学生時代にタイムスリップしたような感覚でした。大人になってから学生時代を追体験できる事はなかなか無いのでこの時間を噛み締めようと思っていました。今でもこの撮影期間は大切な思い出です。あと、中川監督にバスケットボールを熱血指導していただいたのも忘れません。笑
映画を見て、大人の方はきっと忘れていた思い出や学生時代の感情を思い出して初心に戻るような気がしますし、学生の方が見たら、今しかない時間を大事に生きようと思える作品なのではないかと思います。私は公開がとても楽しみです。
個人的な話ですが後藤のバスケシーン、本当に頑張ったので良かったら見てほしいです。笑
小宮山莉渚(神田杏子役)
私が今回の作品で演じさせていただいた神田杏子は、軽音部部長で、部員から頼りにされるしっかりした子なんですが、10代の高校生らしい部分もちゃんと持っている女の子だなーと思ったのが第一印象でした。普段の自分と近いところもあったので、映画を通して神田の魅力がたくさん伝わると嬉しいです。中川監督には、台本にとらわれずリアルな高校生を演じて欲しいと言っていただいたので、撮影中も普段学校に行くのと変わらない感覚で、監督を‘先生’と呼んでしまいそうになったり、年齢関係なく皆さん本当の同級生のように接してくださって、毎日がとても楽しかったです。私も卒業まで、これからの高校生活を悔いのないよう充実させていきたいと思います。完成した映画を観て更にいろいろな変化を感じられると思うので、今から楽しみです!
中井友望(作田詩織役)
私は作田という役を演じさせていただいたのですが、いい意味でああ何もしなくていいかも、と思えたほど最初から作田に寄り添えました。そんな風に思える役と出逢えた事が凄く嬉しかったです。
中川監督は、明確な提案をくださり監督の頭の中で毎秒映画が出来上がっていってるようでした。物腰は柔らかく必要のない緊張や不安を初めからふーっと消し去ってくれました。
撮影期間は冬の残りから桜が満開になる頃で、撮影に行きながら季節の移り変わりを感じていました。
人の数だけ物語や感情があり、それが合わさった時の心の振動は、生きていてよかったなと思えることのひとつです。そういうものがスクリーンから伝わればと思います。完成が楽しみです。
中川駿(監督・脚本)
初めて原作を読んだ際、少女達の繊細で複雑な心理描写に感銘を受けると共に、映像化することへの大きなハードルを感じました。それでも挑戦してみたいと思えたのは、やはり原作の持つ魅力や世界観に魅せられたからだと思います。
4人の少女を演じていただいた河合さん、小野さん、小宮山さん、中井さんはそれぞれが全く違う素敵な個性の持ち主で、ご自身の個性をなるべくそのまま作品に反映できるよう、キャラクター設定はもちろん、現場での向き合い方も意識して臨みました。
コロナ禍であり、天候や桜の開花具合に左右され、かつスケジュールもタイトな中での撮影でしたが、終わってみれば万事滞りなくやり遂げることができ、やはりこの作品には何かがあるなと感じています。
本作に関わっていただいたすべての方に感謝しています。
皆様の想いに応えられる作品になっていますので、ぜひ楽しみにお待ちください。
朝井リョウ(原作)
まず、十年以上前に書いた小説に新たな命が吹き込まれることを、本当に嬉しく、そして幸運に思います。そのうえで、企画をいただいた当初は少し戸惑いました。なぜなら、原作にある七編の物語から四編を抜き出し再構築するという提案だったからです。七編の物語は互いに関係し合っているため、三編を差し引いて組み立て直すとなると相当細やかな作業が必要だと感じました。正直難しいのではと思いましたが、いただいた脚本を拝読し、とても巧みな再構築具合とセンスの光るオリジナル要素の数々に「これは映像で観てみたい」と素直に胸が高鳴りました。一人の観客として完成を楽しみにしています。