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二宮和也“派手でもポジティブでもない”からこそできた役へのアプローチ

二宮和也
二宮和也 - 撮影:上野裕二

 アイドルグループのメンバーとして活躍する一方で、俳優としても高い評価を受ける二宮和也。2022年は日曜劇場「マイファミリー」で主演を務めると、映画『TANG タング』、そして最新作『ラーゲリより愛を込めて』(12月9日公開)では、第二次世界大戦終了後にシベリアの強制収容所に抑留された実在の人物・山本幡男さんを圧倒的な表現で演じ切った。劇中「生きる希望を捨ててはいけません」と仲間を鼓舞した山本さんだが、二宮は額面通りの解釈とはやや違った見方をしていたという。

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二宮が感じた山本幡男という人物

 第二次世界大戦後、満州で妻と子どもたちと離れ離れになった山本さんは、シベリアの強制収容所(ラーゲリ)で、絶望に打ちひしがれている抑留者たちに「生きる希望を捨ててはいけません。帰国(ダモイ)の日は必ずやって来ます」と言い続けた人物だ。

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 辛いながらも彼の言葉に救われ、何とか踏みとどまる抑留者たち。ある意味で希望の光となるような存在だが、二宮は「山本さんは本当にポジティブに希望を持っていたわけではなく、前向きな言葉を口にすることで、そういう人間であるように見せていたというか。そうやって精神のバランスを保っていた人なのかなと思っていました」と自身の解釈を述べる。

 山本さんはそのような人間を演じることで、自分自身でも「希望を持たなければいけないんだ」と気持ちを鼓舞し自分を律することができたのではないか……というのが二宮の見立て。さらに二宮は「生きて帰るんだという希望よりも、死にたくないという思い。“死にたくない”というニュアンスも難しい表現なのですが、結構ネガティブに捉えていたのではないか」という思いがあったという。

 こうした二宮の役への解釈、瀬々敬久監督を含めた製作陣の考え方……いろいろなものを落とし込んで、本作に登場した山本さんという男ができあがったそうだ。

自分たちがやりたいことと応援してくれる人たちが望むことが上手く合致していた

 自分の思いとは違っても、その場で求められる人物を演じることで、自身の心も前向きに捉える、ファンにポジティブな存在として夢を与えるアイドルを務めてきた二宮にとって、山本さんへのこうした解釈は自身の経験からきている発想だったのだろうか。

 「僕は派手なタイプの人間でもないし、そこまでポジティブな人間ではないので、山本さんへの解釈はある意味で、そう考えるのではないかな……という感じで。まあでも世の中的にも暗いより明るい方がいいだろうし、ネガティブよりはポジティブな方がいいに決まっている。だからあえて僕もネガティブに行くこともなかった。山本さんもそうなのかなという認識はありました」

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 自分のしたいと思ったことと、相手が求めることーー。その部分に対しても「自分たちがやりたいと思っていたことと、そのときに応援してくださる人たちが望むものというのが、うまく合致していたような気がします」とあえて“演じる”ことはなかったと語る。「僕らは距離感みたいなものを大切にしていたので、そこはうまくできていたかもしれません」

戦争映画ではなく、戦争がもたらした後遺症を描いた映画

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山本幡男氏を熱演した二宮和也 - (C) 2022映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 (C) 1989 清水香子

 劇中、ラーゲリにいた人々は、劣悪な環境のなか、食事もままならない生活を強いられていた。当然ながら、二宮演じる山本もかなりやつれた表情が印象的だった。

 しかし二宮は「僕自身、あまり何キロ痩せようとかいう部分は意識していませんでした」と語ると「そう見えることに意識を向けていたので、鏡を見て『痩せてきたな』というところが判断基準でした。正直そこまで“過酷だ”みたいな悲壮感も現実ではなかったです。一番の敵は寒さでしたね」と笑う。

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 あくまでラーゲリで起きていたできごとを「淡々と描こう」というのが意識していたことだという。「歴史の授業でも、近代史というのは、なかなか触れることがない時代だと思うのですが、実際にはこういうできごとがあった。しかも僕らの祖父の時代の話じゃないですか。その意味でまだ心が癒えていない人もいるというなか、あまり過大も過少もしないほうがいいというのは演じる側も、作り手にも共通認識としてあったと思います」

 二宮の祖父もシベリアで強制収容を経験。だからこそ「このお話をいただいたときは、なにか縁を感じる部分は強かった。この作品に参加しようと思った一つの理由ではありました」と述べると「この作品は戦争映画ではなく、戦争がもたらした後遺症を描いた映画。戦争はやってはいけないというメッセージよりは、戦争をするとこうした悲劇が起こるんだということを伝えるものだと思っています」と作品に込めた思いを語っていた。(取材・文:磯部正和)

スタイリスト:櫻井賢之[casico]

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