「鎌倉殿の13人」源実朝役・柿澤勇人、和田義盛役の横田栄司とはケンカもできる仲「お兄ちゃんみたいな存在」
現在放送中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(NHK総合ほか)で、鎌倉幕府第三代将軍・源実朝を演じている俳優の柿澤勇人。実朝は、わずか12歳で征夷大将軍に就き、御家人同士の権力争いに翻弄される。そんななか、安寧を目指す実朝の心のよりどころになっているのが、横田栄司演じる鎌倉幕府・侍所別当の和田義盛だ。主人公・北条義時(小栗旬)や義盛が長きにわたって苦楽を共にしてきた盟友の畠山重忠を討つなどシビアな展開が続くなか、実朝と義盛のシーンは“ホッコリ”とする温かさに満ち溢れている。その染み入るような関係性は柿澤と横田の公私にわたる信頼関係からきているようだ。
本作は、野心とは無縁だった伊豆の若武者・北条義時(小栗旬)が、初代鎌倉幕府将軍・源頼朝(大泉洋)から、世を治めるために必要なことを学び、武士の世を盤石にしていく姿を追う物語。柿澤演じる実朝は頼朝の子として、兄・頼家(金子大地)の後を継ぎ、第三代鎌倉殿として表舞台に立つことになった。
実朝役のオファーを受けるまでは、「正直、実朝について深い知識を持っていたわけではなかった」という柿澤。本作で脚本を務める三谷幸喜の「これまでとは違う、新しい実朝像を描きたい」という言葉を聞いて「相当プレッシャーがありました」とクランクイン前の心境を振り返る。
史実として12歳で征夷大将軍となった実朝は「鎌倉殿」とはいうものの、ある意味で傀儡(かいらい)政権のような状況だった。そんななかで、実朝が心を許し、リラックスした表情を見せるのが、和田の家に赴く時間だ。和田家で過ごす実朝は、目をキラキラ輝かせている。
柿澤いわく横田とは「これまで栄司さんとは舞台を何本か一緒にやらせてもらっていたんです」と、本作の撮影の前にすでに顔見知りだったそう。故・蜷川幸雄さんの後を継ぎ、吉田鋼太郎が演出を務めたシェイクスピアの舞台「アテネのタイモン」や、三谷幸喜作・演出の「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」では兄弟の設定で共演し、関係を深めていったという。
現在はコロナ禍で機会がないというが、「僕も栄司さんもお酒が好きなので、舞台で共演すると、稽古や本番が終わったあと、よく飲みに行っていました。共演者みんなで行くこともあるし、二人で飲むこともありました」と懐かしそうに語る。
横田を「芝居バカなので」と愛をもって語った柿澤。「そういうところが大好きだし、僕にとっては兄ちゃんみたいな存在なんです」と関係を明かすと「一度飲み屋で、二人で大げんかしたこともありました。それぐらい言い合える仲なんです。何でけんかしたかは覚えていないんですけれどね」と笑う。
また本作の実朝と義盛の関係について、柿澤は「シェイクスピアの『ヘンリー四世』という劇があるのですが、その登場人物のハル王子(ヘンリー四世の息子)とフォルスタッフ(ハル王子の親友)みたいに感じたんです」とシェイクスピア劇に例える。「僕も何本かシェイクスピアをやらせてもらって、栄司さんはそれこそものすごい数のシェイクスピア作品をやっているので、すぐ二人の関係は腑に落ちました」
実朝が義盛に惹かれた理由については「鎌倉殿として君臨しなければいけないけれど、自分には力がない。実朝は常に悩みを抱えているなか、魑魅魍魎(ちみもうりょう)のような御家人のなかでも、言葉は荒いけれど、とても純粋でピュアな義盛と一緒にいると、心が落ち着いたんでしょうね」と解釈を述べる。
実朝と義盛の関係も、時を経て徐々に変化していく。第38回「時を継ぐ者」では、義盛が実朝に対して「武衛(ぶえい)と呼んでいいですか」とにこやかに話しかけるシーンが描かれた。御家人同士の争いが絶えず血なまぐさい展開が続くなか、視聴者の間でも癒しの存在として親しまれる義盛。そんな義盛を慕っている実朝とのやり取りは今後も大きな見どころだが、柿澤は「史実として和田合戦など、シビアな展開が描かれていきますが、横田栄司さんという俳優の役者魂が存分に見られると思います」と今後の展開への期待を煽っていた。(取材・文:磯部正和)