東京国際映画祭が閉幕!グランプリは『ザ・ビースト』最優秀男優賞&監督賞の3冠
第35回東京国際映画祭
第35回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが2日、東京国際フォーラムにて開催され、スペイン・フランス合作映画『ザ・ビースト』(ロドリゴ・ソロゴイェン監督)が最高賞にあたる「東京グランプリ/東京都知事賞」を受賞した。ソロゴイェン監督はビデオメッセージで喜びを伝えた。
東京国際映画祭は10月24日から日比谷・有楽町・銀座・丸の内地区で開催。11月2日までの10日間にわたって主要9部門で111本の作品が上映された。コンペティション部門には1,695作品から選ばれた、3本の日本映画を含む15作品が出品された。審査委員長を『フリーダ』『アクロス・ザ・ユニバース』『グロリアス 世界を動かした女たち』などのジュリー・テイモアが務めた。
2日に行われたクロージングセレモニーでは、各賞の受賞結果が発表。『ザ・ビースト』がグランプリのほか、最優秀監督賞、ドゥニ・メノーシェが最優秀男優賞に輝いた。同作は、2020年に日本でも公開された『おもかげ』などで知られるスペインのロドリゴ・ソロゴイェン監督が手掛けた心理スリラー映画。スペインのガリシア地方の人里離れた山間の村を舞台に、移住して農耕生活を始めたフランス人の中年夫婦が直面する、地元の有力者の一家との軋轢がパワフルな演出で描かれる。
ソロゴイェン監督はビデオメッセージで「最優秀賞と東京グランプリ/東京都知事賞の2つをいただけるなんて本当に嬉しいです。授賞式に参加できないのはとても残念ですが、『ザ・ビースト』や映画祭、そして素晴らしい東京という街を楽しんでいただければと思います」とコメントを寄せた。最優秀主演男優賞を受賞したドゥニも「日本が大好きです。日本の文化は素晴らしい。日本に行くことを楽しみにしています」と映像を通して語った。
審査委員長を務めたジュリーは「深く感動的なラブストーリーであると同時に、階級の格差、外国人の排斥など都市と農村の隔たりなど、重層的なテーマが内在する並外れた映画。まさに傑作です」と称すると、プレゼンターとして登壇した小池百合子東京都知事は「世界は大変厳しい状況のなか、困難を克服して未来に進むのは芸術文化の多様性が欠かせない」と映画の持つ力に期待していた。
また、コンペティションの審査員を務めた女優のシム・ウンギョンは、最優秀男優賞と最優秀女優賞のプレゼンターを務めた。冒頭に、先日ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)で起きた事故に触れると「梨泰院の雑踏事故に、心から哀悼の意を表します。謹んで故人の、ご冥福をお祈り致します」と沈痛な面持ちで語っていた。
セレモニーの最後にジュリーは「第35回東京国際映画祭の審査委員長として、世界中から集まった幅広い映画作品について議論をする機会を与えられたことを光栄に思います。私たち審査員は北マケドニアからベトナム、スリランカ、スペイン、イタリア、チリ、カザフスタン、レバノン、イスラエル、イラン、そして日本のストーリーの中を旅しました。私たちの住む世界と大変異なる文化の持つ暗い面、明るい面を見ること、これがまさに映画祭の素晴らしい真の意義であると感じます」と力強く締めくくった。(磯部正和)
受賞結果は以下の通り
・東京グランプリ/東京都知事賞:『ザ・ビースト』ロドリゴ・ソロゴイェン監督
・審査員特別賞:『第三次世界大戦』ホウマン・セイエディ監督
・最優秀監督賞:『ザ・ビースト』ロドリゴ・ソロゴイェン監督
・最優秀女優賞:『1976』アリン・クーペンヘイム
・最優秀男優賞:『ザ・ビースト』ドゥニ・メノーシェ
・最優秀芸術貢献賞:『孔雀の嘆き』サンジーワ・プシュパクマーラ監督
・観客賞:『窓辺にて』今泉力哉監督
・「アジアの未来」作品賞:『蝶の命は一日限り』モハッマドレザ・ワタンデュースト監督
・Amazon Prime Video テイクワン賞:該当なし
・特別功労賞:野上照代