山崎賢人、大作主演の原動力は「限界突破と、仲間との再会」
映画『キングダム』シリーズ(2019~)では天下の大将軍を目指す孤児、日曜劇場「アトムの童(こ)」(放送中)では一発逆転を狙うゲーム開発者、Netflixシリーズ「今際の国のアリス」では壮絶な世界で命を懸けた“げぇむ”に挑む等身大の青年を演じるなど、底力と情熱で逆境を乗り越えていくキャラクターがハマる俳優の山崎賢人(「崎」は「たつさき」)。俳優は「孤独な職業だと思っている」と胸の内を明かした山崎が、ビッグタイトルの主演を張るプレッシャーとどう戦っているのか、そして自身を支える存在について語った。
人気タイトルの続編に「プレッシャーもあった」
山崎賢人と土屋太鳳がダブル主演を務める本シリーズは、麻生羽呂による同名人気漫画を実写化したサバイバルドラマ。ある日突然、命を賭けた“げぇむ”に強制参加させられる“今際の国”に放り込まれたアリス(山崎)やウサギ(土屋)たちが、元の世界へ戻るべく戦う姿を描く。Netflixシリーズとして2020年12月に世界同時配信されたシーズン1は、世界70か国以上でTOP10入りする大ヒットを記録した。
シーズン2でアリスは、難易度を増していく“げぇむ”に翻弄されながらも「この国の真相が知りたい」と、謎にまっすぐに向かっていく。人気タイトルの続編に臨む上で「もちろんプレッシャーもありました」というが、「シーズン1を観たときに、自分自身も衝撃を受けるような世界が描かれていて。さらにシーズン2では、植物化した東京やカーアクション、銃撃戦も描かれるということを聞いて、ものすごくワクワクした」そうで、「また視聴者の方に驚いてもらえるような作品を届けたい」とプレッシャーをやる気へと進化させて撮影に飛び込んだ。
死と隣り合わせの状況を強いられ、常に緊張&極限状態にいるアリス。撮影は「肉体的、精神的にもしんどいこともあります」と苦笑いを浮かべた山崎だが、「極限状態を表現することこそ、本シリーズの魅力。『きちんと表現したい』と気合いを入れました」とキッパリ。「シーズン2では、みながギリギリの状態に追い込まれて、その中でそれぞれの生きざまが見えてくる。『生きたい』という気持ちや、『生きることを諦めちゃいけないんだ』という力強さが描かれているので、僕もアリスを通してポジティブな生きていく力をもらったように思います」と充実感をみなぎらせる。
山下智久に圧倒される
アリスは出会いや別れを繰り返しながら、次なる“げぇむ”に進んでいく。新たに参戦するメンバーとのやり取りも大きな見どころとなるが、その中でも山下智久演じる新キャラクターのキューマは、アリスに大きな刺激を与える重要な存在だ。
原作と同じく、キューマは衣服をまとっていない姿で登場する。山崎は「あれだけの肉体を維持することは、ものすごく大変な作業だと思います。山下さんは、体も完璧に仕上げていて本当にすごかったです」と山下の引き締まった体を絶賛。
撮影の合間には肉体づくりについても会話が弾んだそうで、「『何を食べられているんですか?』と聞いたら、鶏肉だと。他にも『特にどの部位を鍛えていますか?』などいろいろと教えていただきました」と微笑みながら、「キューマは、アリスに大事なことを伝えてくれる人。さらに『なぜ裸でいるの?』という奇妙さもあるキャラクターで、人間なのか宇宙人なのかわからないような特別な存在感を、山下さんがすばらしく体現されていた。山下さんのオーラがなければ、キューマは表現できないような役どころだったと思います。山下さんが長年積み重ねてきた経験や、ご自身の生きざまもキューマに乗せて、アリスに言葉を伝えてくださったので、ものすごく響きました」とたっぷりと刺激を受けたという。
俳優は孤独な職業
「キングダム」シリーズの信や「アトムの童(こ)」の那由他、そして本シリーズのアリスなど、山崎には体当たりで壁に立ち向かっていく役柄がよく似合う。大切な仲間を失いながらも「生きていく」と決心するアリスの切実な表情を見ると、改めてそう感じる人も多いはずだ。山崎は「確かにその3人のような役柄は僕自身も大好きで、共感する部分があります。『やってやるぜ!』というハートはいつも持ち続けたいなと思っています」と告白。
正解のない“表現の世界”に挑み続ける役者業は、新たなチャレンジやプレッシャーがつきものの職業だ。「役者を続けていく上では『やってやるぜ!』という精神がなければ前に進んでいけないのかなとも思います。一つ一つの作品に向かう上で大事にしているのは、限界突破。でも逆に力を抜いた方が良い表現につながるときもあるので、難しいんですけれど……」と山崎もがむしゃらに、もがきながら役者業に打ち込んでいるが、「役づくりをしたり、どうしたらいいのかと考えたりしていくのは孤独な作業でもあって。役者業は、孤独な職業だとも思っています」と打ち明ける。
孤独の中で力をくれるのは、志を一つにしたスタッフやキャストの存在。「『決して一人で作品をつくっているのではない』と思うこと。『みなで一緒にいい作品にしようと思っているんだ』と感じること。デビューして間もない頃は自分のことに必死で、周りも見えていませんでしたが、作品を重ねるごとに、少しずつそうやって感じられるようになりました」。そして、以前作品を共にした人たちと「再会できること」も大きな喜びだといい、「仕事を続けていけば再会できることもあって、そういった方々とまた同じ作品で一つの方向を向いて頑張れるというのが、とてもうれしい」としみじみ語る。
本シリーズで言うならば、ウサギ役の土屋とはうれしい再会を果たしている。土屋とは、2012年放送のドラマ「黒の女教師」で初共演し、映画『orange-オレンジ-』(2015)や、NHK連続テレビ小説「まれ」(2015)など度々共演を重ねてきた。山崎は「太鳳ちゃんとは、10代の頃からいろいろな作品で一緒に頑張ってきて。もちろんつらいこともあるし、『僕らもまだまだ頑張らないと』という話をすることもあります。2人でよく話しているのは、『今こうしてポジティブな気持ちで作品に挑めて、一緒に新しい作品を届けられるのはすごく幸せなことだね』ということ。そんな瞬間もありながら、撮影の合間には他愛もない話でいつも笑っています」と頼もしい同志に信頼をにじませる。
そして、『キングダム』シリーズでも組んでいる佐藤信介監督の存在。山崎は「これだけの大作を撮影していても、佐藤監督は一人一人の役者の気持ちにきちんと寄り添ってくれるんです。そして監督ご自身がいつも『面白いものを作るぞ!』とワクワクしているので、こちらも楽しくなってくる」とにっこり。「佐藤監督とは長くご一緒させていただいていて、僕のこともよくわかってくださっている。『うまくいかないな』と思うようなときは、一緒に粘ってくれます。『信頼している』と声をかけてくださることもあって、その言葉があると自信を持ってその場に立っていられる。ものすごく心強い存在です」と再タッグの感慨を噛み締めていた。(取材・文:成田おり枝)
Netflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン2は12月22日より全世界独占配信