土屋太鳳、アクション開眼から8年 「今際の国のアリス」危機感も役につなげられた
世界で注目を浴びたNetflixシリーズ「今際の国のアリス」シーズン2(12月22日全世界独占配信)で、山崎賢人と共にダブル主演を務めている土屋太鳳。過酷な世界を生き抜くウサギ役として、シーズン2ではより進化したアクションを披露している(山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記)。
アクションの原点『るろうに剣心』との運命の出会い
麻生羽呂のコミックを実写化する本作は、ある日突然正体不明の“今際の国”に迷い込んだアリス(山崎)やウサギたちが、元の世界に戻るために命懸けの“げぇむ”に挑むサバイバルドラマ。土屋が演じているのは、クライマーのウサギ。シーズン2ではコンテナの上を爆走したり、高所からハイジャンプを決めたりと、前シーズン以上にウサギのアクションが光るシーンが満載。改めて土屋の身体能力に驚かされるが、そもそもアクションに興味を持ったのはいつ頃のことなのか。
土屋は「記憶にないくらい、小さな頃からです」と切り出し、「弟が映画『少林寺』(※ジェット・リー主演による1982年の中国・香港映画)が好きで、よく一緒に観ていました。ブルース・リーも好きですね。アクションは小さな頃からずっとそばにあったもので、大好きなものです」とにっこり。“観る側”から“演じる側”として覚醒したのは、『るろうに剣心』との出会いだと続ける。
「高校生の時に、映画館で第1作の『るろうに剣心』を観て衝撃を受けました。当時は週に2、3回くらい映画館で観ていたと思います。『わたしもこういう世界に入りたい!』『自分の運動神経をここで活かすことができたら』という気持ちが湧き上がりました」と熱っぽく回想。その約1年後、続編(2014年公開の京都大火編・伝説の最期編)のオーディションで操役を勝ち取った。「『るろうに剣心』で蹴りや突きなど基本的なことを教わり、徹底的に自主練も重ねました」というが、とりわけ大きな学びとなったのが、アクション監督である谷垣健治からの言葉。「谷垣さんから、『動ける人はいくらでもいる。でもその役として動けるのは、それを演じる人、一人しかいない。役としての動きを習得してほしい』とお話ししていただいて。その言葉はずっと、わたしが大切にしているものです」とアクションをする上でも、“役として生きる”ことが彼女のモットーだ。
子どもの頃からダンスが大好きで、日本女子体育大学では舞踊学を専攻して学んできた土屋。その学びもアクション力に注がれている様子で、「栄養面もそうですし、緊張がどのようにパフォーマンスに影響するのかなど、精神面について学べたことは今後も活かしていきたいです」としみじみ。「身体で何かを表現するってとても難しいけれど、だからこそ続けていきたい」と身体表現への興味は尽きない。
「親戚」のような山崎賢人とのコンビ“けんたお”の強み
「今際の国のアリス」は、積み重ねてきた土屋のアクション力を思い切り発揮できる作品となった。アクション監督の下村勇二による指導のもとトレーニングを重ねて本番に臨んだ土屋が、ウサギとしてのアクションで大事にしたのは「カッコ良く見せないこと」だという。「ウサギは運動神経はいいけれど、格闘技を習ったこともなければ、パンチや蹴りもやったことがない女の子。“カッコ良く見せない”ところがポイントです。それがとても難しくて! そこからウサギのがむしゃらさが伝わったらうれしいです」と願いを込める。
アリスやウサギの強敵となるリサを演じた山本千尋とは、肉弾戦に挑んだ。土屋は「ウサギは、攻めるというより“受け”なんです。“受け”のアクションによって、攻める人のアクションの見え方も変わってしまう。これまでは攻めのアクションをやることが多かったので不安もありました」と新境地に飛び込み、「受けのアクションでは普段とは違う筋肉の使い方をすることも多くて、首を痛めてしまうこともありました。そんなときは監督やプロデューサーさんが悩みを聞いてくださって、チームで作品をつくっていくってこういうことなんだなと実感しました」と告白。さらにコンテナから大ジャンプを決めるシーンは、「思っていたよりもすぐに本番が始まって!『もう本番!?』と戸惑いました(笑)。でもその危機感や緊張感も役につなげられたのかなと思います。それも信頼できるチームがいてこそ、できること」と振り返るなど、難易度の高いアクションシーンではとりわけチームの結束力が欠かせないようだ。
またダブル主演を務める山崎も、土屋にとって心強い存在だ。2012年放送のドラマ「黒の女教師」で初共演し、映画『orange-オレンジ-』(2015)や、NHK連続テレビ小説「まれ」(2015)など10代からたびたび共演を重ねてきた2人は、“けんたお”という愛称でも親しまれている。
その愛称について、土屋は「20歳くらいの頃から、“けんたお”と言っていただけて。『orange-オレンジ-』の公開時には、賢人くんとも『そんなふうに名づけてくれるんだね、ファンの方たちは本当にすごい! 頑張ってヒットさせたいね』と話していました」と声を弾ませつつ、山崎に関して「親戚のような、きょうだいのような感覚」と大きな笑顔。「10年も共演できるなんてなかなかないことですし、一緒にいると会話が途切れないし、笑いが絶えないんです。賢人くんの突然出てくる集中力や爆発力のあるお芝居は、本当に尊敬しています。また共演できるように、自分もちゃんと成長したい、負けないぞといつも思わせてくれます」とたっぷり刺激を受けている。
変化した、壁との向き合い方
時には仲間との殺し合いも強いられるハードな世界を舞台に、“生き抜く力”を描く本シリーズ。現在27歳の土屋が、30代に向けて芸能界で生きていくために大切にしたいと思っているのは、どのようなことだろう。
「以前は、壁が立ちはだかったら『どんなことをしてでも絶対にその壁を登らなきゃ!』と思っていました。でも今はストイックになるだけではなく、その壁をちょっと引いたところから、絵のようにして見てみるようにしたいと思っています。そうすると自分の力で乗り越えようとするのではなく、時には回り道をしたりすることで、何よりも周囲の人の力が必要なんだなと気づける。わたしは不器用なタイプですし『自分は天才じゃないんだから』と感じながら、前に進んでいます」
続けて「“役を生きる”ということを胸に刻んでこのお仕事をしていますが、それがうまくいかずにトラウマになってしまうこともあって。今でも『自分はお芝居に向いていないな』と悩むこともあります。大変なこと、苦しいこともあるけれど、でもやっぱり『このお仕事を楽しみたいな』と思うんです。同じ状況にならないように呼吸を整えたり、『スタッフさんや周囲の人と一緒にやっているんだ!』という気持ちを強くすることが、今のわたしの助けになっています」と真っ直ぐな瞳を見せた土屋太鳳。彼女のキラリと輝くひたむきさは、しっかりとウサギ役に映し出されている。(取材・文:成田おり枝)