仲里依紗、男女の役割の差に直面…自分らしくあるために
男女が逆転した江戸時代を舞台に、女将軍として生きた女性たちの葛藤と愛を描いたNHKドラマ10「大奥」。「きのう何食べた?」などの人気漫画家よしながふみの原作を、ドラマ「JIN-仁-」「おんな城主 直虎」などの森下佳子が脚本化して大きな話題を集めた。5代・徳川綱吉×右衛門佐編(放送中)で、美ぼうと教養を兼ね備えた綱吉を演じる仲里依紗が、権力を持つ女性にふんしたことで感じたことを明かした。
「わたしは歴史をよく知らないですし、時代劇は初めてだったので、所作もセリフもすべてが不安でした。最初にスタッフから『(家光役の堀田)真由ちゃんの娘の役です』と言われて『どういうこと?』って混乱しました(笑)。原作と過去の映像作品を何度も観て、収録現場でもいろいろ教えていただきながら、作品と世界観をわかっていった感じです」と明るく語る仲。「お芝居の中ではみんながわたしを『上様』って言ってくれて、わたしが『やれ』って言ったらやってくれる。最高すぎます! とても快感でした(笑)。衣装もド派手でギラギラしているのがたくさんあるし、セットも派手でカッコいいんですよ」と上様役を楽しんだようだ。
ただ、最高権力者として決断を迫られ、さらに世継ぎを生むことを強いられる綱吉について「孤独な人だと思いました」とも明かした。「奔放に、好きなように生きているようで、将軍としての定めを果たせていないと葛藤しています。しかも町の人たちからは『好き勝手しやがって』と文句を言われている。強がっているけど、実は弱い人なのかなと思います」と同情的だ。「いまは、子どもを生むかどうかはセンシティブな話題だと避けるご時世なのに、綱吉の時代は、自分の人生よりも次の時代のことだけを強いられる。つらいですよね」と本音を語った。
「やっぱり世の中、まだまだ男性が軸になって動いていくことが多いと思うんです。決断していかなきゃいけないプレッシャーは、女将軍を演じて改めて感じました。けど、女将軍は子どもを生むのも自分なんですよね。全部をやらなきゃいけないので、本当に大変だと思いました」と男女の差を感じたとしみじみ。「男女の役割が50:50になったら幸せかもしれないですけど、なかなかそうもいかない。たとえばいまの時代、男性が育児することの大切さが広まってきて、育休の制度が整ってきたのはすごくいいことですけど、まだまだ運用面でも意識の面でも万全とはいえませんよね。うちの息子はもう9歳になってだいぶ楽になりましたが、赤ちゃん時代は週一で熱を出して、病院に連れて行くのはわたし、その病気がうつって苦しむのもわたしで、本当に大変でした」と笑う。
とはいえ仲は、自身のYouTubeで仲睦まじい家族の様子を発信したり、女優としても本作のほか、映画『劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~』や配信ドラマ「離婚しようよ」などが控えたりと、仕事面の充実ぶりも目覚ましい。自分の人生を自分でコントロールできなかった綱吉とは対照的に、仕事も家庭も生き生きと両立させている。「すごく楽しいです」とニコニコ言い切る充実した毎日のために大切にしていることは、「思い立ったらすぐやること」だそう。「ほしいものがあればすぐに買います。もしかしたら明日はアメリカにいるかもしれないです(笑)。やらなかった後悔より、やった後悔のほうがいいと思うんですよ」と真っすぐだ。
「やると決めたら絶対曲げない。頑固なんです。15歳のときに、故郷の長崎から東京に出てこの仕事をやると決めたのも自分でした」というから、昔から決断力と行動力があったのだ。「自分で決めて行動することが、明るい未来につながると思います。実際に自分は、行動のひとつひとつに責任を持ってやってきました。それを見ていただいた方たちが応援してくださってるんだろうし、たくさんの方にそんな思いが伝わったらいいなと思ってます」と強い気持ちを見せた。「争いとかは嫌なので『平和にいこうぜ』『みんなで幸せになろう!』と思いますけど、でも人にどう思われるかより、まず自分がどう思うか。そこを大事にしています」と自身の生き方の神髄を語った。(取材・文:早川あゆみ)
NHKドラマ10「大奥」は火曜よる10時より放送中