ジェニファー・コネリーが元子役の苦悩を熱演 複雑な母娘関係を描く主演作
ジェニファー・コネリーが主演を務めたダークコメディー『バッド・ビヘーヴィア(原題)/Bad Behaviour』が、先日開催された、サンダンス映画祭ワールドシネマのドラマ部門で上映された。コネリーが製作も手掛けた作品で、女優としても知られるアリス・イングラートの監督デビュー作。脚本も手がけたイングラート監督は、コネリーの娘役で出演もしている。
コネリーが本作で演じるのは、人生にさまざまな問題を抱えている元子役のルーシー。ある時、彼女は、山の中で開催された、精神的な悟りを求める人々を集めたリトリートに参加する。スピリチュアル・グル(教祖)であるイーロン(ベン・ウィショー)のもと、参加者同士はお互いに話してはいけない時間が決められており、毎日セラピーセッションが行われるが、ルーシーは、遅れて参加した若いモデルでインフルエンサーでもあるビバリーの浅薄なナルシストぶりに嫌悪感を持ってしまう。
一方、ルーシーの娘のディランはニュージーランドで映画のスタントとして働いている。母娘の電話のやりとりで、2人の関係がうまくいっていないことがうかがえる。
撮影現場でトレーニングに励みながら、俳優と関係を持ち始めたディランは、アクションシーンの撮影でひどいケガを負い解雇されてしまう。前半はルーシーとディランのエピソードが並行して描かれるが、後半では、リトリートで思いがけない出来事が起きたことで2人が合流し、母娘関係へと焦点が移っていく。
コネリーが演じるルーシーは、子役として有名だったティーンエージャーの頃、摂食障害に悩まされていた複雑な過去を持つキャラクター。彼女のエキセントリックな部分も含めて、コネリーが見事に演じている。ビジネスとしてのスピリチュアル業界をからかっているような描写もあり、参加者が一生懸命セラピーに励むシーンでは笑いもおきた。
コネリーは、プレミア上映後のQ&Aで「大好きな脚本だった。痛々しいのと同時に、とてもおかしくもあったわ。(監督の)アリスはクリエイティブで、勇敢で、素晴らしく興味深い視点を持っていた。彼女の2本の短編映画も大好きだったわ」と出演の動機を語った。
ルーシーを演じるにあたって、コネリーは「彼女が何を本当に望んでいるのか」をよく考えたという。「彼女がやることは、彼女がやりたいと思っていることと全く違うのだと思う。彼女がやりたいのは、娘を愛し、娘を救い、自分を治すことなの。でも、すべてがめちゃくちゃになってしまう。なぜなら、彼女が和解できない多くの歴史や情緒的な問題を抱えていて、それが邪魔するから」。
複雑な母娘の関係を描いたイングラート監督の母親が、本作にカメオ出演もしている名監督ジェーン・カンピオンだという点も興味深いが、本作は自伝的な映画ではない。カンピオンの監督作『ブライト・スター ~いちばん美しい恋の詩(うた)~』(2009)で主演を務めたベン・ウィショーは、アリスのことを12歳のころから知っていたと明かしていた。
世界的な大ヒット作となった『トップガン マーヴェリック』でトム・クルーズの恋人役を務めて話題を呼んだコネリー。まさに脂が乗り切っているなか、彼女の今後の活躍が楽しみになる一本だ。(吉川優子/Yuko Yoshikawa)