観客の中に鈴木福!『レジェンド&バタフライ』宮沢氷魚が質問に真剣回答
木村拓哉主演の映画『レジェンド&バタフライ』(公開中)のティーチイン付き上映会が4日、丸の内TOEIで行われ、観客として会場に来ていた俳優の鈴木福が、宮沢氷魚、大友啓史監督、井元隆佑プロデューサーに「新しいものを作る上での取捨選択、その判断基準」について質問を投げかけた。
木村拓哉演じる織田信長と、綾瀬はるか演じる正室・濃姫の夫婦の絆にフォーカスした本作。1月27日に初日を迎え、公開33日間で観客動員171万人、興行収入22億円を突破した。この日のイベントには映画業界を目指す若者や学生たちが集結し、大友監督、宮沢らと“映画の未来”を語り合うという趣旨で行われた。
オリジナルの時代劇映画というコンセプトで制作された本作。映画クランクイン前に何百本にもおよぶ東映時代劇を鑑賞し、伝統を自分の中に吸収した上で違うものを吐き出すこと、時代劇の常識にとらわれないことを目指したという大友監督。信長よりも年上だったという説もある明智光秀役に宮沢をキャスティングしたことも「常識にとらわれない」ことの一環だったという。「脚本では、見目麗しいとあって。パッと思いついたのが氷魚くんだった。過去のルールとかに負けないようにその発想をとるかの戦いだったが、魅力的な俳優なので、新しい何かが見つかるかもしれないと思った」と振り返る。
対して宮沢は、「こういう容姿でもあるし、身長も184センチあるので、自分が時代劇の中にいることが想像できなかったんですよね」と話しつつ、「でも大友監督が撮る新しい時代劇だからこそ、存在できたんじゃないかなと。昔に比べると時代劇も減ってきましたが、そういう時代にチャレンジした作品。間違いなく後世に残る作品になったと思います」と自負する。
そしてティーチインのコーナーでは、中学生から大学生まで幅広い世代の若者たちから「クライマックスシーンで“首”にこだわった理由は?」「俳優を見るときに重視しているものは?」などさまざまな角度の質問が飛び、大友監督たちも「しびれるね」とうれしそうな顔を見せた。
そんな中、「鈴木福です」と名乗る高校生から質問が。「高校3年生で次、大学生になるんですけど。これから俳優として、新しい俳優になっていかなきゃいけないなというのは常に感じていて。温故知新という部分も大切にしながら、新しくなっていきたいと常に思っていて。ただそれってすごく難しいことだなとも思っていて。お三方は新しいものを作る上での取捨選択はどのようにしていますか? その判断基準はどうされていますか?」というものだった。
それに対して、大友監督は「フレームの外のことにも意識を払うようにしている。そういう視点は大切かもしれない」とアドバイスを送り、本作のポストプロダクションの時に起こったウクライナ侵攻に作品を重ねていたことを語った。
続いて宮沢は「僕が言えることはそんなにないですが……」と笑いつつ、「最近まで思っていたんですが、自分が演じている時にはもちろんその役を演じていたつもりだったとしても、どこかで評価を気にしていた自分がいて。うまくできるかなとか、そういう評価ばかりを気にしていた自分がいたんです」と吐露。「でも確かに役者って評価によって次の作品が決まっていくわけですけど、なんだかそういうことを考えてる時間や、心配している自分がばかばかしいなと思って。一人の別の人物を演じているというのはすごく贅沢な場で、誰かの人生を生きることができる仕事に就いている以上は、そんなことを気にせずに、本当にその瞬間、瞬間を生きて。その人物になれば、勝手に評価は追いついてくる」と続けた。
さらに宮沢は「本当に最近なんですけども、そういう自分のメンタルな部分で答えが見つかったような気がした」としみじみしながら、「だからなんかそのおかげで肩の荷が下りたというか。とにかく日常生活もそうなんですけども、その一瞬一瞬を生きることだけに集中していれば、多分明るい未来が待っているんだろうなと自分は思います。この仕事がさらに楽しくなりましたね」とメッセージ。そのアドバイスに鈴木も「いつかお仕事をご一緒にできることを楽しみにしています」と笑顔で返すと、拍手がわき起こった。(取材・文:壬生智裕)