世界遺産の火災事故、どうやって再現した?『ノートルダム 炎の大聖堂』裏側に密着した映像公開
映画『ノートルダム 炎の大聖堂』より、撮影現場の裏側に密着したフィーチャレット映像「舞台セット編」が公開された。
【動画】『ノートルダム 炎の大聖堂』フィーチャレット映像・舞台セット編
『愛人/ラマン』『セブン・イヤーズ・イン・チベット』などの名匠ジャン=ジャック・アノー監督がメガホンを取った本作は、世界遺産ノートルダム大聖堂の火災事故を題材にした実録ドラマ。大規模なセットを炎上させて全編IMAX(R)認証デジタルカメラで撮影した映像と、2023年のセザール賞最優秀視覚効果賞を受賞したVFXの融合により、まるで本物の火災を見ているかのようなリアリティーにあふれている。
今回公開された映像では、舞台セットに注目。実際に組まれた大規模なセットや、それを本当に燃やして撮影する様子などが見て取れる。「ここまで緊張感があり、悲劇的な物語は考えつかない」と話すアノー監督。特殊効果を担当したJ=C・マグノーは「こんな火災映画はしばらくは作られない」と規模の大きさを語っている。
また、アノー監督は尖塔とドーム型天井が崩壊するシーンについて「この瞬間を記録したノートルダム大聖堂の防犯カメラ映像も、消防の記録映像もないため、完全に復元しました」と明かす。「実際天井は40メートルの高さから崩落し、炎上する500トンもの梁やモルタル、石が大聖堂の床に落下しました。本編ではこのシーンは1分半ほどしかありませんが、撮影の準備には何週間もかけています。一番広いスタジオにセットを組み、約70立方メートル分もの炎上した素材を約20メートル以上の高さから投下。定刻にすべてに火を付けた瞬間から1分15秒で熱と煙が制御不能の危険な状態になるという制限下での撮影でした。30秒で完全に火が回り、そこからわずか40秒でこのシーンを撮らなければなりませんでした」と過酷な撮影を振り返った。
本作でも印象的な、大聖堂の屋根から炎が激しく噴き上がるシーンについては「ノートルダム大聖堂の屋根は“森”と呼ばれる構造で、中には樹齢900年を超えるものもあるオーク材の梁でできていましたが、この2019年の大火災で焼失してしまいました。私たちは大聖堂の北側翼廊で消防士たちが最初に消火にあたったシーンを撮影するために、もはや消滅してしまった世界でも珍しいこの屋根の構造を複製しなければなりませんでした。ゴシック様式の柱やアーチ型天井を作る機会などは滅多にないため、壁や像の風合いなど、複製するためのインスピレーションを得られるようにと、セットデザインのスタッフたちを何か所か本物の大聖堂に連れて行きました」と舞台裏を明かしている。(清水一)
映画『ノートルダム 炎の大聖堂』はIMAX(R)ほか全国劇場にて公開中