13歳の少年と不倫し逮捕、刑務所で出産、その少年と再婚した36歳の女性…『キャロル』監督作が評判
第76回カンヌ国際映画祭
第76回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門出品作『メイ・ディセンバー(原題) / May December』が好評だ。カンヌ常連のトッド・ヘインズ監督(『キャロル』など)によるドラマで、衝撃のゴシップで世間を騒がせたグレイシー(ジュリアン・ムーア)と、グレイシーを題材にした映画の主演に決まり、リサーチのため彼女の家を訪れた女優エリザベス(ナタリー・ポートマン)という二人の女性の姿を描く。
グレイシーは36歳の頃に13歳の少年ジョーと不倫をし逮捕され、彼との子供を刑務所で出産、その後ジョーと再婚したというスキャンダラスな人物。それでも20年たった今も二人は仲良く暮らしている。メソッド演技法(徹底的なリサーチの上で精神や肉体を改造し、役柄に自分自身を完全に没入させる演技法)で役づくりに取り組む女優のエリザベスは、執拗にグレイシーの過去や精神に迫っていき、グレイシーたちもあらためて自分たちの過去と向き合わざるを得なくなる。
ヘインズ監督はメロドラマチックな皮肉を効かせた演出で笑わせたかと思えば、二人の女性の複雑な内面をあらわにする深い洞察力も同時に披露。それはジュリアンとナタリーという二人のオスカー女優にも言え、コミカルからリアルで真摯な感情の放流まで、彼女たちの演技力の高さをまざまざと見せつける作品になっている。
ちなみに、タイトルの「May December」とは「年の離れた」という英語の表現だ。グレイシー役を務めたジュリアンは、現地時間21日に行われた公式会見で「“年の差の交際”と“大人と子供の交際”というのは全くの別物。いつ年齢が不適切になるのか? それは発達的に違う段階にいる時、つまりどちらかが未成年の時。だから境界線が引かれているの。この映画を観ていて危険な感じがするのは、他の人の境界線がどこにあるかわからないから。それは恐ろしいわ」と語っていた。(編集部・市川遥)
第76回カンヌ国際映画祭は現地時間27日まで開催