カンヌで役所広司×ドイツの巨匠のタッグ作にスタンディングオベーション!渋谷の公共トイレが世界へ
第76回カンヌ国際映画祭
現地時間25日、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作『パーフェクト・デイズ(原題) / Perfect Days』の公式上映が行われ、監督を務めたドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダースとキャストの役所広司、中野有紗、アオイヤマダ、田中泯が出席した。上映後には観客から熱心なスタンディングオベーションが贈られ、主演を務めた役所には「ブラボー!」の声も多く飛んだ。
渋谷の公共トイレ清掃員・平山(役所)を主人公に、ヴェンダース監督が東京で撮り上げた本作。一瞬一瞬に小さな喜びと美しさを見いだしながら生きる平山を、役所がその表情、佇まいだけで雄弁に表現した。『パリ、テキサス』ではカンヌの最高賞パルムドールを手にしているヴェンダース監督が映し出す、美しい公共トイレ、新しさと古さが混在する東京の情景の数々も魅力的だ。
上映後に取材に応じた役所は「お客さんから本当に温かい拍手を頂いたので、楽しんでもらえたのかなという安心感がありました」とほっとした表情。「今まで一緒に作ってきたスタッフ、キャストが会場にいましたし、ヴィム・ヴェンダース組はいいチームだったなとつくづく思いました」としみじみ語った。
平山と奇妙なつながりを持つホームレスを演じたダンサーの田中は「映像のお仕事でスタンディングオベーションは初めて。やっぱりうれしいもんですよね。それ以上に『役所さんやったね!』という気持ちがばぁーっとこみ上げました。(会場では)ヴィム・ヴェンダースさんが間にいたからできなかったけど、飛びつきたかったくらいです」と役所の快挙を喜んだ。
平山の姪役を務めた新人の中野は、スタンディングオベーションや涙している人々を見て心を動かされたという。「この作品は日本人の感性というか、一見陰に隠れてしまいそうなものにフォーカスした作品だったので、どういう反応になるのだろうとちょっと不安もありつつ、きっと何か感じるものがあるんじゃないかと思っていました。最後のスタンディングオベーションでそれが確信に変わって、こういう日本人独特の感じる美しさが世界に伝わったというのは、わたしにとってもすごくうれしくて誇らしく、日本人に生まれてよかったなって思いました」
平山の同僚清掃員のガールフレンド役を務めたヤマダは、話し始めると感動がよみがえったようで「平山のように細かいところで頑張っている人がたくさんいて、本作はそこにスポットを当てている。日本の細やかさみたいなものを主役に作品にしてくれ、それをカンヌで世界の人たちが観たということに本当に感動してしまいました」と声を震わせる。「本当にこの日本で生きていてよかった。日常をちゃんと生きていていいんだ、というふうに思えました」と感激の面持ちだった。受賞結果は映画祭最終日の現地時間27日に発表される。(編集部・市川遥)
映画『パーフェクト・デイズ(原題)』の日本公開は未定