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声優・細谷佳正、「アウトプットしながら学べる」吹き替えの醍醐味 音響監督との出会いが転機に

『ザ・フラッシュ』吹き替え声優・細谷佳正
『ザ・フラッシュ』吹き替え声優・細谷佳正

 DC新作映画『ザ・フラッシュ』(6月16日全国公開)で主人公のヒーロー・フラッシュ/バリー・アレン役を担当した声優の細谷佳正がインタビューに応じ、キャリア初期から挑戦してきた吹き替えの醍醐味や、新人時代の転機となった出来事を語った。

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 フラッシュは、バットマンやスーパーマンらが所属するヒーローチーム「ジャスティス・リーグ」の一員として、地球の危機を救った地上最速のヒーロー。未知の運動エネルギーに満ちた世界(=スピードフォース)にアクセスすることで、過去や未来に移動することができる。

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 歴史の改変によって、過去と現在のフラッシュが出会うことになる本作。性格が異なるバリーを演じ分けた主演のエズラ・ミラーについて、細谷は「『ザ・フラッシュ』のエズラさんは、いわゆるエンターテインメントに寄ったパフォーマンスじゃなくて、単館映画のアート作品に出演しているようなパフォーマンスに見えて、それが印象的でした。エズラさんが、細部まで役を作り込んでやっている感じがしました」と舌を巻く。

画像は映画『ザ・フラッシュ』より - (C) 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved (C) & TM DC

 本作のアフレコ前に、フラッシュを演じた過去作『ジャスティス・リーグ:ザック・スナイダーカット』(2021)の吹き替え映像を観たという細谷。「スナイダーカットでは、バリーはおちゃらけたキャラクターじゃないですか。そのパフォーマンスが固くて。今の自分の方がもっと良くすることができるなって思いました」と語る。

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 「おちゃらけてはいるんですけどその奥には、母親を失ったことに対する想い、父親の無罪がまだ証明されていない心の引っかかりとか、影の部分を覆い隠すためにおちゃらけているんだなっていう雰囲気があって。自分がタイムスリップできることに気づいて、過去を変えられると思いついてからは、1本芯が通った、目的がちゃんとある主人公になったなと思いました。マルチバースのバリーは無責任で、その場で思いついたことを面白くやる若さみたいなものを感じたんですけど、その対比をうまくつけられるように意識しました。同じ声なのに雰囲気が違うっていう風に、自分の力で見せられないかなって思っていました」

 吹き替えだけでなく、アニメの声優も数多くこなす細谷。「吹き替えは実際演じている俳優とセリフやお芝居を合わせていく作業。いい俳優を吹き替えることができたら、すごく楽な部分もあるけど、今回のエズラ・ミラーさんのようにものすごく大変なこともある。アニメと大きく違うのは、ある程度自分の自由が利くんですよ。なので、アウトプットが多くなるんですね。自分でそのキャラクターをハンドリングしながらある程度わがままにやることができる。でも、吹き替えはオリジナルの演技があるのでそうはいかない。だけど、吹き替えはアウトプットしながら学ぶことができるんです。いい俳優のお芝居を見て『こんなすごいことをやっているんだ』って思ったら、自分もそこに合わせていくので。吹き替えは自分のパフォーマンスを向上させて、引き出しも増やせるんじゃないかなと感じています」と醍醐味を明かした。

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音響監督との出会いが転機となった細谷佳正

 吹き替え作品の中で声優としての転機は、音響監督の神尾千春が参加していた海外ドラマ「グレイズ・アナトミー 恋の解剖学」(2005~)。デビュー初期で脇役として参加した細谷は、神尾からのある言葉が印象に残っているという。

「その現場で学んだことは、『変に声を作る必要はない』ということ。かっこつけたり、評価されたり、注目されようとして新人は頑張るんですけど、そこで無欲になって書かれていること、感じることを、素直に出す。声を作ると、『変にカッコつけている』とすぐに見破られてしまうんです。声の嘘を取り除いた時、初めて役が相手に伝えたい本質が浮き彫りになってくる。これが、僕の吹き替えの元になっていると思います」

 ヒーローを演じる時は、「かっこいい音を使うんじゃなくて、外していくことをやります。結果、映像を見た時に、カッコ悪いんだけど、やっていることはすごくカッコいいから素敵だなって見えるようにしたいって、今回の『ザ・フラッシュ』でも思っていました」と振り返っていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)

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