ポノック西村P『屋根裏のラジャー』は宣伝しない手法とらず「宣伝したくなる宣伝」展開
スタジオポノック最新作『屋根裏のラジャー』の製作報告会見が21日、帝国ホテルで開催され、百瀬義行監督、西村義明プロデューサーが出席。現在公開中の宮崎駿監督(崎はたつさきが正式表記)最新作『君たちはどう生きるか』に言及する一幕もあった。この日は、声の出演で参加する寺田心、安藤サクラ、イッセー尾形も会見に出席すると同時に、鈴木梨央、仲里依紗、山田孝之、高畑淳子らも作品に参加することが発表された。
本作は、長編第一作『メアリと魔女の花』(2017)で鮮烈なデビューを飾ったスタジオポノックの最新作。スタジオジブリで高畑勲作品の重要な役割を担ったアニメーター/演出家の百瀬義行が監督を務め、イギリスの詩人・作家のA・F・ハロルドによる小説「ぼくが消えないうちに」を原作とし、子供の想像から生まれたイマジナリーフレンドによる、人間には見えない大冒険を描く。
もともと2022年の夏に公開される予定から、2023年の冬に公開が延期された本作。西村プロデューサーは延期の理由について「イマジナリーフレンド」という題材を映画化する際の表現方法について試行錯誤した結果など、いくつか理由をあげながら「いろいろ、ご迷惑をおかけしました」と謝罪する。
百瀬監督も「このテーマを扱うなか、今までと違う絵のスタイルへの挑戦が必要だった」と明かすと「短編ではキャラクターに質感を与える試みをしたことがあったのですが、長編では、はじめての試み。1,500カット以上にその作業を加えるのは、大変な作業で、スケジュールを伸ばさせていただきました」と説明。そんな作り手の強いこだわりの結果、百瀬監督は「より洗練された形で画づくりができた」と自信をのぞかせると、西村プロデューサーも「本当にアニメーションを作ることは大変な作業です」と苦笑いを浮かべる。
スタジオポノックは、現在公開中のスタジオジブリ作品『君たちはどう生きるか』にも協力しているといい、西村プロデューサーは「1本の映画を本気で作っている人に、助けてくれと言われたら助けるという作り手の矜持がある」と明かすと「アニメ映画というのは挑戦の連続で、地獄みたいなもの。その道を切り開いてくれた先輩たちはすごくありがたい」とスタジオジブリの偉大なる先輩方に敬意を表する。
さらに「映画は作り終えただけでは終わらない」と述べた西村プロデューサーは「この作品を日本にも、世界にも届けなければならないので、『宣伝しないことが宣伝』という手法は僕にはできません」と『君たちはどう生きるか』がとった宣伝手法に触れ「この映画を観たら、多くの人に『観た方がいいよ』と伝えたくなるような作品になっている気がします。“人に宣伝したくなるような宣伝”を展開していけたらいいなと思います」と語っていた。(磯部正和)
映画『屋根裏のラジャー』は12月15日より全国公開