「どうする家康」杉野遥亮、ちぎれ具足時代からの山田裕貴との共演振り返る
松本潤が徳川家康役で主演を務める大河ドラマ「どうする家康」（毎週日曜夜8時～NHK総合ほか）で、家康の家臣・榊原康政（小平太）を演じた杉野遥亮（28）。康政はのちに酒井忠次、本多忠勝（平八郎）、井伊直政に並ぶ家康の側近「徳川四天王」として名を馳せるが、とりわけ山田裕貴演じる平八郎との掛け合いは視聴者の間で“平平コンビ”と呼ばれ、人気を博した。撮影を終えた今、小平太と平八郎、そして自身と山田の関係を振り返った。
杉野演じる康政は、1月15日放送の第2回から登場。文武に優れた武将で、名門・榊原家に次男として生まれ自由気ままに生きてきたところを、家康に才能を見いだされた。第6回で小平太が今川方を相手にした初陣に臨んだ際には、友人たちから具足のパーツをもらい集めて作成したと伝わる「ちぎれ具足」をまとって登場。ねじり鉢巻きに「無」の文字を入れた盾など、手作り感あふれるコスチュームが反響を呼んだ。黒の戦装束に身を包んだ平八郎とのギャップも微笑ましいが、杉野自身はどう感じていたのか。
「ちぎれ具足は準備にすごく時間かかるし、早くちゃんとした具足を着たいなって思っていました。一方で、チャーミングでもあって。実際に友人たちからパーツを集めたという史料もあり、何か小平太の人となりを表しているようでもありました。小平太を演じる上でヒントにもなっていたのでありがたい気持ちと、準備が大変だなっていう二つの気持ちがありました（笑）」
生涯戦うこと57回、かすり傷一つも負わないといわれる戦国最強武将の一人である平八郎の背中を追い続けた小平太。彼にとって平八郎はどんな存在だったのか。特に思い出深いのが、退場回となった11月19日放送の第44回「徳川幕府誕生」だという。
「平八郎は、小平太にとっては上司でもあるので、小平太にどういうことができるかとか、どういうふうな立ち位置でいたらいいのかっていうのは、結構考えていました。平八郎を意識した小平太というのは常にいたと思います。2人のシーンで言うと、第44回は特に印象に残っています。2人のシーンが多くて、例えば小平太が平八郎を訪ねて気持ちを共有する場面。お互い年をとって“老いには抗えん”といったセリフもあって」
小平太は平八郎に「戦に生きた年寄りは早身を引くべきだ。おぬしもわかっておろう？」と話す。老いた小平太は「引き際」を意識しているが、杉野にとってはその境地を想像するのは容易ではなかった。「正直自分はまだピチピチしているのに、どうやったらセリフに説得力をもたせられるのかといろいろ試行錯誤したりして。山田君と協力して作れたんじゃないかと思います。山田君とは2人でいいシーンを作るぞっていう熱がグッと同じところに来るときがあって、共鳴し合えたんじゃないかなと」
また第44回ではセリフの量に目を見張ったというが、小平太の成長を実感できたとも。「（主演である）松本さんは毎週これをやられているんだなと思うと、すごいなと……。難しい言葉、使い慣れない言葉もたくさんあって、これは準備をせねばと気合いを入れて臨みました。小平太は最終的にはとても愛情深い人になっていると思いますし、演じていて、自分は小平太にいい成長をさせることができたなと思えました。最初の頃の印象とは全然違うと思いますけど、それこそ見てくださる方に“ちぎれ具足を着ていた小平太が……”と感じていただけたらうれしいです」
そのほか、第7回「わしの家」での“ナンパ”シーンも良い思い出だと杉野。民衆の間で一向宗が人気と聞いた家康が噂を確かめるべく、百姓を装い、宗徒が集う本證寺に潜入したときのことだ。小平太、平八郎は歩き巫女の千代（古川琴音）ら舞い踊る美しい女性たちにうっとり。「ねえ、お姉さんたち、一緒に踊らないかい」と声を掛けると、振り返ったのは何と家康の母・於大の方（松嶋菜々子）と、酒井忠次（大森南朋）の妻・登与（猫背椿）だった……というユニークなシーンだ。
「あのシーンも一つ一つの間にこだわりましたし、モノ作りとか、現場にいて楽しいのってそういう瞬間なんです。誰かと本気でモノを作る熱を感じたとき。山田君とはそれがあったのですごく楽しかったです」と長きにわたってコンビを組んだ日々を晴れやかな表情で思い返していた。（編集部・石井百合子）