「どうする家康」小栗旬出演は「鎌倉殿へのアンサー」 作・古沢良太&演出・村橋直樹が裏側明かす
17日に放送された松本潤主演の大河ドラマ「どうする家康」(毎週日曜夜8時~NHK総合ほか)最終回に、南光坊天海役で出演した小栗旬。昨年、小栗が北条義時役で主演を務めた大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では最終回に松本演じる家康が予告なしで登場し、大いに沸いた。今回はその“お礼”ともいうべき出演となり、脚本家の古沢良太と最終回の演出を担当した村橋直樹が経緯や裏側を語った。
小栗演じる天海は、天台宗の僧侶で家康の側近として江戸幕府の礎を築いたともいわれる人物。家康の伝記作成のため、家臣たちの証言の覚書を記す場面で登場した。家康の古参の家臣・本多忠勝(山田裕貴)の娘である稲(鳴海唯)たちから聞き取りをするも、若いころは「どうする?」と右往左往し、家臣の酒井忠次(大森南朋)や石川数正(松重豊)らに叱られまくったこと、井伊直政(板垣李光人)に命を狙われたことなど、出てくるのは黒歴史ばかりで天海は辟易する……というシーンだった。脚本の古沢いわく、「『鎌倉殿の13人』の最終回に松本さん演じる家康を出してくださったので、そのアンサーみたいなことをやりたい気持ちは制作陣の中にあって。ただ、そのすべがなかなかわからず、書いていく中で天海は物語上必要だなと。この役だったら小栗さんがやってくれるのかもしれないと思い至りました」と言い、構想自体は初期からあった。
「鎌倉殿の13人」の最終回では、松本演じる家康がサプライズ出演。「永禄七年1564 三河」というテロップが表示され、語りで「熱心に『吾妻鏡』を読んでいるこの男は、のちの征夷大将軍、徳川家康。彼もまた、坂東に幕府を開くことになる。家康は『吾妻鏡』の愛読者であった」と説明された。家康は「いよいよ承久の乱が始まるか……ドキドキしてきた。一回落ちつこう」と茶碗を手に取るも、中身をぶちまけて「どうしよう……」とつぶやく。「どうする家康」のタイトルにかけたセリフも取り入れた、遊び心あふれるシーンだった。
その“アンサー”のように、「どうする家康」でもセルフパロディー的なシーンがみられた。天海の「かの源頼朝公にしたって、実のところはどんな奴かわかりゃしねえ。周りがしかと讃えて語り継いできたからこそ今日、すべての武家のあこがれとなっておるわけで」というセリフは、「鎌倉殿の13人」で小栗演じる北条義時が頼朝に仕えていたことをふまえると、かなり可笑しい。古沢は「小栗さんの出演が実現するのかはわからないけれど、家康は源頼朝をリスペクトしていたこともあり、鎌倉殿を彷彿させるセリフも入れられればと制作サイドから提案をいただいて。僕も、遊び心があっていいなと思いました。小栗さんには出演してくださって本当に感謝しています」と明かす。
演出の村橋は、「鎌倉殿の13人」の最終回で家康が持っていた「吾妻鏡」(鎌倉時代の歴史書)を、今度は小栗演じる天海が手にしているという仕掛けも取り入れた。撮影時の小栗について、村橋は「“今回は自由にやらせてもらいました”と清々しくおっしゃって帰って行かれたのが印象的で」と話す。
「今回はワンシーンだけ遊びに来ていただいた感じだったので、小栗さんには自由にお芝居してくださいと言いました。あまり『鎌倉殿の13人』との繋がりなども意識せずにやっていただいたのですが、小栗さんが撮影の後におっしゃっていた言葉が残っていて。小栗さんは『鎌倉殿の13人』では主演だったので、座長として周りを受け止めることが優先で、自由に芝居はできなかったと思うんです。ご友人でもある松本潤さんの抱えている主演としてのプレッシャーとか、縛られる部分があることもわかっている。それは僕らも理解しているつもりでいたけど、小栗さんの帰り際の一言で、あらためてそれだけ大河ドラマの主演っていうもののプレッシャーは大きいんだなと。座長でいることの重さというとすごく簡単な言葉になってしまうけど、やったことがある人にしかわからないものなんだと実感しました」と、しみじみ振り返っていた。(取材・文:編集部・石井百合子)