『ガンダムSEED』田中理恵、ラクスと共に成長した20年 福田己津央監督&両澤千晶と試行錯誤の日々
TVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』(2002~2023)から人気キャラクター、ラクス・クラインを演じている田中理恵がインタビューに応じ、18年越しに実現した最新作『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』への思い、監督の福田己津央や脚本・シリーズ構成の両澤千晶と試行錯誤しながら演じていた、20年前のテレビシリーズを振り返った。(取材・文:編集部・倉本拓弥)
【動画】劇場版『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』本予告
とにかく必死だった20年前
Q:ラクス・クラインは、『ガンダムSEED』の初登場シーンからどこか掴みどころがない、不思議なオーラが漂っていました。田中さんご自身も、ラクスのキャラクター像を掴むのに苦労されたのでは?
当時は20代前半で、ラクスの声をとにかく必死に演じていた印象があります。『ガンダムSEED』は第8話「敵国の歌姫」からの参加で、みなさんが第1話からアフレコしてエンジンかかってきたところに、途中から加わったのですごく緊張しました。
ラクスはふんわりとしながらも物怖じしないキャラクターです。私自身はすごく緊張していても、凜とした演技をしなければならず、当時はかなり試行錯誤しました。福田監督や両澤さんが「こういう風にした方がいいよ」といろいろ教えてくださったり、一緒に考えながらラクスを作り込んでいきました。
Q:田中さんがラクスのキャラクター像を掴んだのは、いつ頃だったのでしょうか?
続編『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(2004~2005)で、ラクス・クラインがどういうキャラクターなのか、ようやく自分の中で形になっていきました。『SEED』と『DESTINY』を比較すると、ラクスの声が変わっていると自分では感じたんです。『DESTINY』ではさらに凛としていて、声質も少し違います。
『DESTINY』から20年近く経って、『FREEDOM』ではまた違ったラクスを演じることになったので、自分でもどう演じればいいか悩みました。大人っぽくなっていたので、これまでの少女のようなラクスにはならないよう、気をつけていました。
デュランダル役・池田秀一の存在が安心感に
Q:ラクスは会話シーンのみならず、歌唱シーンや演説シーンなどもありました。田中さんが当時最も苦戦したシーンは?
演説のシーンはすごく難しかったです。自分でできていると思っていても、実際は全然できていなくて……。勢いや抑揚など、ラクスの「人を納得させるカリスマ性」を言葉で伝えなければならないので、そこをどのように演じるか、すごく悩みました。
また『DESTINY』では、デュランダル議長と対峙する場面も多く、(デュランダル役の)池田秀一さんとのお芝居もかなり緊張しました。池田さんはとても優しい方で、隣に座った時もお声がけをしてくださり、それが安心感につながりました。
Q:『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』では、ラクスの替え玉である歌姫ミーア・キャンベルの声も担当されました。
ミーアは、ラクスに本人に会えたのが唯一の救いでした。彼女は、やっぱりラクスが好きなんだなと思いました。ラクスを助けて最期を迎えるシーンは、すごく辛くて、苦しくて……。アフレコでは泣かなかったのですが、オンエアでミーアが倒れるシーンを見た時は号泣してしまいました。
劇場版で描かれるラクスの新たな一面
Q:『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の脚本を読み終えた時、まず感じたことは?
「すごい!」と思いました。さまざまなところで愛や絆を感じたり、クスリと笑えるシーンもあります。モビルスーツの戦いの中に、観客を和ませるシーンがあったり、すごくバランスがいいストーリーになっていました。また、泣かせるところは本当に泣かせにくるので、みなさん涙腺が崩壊すると思います。私も映像を観た時、涙腺崩壊しました(笑)。それぞれの推しキャラクターが登場した時、必ずグッと来るシーンがあると思います。
Q:劇場版のラクスを演じる際に意識したことは?
物語は『DESTINY』から2年後の世界が舞台なので、年を重ねたような演じ方はしないように意識しました。『FREEDOM』のラクスは少し大人っぽく、艶っぽくなった印象を感じました。
Q:劇場版で発見したラクスの新たな魅力は?
YESとNOがはっきりしているところです。特に、NOの時は「本当にラクスなの?」と思うくらい、突き放す感じのNOを言います。ラクスは以前よりハッキリ物を言うようになったので、福田監督に「ここまでやっていいんですよね?」と随時すり合わせながら演じていました。劇場版では、そんなラクスの新たな一面が見られると思います。
『ガンダムSEED FREEDOM』から観ても楽しめる
Q:20年前から応援しているファンはもちろん、中には劇場版をきっかけに「ガンダムSEEDシリーズ」に触れる方もいらっしゃると思います。
『ガンダムSEED FREEDOM』から観てもわかる作品になっていると思います。キャラクターの関係性だったり、細かな設定がわからなくても、楽しめる内容になっています。『FREEDOM』を観て面白いと感じたら、次は『SEED』『DESTINY』を観てみようと思ってくれる方がいらっしゃったら嬉しいです。
また、20代の時に『SEED』『DESTINY』をテレビで観た時と、20年経ってからもう一度観返すのとでも全然違います。作品の感じ方であったり、好きになるキャラクターも全然変わったなと、身をもって実感しました。
Q:田中さんの声優人生において、ラクス・クラインというキャラクターはどのように刻まれていますか?
ラクスとは、20代の頃に出会い、一緒に成長してきました。『SEED』『DESTINY』の後、ラクスとしてゲーム作品などにも出演して、その時も「日々成長だ」と思いながら収録をしてました。ラクス・クラインは自分と一緒に歩んできた大切な存在です。
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は1月26日全国公開