【ネタバレあり】『ガンダムSEED』下野紘、悩んで収録したオルフェの一言 キラとのシーンは「心の底からニヤニヤ」
アニメ「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」の完全新作となる『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』に登場する新キャラクター、オルフェ・ラム・タオの声を担当した下野紘がインタビューに応じ、20周年を迎えた「ガンダムSEEDシリーズ」との巡り合い、アフレコ時に悩んだというセリフについて語った。(以下、映画のネタバレを一部含みます)(取材・文:編集部・倉本拓弥)
【画像】ズゴック迫る!『ガンダムSEED FREEDOM』場面写真
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、『ガンダムSEED DESTINY』より後のコズミック・イラ(C.E.)75年が舞台となり、世界平和監視機構・コンパスの一員となった主人公キラ・ヤマトたちの新たな戦いを描く。下野が演じたオルフェ・ラム・タオは新興国ファウンデーション王国の宰相で、女王アウラ・マハ・ハイバルに強い忠誠心を抱いている。
『ガンダムSEED』20周年で運命的な出会い
Q:『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』のオファーを受けた時の心境は?
事務所が管理するスケジュール表に、最初は“SEED劇場版”という書かれ方でキープされていました。『機動戦士ガンダムSEED』のことなのか、『SEED』というタイトルの新作アニメなのか、「この『SEED』は何だろう?」とずっと思っていました。徐々にスケジュールの詳細も明らかになり、台本や設定資料をいただいた時に、初めて「本当に『ガンダムSEED』だ!」と実感が湧きました。ドキドキとワクワクが何段階かに分けてやってきたのは、今までになかった気持ちでした。
Q:もともと「ガンダムSEEDシリーズ」の世界観に対して、どんなイメージをお持ちでしたか?
実は、劇場版に参加するまで「ガンダムSEEDシリーズ」を一度も観たことがありませんでした。格好よくてかわいいキャラクターや、いろいろなガンダムが登場して、キラキラしたイメージでスタイリッシュな作品かなと勝手に思っていたので、初めて『ガンダムSEED』を拝見した時に、人が大勢死んでしまう世界観に衝撃を受けましたし、当時からテレビシリーズを観ておけばよかったとも思いました。
おそらく、あの頃の自分では、素直に(作品を)観ることができなかったと思います。というのも、当時はオーディションに受からず、別の方が受かった作品は悔しくて観られないことが多かったんです。アニメ作品も純粋に楽しかったはずが、仕事になって楽しめなくなってしまった時期がありました。そういう意味では、大人になって、また純粋に作品を楽しく観られるようになったタイミングで、『ガンダムSEED』に出会えてよかったです。また、僕がテレビアニメに初めて出演したのが2002年、『ガンダムSEED』がテレビ放送されたのも2002年なんです。「ガンダムSEEDシリーズ」20周年で巡り合うことができたのは、ある意味、運命的なのかもしれません。
ラクスにはプラス、キラにはマイナスを出す
Q:最新作で初登場となったオルフェについて、福田己津央監督とはどのようにしてキャラクターを構築していきましたか?
福田監督からは「基本的には、下野くんの思う通りに演じて!」と指示がありました。台本と映像を確認して、自分が思うオルフェを演じながら、監督から「ここは、もっとこういう気持ちで」と要望をいただき、少しずつブラッシュアップしていきました。
Q:オルフェのデザイン資料を見た時から、下野さんの中でキャラクター像はある程度掴めていましたか?
全く掴んでいなかったです。逆に、僕の中ではもっとかわいらしいイメージがありました。パッと見、かわいらしい印象だなと思っていたら……全く違うんです(笑)! そういう意味では、自分が最初に抱いたオルフェのイメージを変えないとダメだと思い、資料映像を確認しながら、どういう表情でラクス・クラインに語りかけたり、キラに感情をぶつけているのだろうなど、オルフェ像を再構築して現場に臨みました。
Q:前半は紳士的に振る舞うオルフェでしたが、後半では感情を爆発させるシーンもありますね。
ラクスに対してはプラスを出して、キラに対してはマイナスを出す。そのさじ加減には気をつけました。個人的には、感情を思い切り出せる方が楽しいので、オルフェの感情を抑えなければいけない部分に、もどかしさを感じる時もありました。キラとのシーンに入った瞬間は、「よーし! キラに全部ぶつけられる!」と思えて本当に楽しかったです。抑えていた分を一気に放出するのは、とても気持ちいいです(笑)。
Q:クライマックスでは、オルフェがブラックナイトスコード カルラに乗って戦います。モビルスーツ戦のアフレコ収録はいかがでしたか?
『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』に参加した頃から抱いていた、「機体に乗って戦いたい!」という思いを全力でぶつけました。キャラクター同士の感情の変化ややり取りも見どころですが、とにかく(モビルスーツに)乗れるということにワクワクしすぎて、いろいろ打ち出しました。
オルフェは今後の声優人生に必要な存在
Q:下野さんの中で印象的なオルフェのセリフはありますか?
イングリット・トラドールから「もういいのよ、オルフェ」と言われた時の「イングリット」です。とても難しかったし、どのように表現しようかじっくり考えました。最終的に、オルフェが少し大人になった、その一歩を踏み出したセリフです。今までのオルフェの感情とは、全く違うものがそのセリフに出てきたので、言い方には気をつけました。イングリットの名前を呼ぶだけの一言でも、そこを大切にしないと、オルフェはただのワガママ坊やで終わってしまう。今でも「あれで正解だったかな?」と考えるくらい悩んだセリフです。
もう一つは、キラとのシーンでの「彼女を追う資格が君にあるのかな?」というセリフです。オルフェとしては序盤のシーンで、僕の中では「ここから入るよ!」というスイッチにもなったので、ワクワクしながら言っています。キラを追い詰めることができるということもあり、心の底からニヤニヤしながら収録しました(笑)。
Q:オルフェを演じていくなかで、彼のどんなところに魅力を感じましたか?
序盤は特に嫌なヤツだと思うところもありますが、後半になれば、彼自身がものすごく子供なんだと感じられる瞬間がありました。子供がわがままを言って、自分の周りを顧みない主張をしているだけなんだと思うと、かわいらしいなとも思いますし、彼自身、自分がこの世界をラクスと共に導いていくことも嘘ではない。本当に救世主になるために、ラクスと一緒になり、頑張っていきたい思いがあったんだろうと思います。純粋に自分の思ったことを素直に言うところが、彼の魅力です。大人っぽく振る舞っていても、本当のオルフェは少し子供なのではないかと思ったり、そんな子供っぽい部分も魅力ですし、人間くさいところも好きです。
Q:「ガンダムSEEDシリーズ」への参加、オルフェとの出会いは下野さんの声優人生においてどのように刻まれると思いますか?
『ガンダムSEED』に限らず、いろいろなキャラクターに出会うことで、今まで自分がやってきたことだったり、経験を積んできたことを実感できる瞬間があります。オルフェを演じたことによって、今まで経験してこなかった部分、特に演説シーンが思っていたイメージと違うんだということを実感しました。そういう意味では、自分の声優人生における「今、自分をここまで表現できる。ここまでやれるんだ」という実感、そして、新たな発見の両方を兼ね備えたキャラクターだったと思います。オルフェもまた、他のキャラクターと同じく、今後の声優人生に必要な存在であると、収録を終えた今も思います。
『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』全国公開中