キネ旬ベスト・テン、趣里&役所広司が主演女優&男優賞受賞 『せかいのおきく』が日本映画1位
映画雑誌「キネマ旬報」が発表するベスト・テン第97回で趣里と役所広司がそれぞれ主演女優賞、主演男優賞を受賞した。趣里は同映画賞で初受賞、役所は同映画賞で4度目の主演男優賞受賞となる。また、8歳の子役・塚尾桜雅(つかお・ おうが)が新人男優賞を受賞し、史上最年少での受賞となった。日本映画第1位には阪本順治監督の『せかいのおきく』、外国映画第1位にはトッド・フィールド監督の『TAR/ター』が選出された。
朝ドラ「ブギウギ」のヒロイン役も話題の趣里は、塚本晋也監督の『ほかげ』の演技で受賞。家族を戦争で亡くし、終戦直後の闇市で小さな居酒屋を営みながら暮らす女性を演じた。趣里は受賞に「歴史ある賞をいただき、とても光栄です。自分の中では何一つ変わらないのですが、お陰様で、自分にできることをやって皆さんに「よかった」と言っていただければそれでいい、と思える一年となりました」とコメント。なお、同作で戦争孤児を演じた塚尾桜雅が新人男優賞に輝いた。
役所は、『PERFECT DAYS』『ファミリア』「銀河鉄道の父』の3作品の演技で受賞。ドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダース監督がメガホンをとった『PERFECT DAYS』では、役所が第76回カンヌ国際映画祭で日本人として19年ぶり2人目の男優賞に輝き、第96回アカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされている。役所にとってキネ旬ベスト・テン主演男優賞受賞は1996年・第70回(『Shall we ダンス?』『眠る男』『シャブ極道』)、1997年・第71回(『うなぎ』『失楽園』)、2021年・第95回(『すばらしき世界』)に続いて4度目となり、役所は「今年も素晴らしい俳優さんたちが活躍された中で、世界の中でも長い歴史を持つ「キネマ旬報賞」を4度目の受賞、本当に幸運な男だと思います。良い脚本と良い監督が存在しなければ俳優一人では何も出来ません。この出会いと今まで自分に影響を与えてくれた沢山の人達に心から感謝します」とコメントを寄せた。
日本映画ベスト・テン第1位の『せかいのおきく』は、阪本順治監督にとって30作目、オリジナル脚本によるモノクロ作品。江戸時代末期を舞台に、喉を切られて声を失った武家の娘おきく(黒木華)と、下肥(しもごえ)買いの中次(寛一郎)と矢亮(池松壮亮)の青春を描くストーリーで、阪本は脚本賞も受賞した。外国映画ベスト・テン第1位の『TAR/ター』は、ケイト・ブランシェット演じる有名オーケストラで女性として初の首席指揮者となった主人公の転落劇。トッド・フィールド監督が外国映画監督賞も受賞した。
「キネマ旬報」は、1919年(大正8年)に創刊され、ベスト・テンの選出は1924年度(大正13年)に始まった。ベスト・テン及び各賞の選考者は、映画を多く見ている者に厳しく限定され、2023年度は映画評論家、ジャーナリストなどのべ120名以上で行われた。
2位以下のランキングは、2月5日発売の「キネマ旬報2月増刊2023年キネマ旬報ベスト・テン発表号」に掲載されるほか、「キネマ旬報WEB」(https://www.kinejun.com/)でも発表される。2023年第97回の受賞一覧は下記の通り。(編集部・石井百合子)
作品賞
日本映画ベスト・テン第1位:『せかいのおきく』(監督:阪本順治)
外国映画ベスト・テン第1位:『TAR/ター』(監督:トッド・フィールド)
文化映画ベスト・テン第1位:『キャメラを持った男たち-関東大震災を撮る-』
個人賞
日本映画監督賞:ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』
日本映画脚本賞:阪本順治『せかいのおきく』
外国映画監督賞:トッド・フィールド『TAR/ター』
主演女優賞:趣里『ほかげ』
主演男優賞:役所広司『PERFECT DAYS』『ファミリア』『銀河鉄道の父』
助演女優賞:二階堂ふみ『月』
助演男優賞:磯村勇斗『月』『正欲』『渇水』『最後まで行く』『波紋』『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』
新人女優賞:アイナ・ジ・エンド『キリエのうた』
新人男優賞:塚尾桜雅(つかお・おうが)『ほかげ』
読者選出日本映画監督賞:瑠東東一郎(るとう・とういちろう)『Gメン』
読者選出外国映画監督賞:マーティン・スコセッシ『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』
読者賞:川本三郎 連載「映画を見ればわかること」