【最速レビュー】『デューン 砂の惑星PART2』ヴィルヌーヴ監督の集大成、映画史に刻まれる新たな名バトル誕生
鬼才ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が構築した唯一無二の世界観と、圧倒的な映像美で映画ファンを虜にしたSF巨編『DUNE/デューン 砂の惑星』 (2020)。銀河の覇権をかけた戦いを予感させるラストから3年、『デューン 砂の惑星PART2』は映画史に残る一大バトルを前作以上のスケールで活写する、期待を裏切らない続編に仕上がっている。
『デューン 砂の惑星PART2』を鑑賞した後では、前作は序章にすぎなかったと感じるほど、最終決戦をノンストップで描き出す。上映時間は2時間46分と前作より長尺だが、倍増したアクションシーンに思わぬサプライズなど、1秒たりとも見逃せない情報量の多さでありながら、長さは感じさせない。
主演のティモシー・シャラメは前作以上に英雄然としており、救世主として崇められる葛藤を繊細な演技で表現している。予告編にも登場する、数万人のフレメンたちを率いる彼のたたずまいは圧巻だ。2部作を通して演じたポール・アトレイデスは彼の新たな代名詞として刻まれることだろう。
フローレンス・ピュー、レア・セドゥ、クリストファー・ウォーケンといった新キャストも、存在感を発揮する。特筆すべきは、ポールの宿敵フェイド=ラウサ役のオースティン・バトラー。『エルヴィス』での熱演で一躍トップスターの仲間入りを果たしたオースティンは、デヴィッド・リンチ監督による1984年版の『砂の惑星』でスティングが演じていた名ヴィランの狂気を独特のスタイルで作り出している。舌でナイフを舐め回す仕草から、無慈悲に敵を切り刻む姿まで身の毛もよだつ狂気ぶりだ。アカデミー賞主演男優賞に続き、助演男優賞でのノミネートも期待出来るだろう。
最大の見せ場となるバトルシーンは、映像・美術・音楽・アクションと全てのピースが上手くハマり、カタルシスをもたらす。ハルコンネンとフレメンの両軍入り乱れる近接戦闘に、画面を圧倒するサンドワームの大群。そのスケールは、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』『アベンジャーズ/エンドゲーム』などで描かれた最終決戦に匹敵する。原作小説を愛するヴィルヌーヴ監督が、この瞬間を描くために「砂の惑星」を映像化してきたと言っても過言ではない。映画史に残る一大バトルを目に焼き付けるために、ファンは映画館に何度も足を運ぶはずだ。
前作は、第94回アカデミー賞で撮影賞、視覚効果賞、美術賞など技術部門を総なめにした。撮影監督のグレイグ・フレイザー、編集のジョー・ウォーカー、音楽を手がけたハンス・ジマーらは、最高の映画体験を提供した。『デューン 砂の惑星PART2』でも再び賞レースを席巻するだろう。
『デューン 砂の惑星PART2』はヴィルヌーヴ監督の集大成作品として申し分ないが、監督は続編小説「デューン 砂漠の救世主」(原題:Dune Messiah)の映像化を含めた3部作計画を熱望している。本作を鑑賞すれば、『デューン』の世界観にもっと浸りたいという欲が高まり、誰もが続編を望むはずだ。(編集部・倉本拓弥)
『デューン 砂の惑星PART2』は3月15日全国公開 (3月8日~10日に先行上映)