真田広之、海外挑戦の架け橋に 次世代へ継承する役者魂「撮影現場が何よりの道場」
20年以上にわたり海外で活躍する俳優・真田広之が、ディズニープラスの「スター」で配信中の「SHOGUN 将軍」でハリウッド(ディズニーが持つ製作会社の一つ「FX」)制作の連続ドラマ初主演を果たした。同作のプロデューサーにも名を連ねる真田が日本でインタビューに応じ、日本人俳優・スタッフと共に挑んだ一大プロジェクトの裏側や、海外に挑む若者たちに対する思いを語った。
【動画】ハリウッドが描く戦国時代!「SHOGUN 将軍」予告編
視点を増やし、日本を多角的に見せる
原作は、1980年にアメリカで実写ドラマ化されたジェームズ・クラベルのベストセラー小説。天下分け目の合戦「関ヶ原の戦い」前夜、窮地に立たされた戦国一の武将と、日本に漂着しその家臣となったイギリス人航海士をはじめ、乱世を生き抜く者たちの陰謀と策略渦巻くドラマが描かれる。真田は、徳川家康にインスパイアされた武将・吉井虎永を演じている。
真田は、過去に日本の時代劇で家康を演じたことがあり、当時の歴史は知識として事前にインプットされていた。だからこそ、本作では「原作小説に忠実に、リスペクトして制作する」ことを目標にしたという。「1980年代のオリジナルシリーズとは、また異なるオリジナリティーを生み出そうと、(エグゼクティブ・プロデューサーの)ジャスティン・マークスとアイデアを出し合いながら脚本を練っていきました。割と自然に、あるべき姿というものが見えたと思います」
では、本作のオリジナリティーはどこに表れているのか? 真田は「視点を増やしたことが今回のオリジナリティーだと思います」と回答した。「基本的には、英国人航海士ジョン・ブラックソーンの視点で、戦国時代の日本を垣間見ていく形が取られていますが、今回はそこにプラスして、日本のレンズを通して各キャラクターを掘り下げることも含め、日本人から見た英国人航海士、ポルトガル人宣教師の姿、世界との関わりを多角的に見せています」
役者になる瞬間「ご褒美のような感覚」
極限までリアリティーを追求した真田は、プロデューサーとしてプリプロダクション(撮影前の準備段階)から積極的に意見出しを行った。一つの例が、 日本人クルーの起用だ。日本各地から集結した時代劇のプロたちが、衣装・小道具・所作指導など各パートに配置され、徹底的に時代考証が行われた。もちろん、真田が得意とするアクションパートも撮影前からプロの指導が入った。
「俳優部やエキストラも含めたブートキャンプを実施して、刀の扱い方から構え方、歩き方も含めて全てレクチャーしていただきました。剣術や弓道の先生をお呼びして、アドバイスを受けたので、基本ができた状態で撮影に臨むことができました。もちろん、状況に応じて全て動きが変わってくるので、自分でチェックしながら意見を出しています。本作に限らず、アクションが映画の中でショータイムにならないために、いかにドラマとマッチできるかが重要です。キャラクター、状況、感情に沿った振り付けをすることが大事になるので、そこは細かく指示を出したり、時には自分で殺陣をつけて、スタントコーディネーターと相談しながら作っていきました」
真田は、自分の出番がない日でも、誰よりも早く撮影現場に入り、各部門をチェックし、リハーサルにも立ち会った。「プロデューサーとして動いている時の方が長かったと思いますが、楽しい日々でした。準備が全部済んだ状態なので、俳優としてカメラの前に立つ時は、役に集中するだけです。役者モードになる瞬間は、『今は演技に集中すればいいんだ』とご褒美のような感覚でした。いつになく無の境地になれたので、余計なことは考えず、役を背負って演技ができました。プロデューサーとして参加したからこそ、原点とも言えるあり方に辿り着いたと思います」
続けることでしか時代は変えられない
主演&プロデューサーとして、試行錯誤の日々を送った真田。「SHOGUN 将軍」が今後の活動への布石になると期待を募らせる。「続けることでしか時代は変えられません。『SHOGUN 将軍』が未来にとっての大きな布石になればいいなと思います。今後もプロデューサーとして参加できるのであれば、日本の良い題材・人材・精神性・美学を海外に発信できるように、この作品がその橋渡しになることを願っています」
「SHOGUN 将軍」では、日本の若手俳優たちがハリウッドの撮影現場を経験する機会にも恵まれた。数多くのハリウッド大作に出演してきた真田は、長年のキャリアで培った経験を、海外を目指す若者たちへと伝える“架け橋”になりたいと力を込めた。
「私は撮影現場が何よりの道場だと思っています。これまで一緒に仕事をしてきた人たちには、自分が持っている全てを教えてきました。先輩方から教わったものを後輩に伝えていく役割を担う年齢になったので、俳優としても、プロデューサーとしても、自分が架け橋となり、できる限り若い世代に継承していきたいと思います」(取材・文:編集部・倉本拓弥)
「SHOGUN 将軍」ディズニープラスの「スター」にて独占配信中