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岡田将生が嫌われ役に挑む理由 凶悪殺人犯役は「トンネルの中にいる感覚」

岡田将生
岡田将生 - 写真:杉映貴子

 2021年公開の映画『ドライブ・マイ・カー』が第94回アカデミー賞国際長編映画賞(旧:外国語映画賞)を受賞し、昨年は2本の主演映画が公開されるなど、充実した30代を過ごす岡田将生(34)。新作は、中国でドラマ化され社会現象となった小説を、舞台を沖縄に置き換えて映画化するサスペンス『ゴールド・ボーイ』(3月8日公開)。本作で凶悪殺人犯役に挑んだ岡田が、いわゆる嫌われ役や悪役に果敢に挑む理由を語った。

【画像】岡田将生の圧倒的美!インタビュー撮りおろし<7点>

 原作は、中国の動画サイトで「バッド・キッズ 穏秘之罪」(全12話)としてドラマ化され、総再生回数が20億回を超えたズー・ジンチェンの小説(※iQIYI JAPAN調べ)。映画『ゴールド・ボーイ』は、有名企業の会長夫婦を崖から突き落とした婿養子・東昇(岡田将生)の事件が、少年少女(羽村仁成星乃あんな前出燿志)に思わぬ形で目撃されたことから予想外の展開を遂げるさまを追う。『DEATH NOTE デスノート』の金子修介監督がメガホンをとった。

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 主人公・東昇を演じた岡田は、「この役に惹かれる気持ちがあり、そこに嘘はありませんでした。ただ自分自身とあまりにも違い過ぎて共感できる部分がほとんどなく、精神的に削られていく感覚があって。迷いながら演じ続け、なかなか光が見えない。まるでトンネルの中を歩いているようでした」と撮影を振り返る。

 それでいて東のことを、「圧倒的な悪だとは思えなくて」と岡田。裕福で傲慢な大学生を演じた『悪人』(2010)、女性関係で問題ありの青年を演じた『伊藤くん A to E』(2018)、生徒に心無い言葉を吐く中学教師を演じた『星の子』(2020)など、これまでに何度か演じてきた“悪い役”では基本的にいつもそうで、「僕は、演じるうえで自分のなかで正当化してお芝居するという癖のようなものがあります。今回ももちろん東のやっていることは非道で、ダメな部分はたくさんありますが、彼は彼なりの正義を持って行動していると信じて演じていました」と続ける。しかも金子修介監督はあまりテイクを重ねないため、「現場に行ったら、ずっと東のモードになっていた」そうで、「プライベートで家族やマネージャーに対しても、いつもより少し言葉がキツくなっている自分に気づいて。嫌気が差しました……」と苦笑い。それほど役に入り込んでいたそう。

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映画『ゴールド・ボーイ』より岡田将生演じる殺人犯・東昇 (C)2024 GOLD BOY

 そんなふうに自身も消耗することをわかっていながら嫌われ役や悪役などを多く演じるのは、「やはりこういう役を成立させるのは大変で、それでいて、この仕事の醍醐味のひとつでもあるから」と岡田。「共感できない役ならではのやりがいがあり、現場でチャレンジングなことが出来たりする。正解が何かはわからないので迷いながら、監督と話し合いながらつくっていく作業が好きなのかもしれません」と自ら分析する。

 それは連続ドラマのように「演じる時間を積み重ねると、その役が自分に染み込んできて、そのキャラクターが勝手に動き出す。どんどん自由になっていく」という感覚とはまるで違うそう。「僕はどちらも好きですけど」と前置きしつつ、昨年映画化もされた宮藤官九郎脚本のドラマ「ゆとりですがなにか」(2016)を例に挙げ、「あの役は宮藤さんが僕に当て書きしてくださった大好きな役。自分と共通点があり、だからこその自由さがありました。そうした役を演じさせていただいて改めて、演じるということはとても面白い作業だと思うようになったんです」と充実した表情を見せる。

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左から羽村仁成、前出燿志、星乃あんな。東昇の誤算は子供たちが予想外に強かったこと!(C)2024 GOLD BOY

 映画は思わぬ展開を遂げ、東は事件の目撃者となった少年少女と対立していくこととなる。演じる羽村、星乃、前出の撮影現場での様子についても、「どこか昔の自分を見ているような感覚でした」と岡田。それでいて3人が年齢以上にしっかりしていることにも驚かされたようで、「子どもらしい一面を見せてくれるときもあったのですが、とても集中して現場に臨んでいました。それを遠目に見ていて、自分も昔はきっとこうだったのだろうな……と。いろいろな先輩にこんなふうに見守っていただいていたんだと改めて気づき、だからこそより自由にやってほしいなと思ったんです」と過去に自身を支えてくれた先輩たちを思い返す。

 そうして撮影を終えたとき、「なんかスッキリしたんですよね」という岡田。それでいて「東は共感したり、相手の言葉を聞いて変化していくキャラクターではないので、自分の感覚が鋭くなるようで」というのも不思議に思える。相手に共感し、変化していく方が感覚が研ぎ澄まされるのではないかと想像するのだが、「逆なんですよ。僕が変なんでしょうね」と苦笑い。劇中、東が子どもたちと話すシーンでも、「彼らの言うことをもちろん聞いているけど、聞いていないというか……。東には自分の中に思考の筋道があって、そこだけに意識が鋭くなっていく。誰かの言葉より、敏感に感じてしまう。バランスが悪いのでしょうが、東昇のような役は一点集中で演じます。他のことをあまり考えないので、そういう意味ではちょっとラクとも言えるかもしれません」と独特なアプローチを明かす。

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 それだけに完成した映画について、「今もすごく不安です」というのは意外に思える。「そう口にしてしまうのは自分の弱さでもあるのかもしれません」と前置きした上で、「面白い映画ができたという確信はあります。撮り方も、編集の仕方も、音楽も、これまでの映画にはなかなかない、とても新鮮なものに。僕自身も、東と子どもたちの心理戦、目に見えない戦いがすごく面白かったですし。ただ真に新しいと思えるものだからこそ、どの年代のどんな方々に、どんな言葉でこの作品をお伝えすればよいのだろう? というのがとても難しい。だからこの作品に関しては、観てくださった方のお話をお聞きしたい。そんなことを思っているんです」と率直な心境を明かしていた。(取材・文:浅見祥子)

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