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宮藤官九郎、歌舞伎町医療ドラマは「中途半端にしない」創作におけるテーマとの向き合い方

「新宿野戦病院」でタッグを組む小池栄子と仲野太賀
「新宿野戦病院」でタッグを組む小池栄子と仲野太賀 - (C)フジテレビ

 小池栄子仲野太賀がダブル主演を務めるフジテレビ水10枠新ドラマ「新宿野戦病院」(7月3日スタート/毎週水曜22時~22時54分)を手掛けた脚本家・宮藤官九郎が、歌舞伎町を舞台とした同ドラマで挑んだ“表現の限界”についてなど、合同インタビューで思いを語った。

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 新宿・歌舞伎町の病院を舞台にした本作は、元アメリカ軍医のヨウコ・ニシ・フリーマン(小池)と、彼女との出会いによってその生き方に変化を見いだしていく美容皮膚科医、高峰享(仲野)たちの姿を通じて、「命」の尊さをユーモラスに投げかける救急医療エンターテインメント。

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 本作の舞台は、東洋屈指のディープな歓楽街として知られる新宿・歌舞伎町。ドラマには、ホストやキャバ嬢、ホームレス、トー横キッズ、外国人難民などさまざまなバックボーンを持つ“ワケあり”の人たちが次々と登場する。「ゴールデン連ドラデビュー作の『池袋ウエストゲートパーク』は池袋が舞台でしたが、僕にとって池袋は、大学から近い繁華街ではあっても、実はよく知らない街だった。でもドラマをやることになって街を歩いたり、原作を読んだりするうちに、なんとなくこういう街にはこういう人たちが住んでいるんだろうなと思うようになった。それは『木更津キャッツアイ』の時もそう。今回はそれの最新版じゃないですけど、(現実の)新宿に行ったら、ドラマに出てくる登場人物がいるんじゃないかと思えるような。身近に感じてもらえたらいいなと思って書いています」。

 ドラマの取材のためにあらためて歌舞伎町を歩いたことで、発見も多かったという。「ぶらぶらと歩いてみて、とにかく若い人が多いなと。そしてホストクラブの多さにも驚きました。昔は歌舞伎町の中でも、男性が女性にお金をかける方が多かったように思うけど、今は女性もバリバリ働いて、夜の街でお金を使う。女性が元気だなと思って。なんでそんな感じなんだろうと思って資料を読んでみたり、取材させていただくうちに、僕が20代のころに行ってた歌舞伎町とは、全然違うという発見がありました。それと相変わらず外国の方が多い。その国々のカルチャーがそこかしこにあって、猥雑(わいざつ)な感じが面白いなと思いました。だからドラマにも、実際に歌舞伎町にいそうな人を出していきたいなと思っています」

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 「不適切にもほどがある!」(TBS系)でも、コンプライアンスに縛られた現代社会に切り込んだ表現スタイルが話題を集めた宮藤。「『不適切~』も、一石を投じようというつもりはなくて。結果的にいろんな人が話題にしてくれて、ありがたいとは思っているんですが」と語る宮藤が、歌舞伎町を描くうえで、どんな表現に挑むのか、気になるところだ。「怒られるんだろうなと思いながらやっています。でも、なるべく怒られたくないので、いろんな人にチェックしてもらっています。それでもきっと怒られるんです。でも、それはしょうがないですよね。怖がっていたら何もできなくなる。ただ単に『本当はこういう側面もあるし、こういう意見もあるんだよ』と言いたいだけなんです。だから気を付けることといえば、中途半端にしないということですかね。誰かをことさらに攻撃したり、片方だけを悪にはしたくない。双方の事情があって。あっちから見たら間違ってるように見えるかもしれないけど、実は言ってることは変わらないんじゃないかな? とか。いいところも悪いところも両方にあるということをそのまま提示して。見た人がいろいろと考えてくれたらいいなと思っています」

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 その上で、「ブレーキをかけるくらいならやらない方がいいんじゃないかと思っちゃうんです」という宮藤は、自身の創作スタイルについて「一回忘れるというか、一回、自分の社会性を捨てないと本音が出てこないというか。みんな怖くて使っていない言葉でも、でもよく考えたら言っちゃいけないことでもないのかもしれないな、とか。炎上して、みんな騒いでるけど、よくよく考えると、そんなことないじゃない? ということもあって。その見極めは難しいけど、本当にそうなのかな? と一旦考えるようにしています」と明かす。

宮藤官九郎

 さらに「自分が作っているのはコメディなので、ウケないのは嫌なんです。笑いにならないことをゴリ押ししてまで固執するのは嫌だし、ほかの面白いところを殺してまで表現をしたいわけではない。ただ、『これを言わないとこのテーマは扱えない』というところは、バカなフリをして全部出してみて、いろんな方々にチェックしてもらう。ほかの言い方があったら表現を変える時もあるし。やはりみんなで作ってるものなので、常に皆さんの意見を聞きながら進めています」

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 それでも、突っ込んだ表現は「カットしたり言い方を変えたり、都度調整はしていますね」と明かす宮藤。「(『不適切にもほどがある!』で話題となった)注釈テロップはもう使えないですからね。それほど不適切なセリフはないと思いますが、粗探しをせずに楽しんで見ていただけると嬉しいです」と笑顔。

 現代はSNSでいろいろな反響がダイレクトに寄せられるようになったが、宮藤自身は「見ないようにしています」と語る。「見て良かったと思ったことが一回もないんですよ。やっぱり気が弱いのか、人から言われるとそうなんだと思ってしまうから。なるべく耳に入れないようにしています」という宮藤だが、「それでも(感想を)スクショして送ってくる親切な人もいるんですよね。ネットニュースでは見出しで自分の名前が出てくることもあるし、昔は(評価の指標が)視聴率だったけど、今は多様化しているから、みんないろんなことを言ってくるんだよなぁ、なるべく知りたくないのに」と苦笑いを浮かべた。(取材・文:壬生智裕)

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