「光る君へ」高畑充希、「枕草子」朗読を追加収録 試行錯誤重ねた裏側明かす
現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)で一条天皇に入内し中宮となった藤原定子を演じる高畑充希。2014年放送の「軍師官兵衛」以来約2度目、10年ぶりの大河ドラマ出演となった本作では波乱に満ちた中宮を演じているが、高畑が特に印象に残っているのが、清少納言が綴った「枕草子」が誕生したシーンだったという。
「源氏物語」の作者・紫式部/まひろ(吉高由里子)の生涯を描く本作。劇中では、まひろが懇意にする清少納言/ききょう(ファーストサマーウイカ)が、兄・伊周(三浦翔平)、弟・隆家(竜星涼)の不祥事によって、内裏を追われることになった中宮を励ますためにどうしたらいいのかとまひろに尋ねるシーンがある。
その際のまひろの提案を受け、ききょうは定子のために言葉を綴り「枕草子」が誕生するきっかけとなる。
高畑は「定子にとって少納言はとても大切な存在」と彼女の人生には切っても切れない存在であることを強調し、「『枕草子』が誕生した場面は、台本を読んでいて一番好きなシーンだったんです」と第21回「旅立ち」の撮影を振り返る。
その理由について「セリフがほとんどない。『枕草子』誕生という大きな出来事を情景だけで描く。加えて、実際の四季の流れではなく、映像として四季を見せてくれる」と説明すると「大石静さんの脚本が素敵だなと思いました。実際演じるときは、少納言の気持ちに胸を打たれている定子の心の動きはあるのですが、映像で表現されている情景に馴染めるよう、なるべく感情的にならず、ただそこにいることだけを心掛けていました」と当時を述懐した。
実際のオンエアを観た際に高畑は「わたしが演じているときは、少納言が紙に文字を書いているシーンは見ていませんでした。だからこそ、その映像や音楽が組み合わさって、とても美しいシーンだなと思いました」と感激した様子。同シーンで高畑が朗読した部分については「古い言葉で言うのか、現代語訳で言うのか、少納言が読むのか、定子が読むのか……試行錯誤したんです」と語る。
さらに高畑は、映像を繋いだところ「定子が読むのが一番伝わるのではないか……」という結論になり「クランクアップしたあと、朗読を録りに行ったんです」と裏話を披露。放送後、SNSにも「枕草子」誕生の描写は「美しい」というコメントが溢れた。高畑は「あの情景がどうやったら素敵に伝わるのか……みんなで悩みながら作った結果、わたしが読ませていただくという形になりました」と経緯を語っていた。
高畑が作り上げた定子。清少納言役のウイカが「とにかく持ち上げてくれた」と、彼女の存在が励みになったことを明かすと「ウイカちゃんとソウルメイトの役をやれて良かった」とあらためて感謝していた。
定子について「能動的に行動を起こせる人」と煌びやかでありつつも、強さも併せ持つ女性と定義づけた高畑。心掛けていたことは「たくさん泣きたくない」ということ。史実をひも解くと「お姫様」「か弱い」「策略家」「愛情深い」などさまざまなキーワードによって「選択肢が無限にあると感じた」という。そのなかで大石が描いた定子像をじっくりと吟味すると「どこか格好いい人でいてほしい。何かあってすぐに涙を流す人ではない」と意識していたという。
定子の一族は悲劇的に語られることが多い。特に兄である伊周の凋落ぶりはかなりのインパクトがあった。高畑はSNS上でもかなり評判が悪いことを伝え聞くと「わたしは好きですけどね」と苦笑い。
演じる三浦について「とてもお美しい方なのですが、伊周としてどこまでも不格好に演じていました。全力でダサさ、哀れさを表現されていて、一周回って愛すべきキャラクターでした。現場では定子は結構罵倒されたのですが、わたしの表情を撮っているときも、ご自身が映らないのに全力で演じてくださって……。とても素敵だったので、伊周の株が下がっているのは申し訳ないです。兄のことをよく書いてください」と訴えていた。
定子は7月21日放送・第28回でこの世を去ったが、今後の展開について高畑は「出演回以外の台本は手元にないので全然知らないんです」と笑うと「まひろが『源氏物語』に向かっていくストーリーがとても気になります」と視聴者と同じくワクワクしながら作品の行く末を見守ることを誓っていた。(取材・文:磯部正和)