ファーストサマーウイカ「光る君へ」の清少納言は「自分を見ているよう」 共感どころじゃないシンクロ率明かす
吉高由里子が紫式部(まひろ)役で主演を務める大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)で随筆「枕草子」の作者であり、中宮・定子(高畑充希)に女房として仕えた清少納言(ききょう)を演じたファーストサマーウイカ。本作で描かれる清少納言についてウイカは「自分を見ているよう」だと言い、約半年の放送を経てあらためてそのキャラクターの魅力を振り返った。
ウイカ演じるききょうは、歌人・清原元輔(きよはらのもとすけ)の娘。一条天皇に入内した定子のもとに女房として出仕し、忠誠を尽くすという役どころだ。ウイカにとって大河ドラマへの出演は本作が初。日本人の多くが知る実在の人物を演じること、また主人公のライバルでもあることから大役への抜擢にオファーを受けた当初はプレッシャーもあった。しかし、アプローチにあたり清少納言にまつわる資料を読み、彼女を知れば知るほどその不安は消えていったという。
もともと「清少納言についてはあまり深くは存じ上げませんでしたが、出演が決まってから『枕草子』から彼女に関わる資料までいろいろと読むうちに、自分と考え方だったり表現の仕方が非常に近い人物だなと。SNSで“生まれ変わりのよう”と言っていただくこともあるんですけど、私自身も自分を見ているようで。大石(静)先生が書かれた台本上の清少納言しかり、すごく親近感を持って接しています。もう感情移入を通り越しているレベルで、“こういう時はそう言うでしょう”と完全に重なる瞬間が多々あって。最初は吉高由里子さんと対峙することやセリフの量などにプレッシャーや不安はあったんですけど、感情表現の部分では“ほぼ私だから”と。“全然ききょうの気持ち分かんないよ”と思うことは一度もなかったです。文字が右上がりなところまで同じでした(笑)」
劇中、清少納言は夫と子を捨てて中宮に仕える決意をした。結婚によって人生を切り開こうとする女性たちと異なり、自己実現に向かって突き進んでいく孤高の生きざまはまひろも同じだが、いわゆる「異端」として描かれる清少納言について、ウイカはこう語る。
「現代でもキャリアを重視する女性が増えてきましたけど、清少納言はものすごく現代的で、家庭がいらないと思ってるわけではないけれど“やりたいことがある、家族が枷になるなら、私は家庭を諦める”という選択ができる。流れに身を任せず、自分で切り開いていく姿勢、周りの目を顧みずそれを体現して公言できる強さは当時は異端であったと思います。私も自由に思うままの生き方をしてきて、博打な人生を歩んできているので、自分の手で運命、人生を切り開いていく姿勢にもとても親近感が湧きます」
清少納言が定子のために書き綴った「枕草子」は宮中で大評判となり、のちに紫式部も「源氏物語」を執筆することになる。これまで二人の関係はよき友として描かれていたが、実際はどうも違うようだ。紫式部が宮中での出仕生活を赤裸々に描いた「紫式部日記」には、清少納言についてこんな記述がある。
「清少納言こそ、したり顔にいみじう侍りける人。さばかりさかしだち、真名書き散らして侍るほども、よく見れば、まだいと足らぬこと多かり。(それにつけても清少納言ときたら、得意顔でとんでもない人だったようでございますね。あそこまで利巧ぶって漢字を書き散らしていますけれど、その学識の程度ときたら、よく見ればまだまだ足りない点だらけです)※注」
ウイカは本作で描かれる清少納言と紫式部を「柔と剛」と解釈しているといい、今後二人の関係が大きく変化していくことを示唆する。
「対極だからこそ、お互いにないものを見て面白がれる。清少納言はきっと、自分の言っていることに大抵の人間がぽかんとしているのを見て、“この人たちには何を言ってもわからないわ”と見下していたところもあると思うんです。そんななかで、まひろは“できる子!”と認めることができた唯一の存在。ようやく自分につりあう友達を見つけたみたいなところがあったのかなと。友達というよりかは若干先輩後輩感というか、圧強めの先輩・清少納言とそれを苦笑いして聞いてくれる後輩・紫式部みたいな関係。大石先生の台本にも脱帽という感じでした。最初からライバルとして、ずっとバチバチしていたらきっと見てくださる方も飽きてしまうだろうし、マブ(ダチ)からの軋轢、“あれ、なんかちょっと空気悪くなった?”みたいな感じになっていくんじゃないかとハラハラさせるようなギミックが効いていて。二人の関係がひっくり返るじゃないですけれども、紫式部が(日記に)ああいう言葉を残すという風になるには、そこまでの力関係がどこかで崩れるのか、まひろが強くなっていくのか、あるいはききょうが変わっていくのか。先の展開は私もまだ分からないのですが」
21日放送・第28回では清少納言が愛してやまなかった定子が逝去した。その定子への清少納言の“推し活”ぶりは多くの視聴者の共感を誘ったが、定子との初対面のシーンでは高畑の演技力もあいまって「風が吹いた」ような衝撃を味わったという。
「本当にきれいだったんですよね……定子様はもちろん、一条天皇も。“皆さんあそこに座ってご覧なさい。そういう気持ちになりますから”って。SNSを拝見していると“推し”のいる方々から“まさにあれです”と共感してくださる声が多く届いて。みなさん心の中に定子様のような存在がいるのだと思います。それは我が子かもしれないし、アイドルかもしれない。清少納言が定子様に感じたときめきを、多くの方が体感されているからこそ評価していただけたのではないでしょうか」
定子亡き後、清少納言は何を糧に生きていくのか。劇中、清少納言が「枕草子」を書き綴る場面が多々登場したが、ウイカは書に関してはかなり練習したと言い、「清少納言がこの時代にいたら“あれ私が書いたんです”“私が定子様に書いたものなんです”って毎回枕詞として言う気がしますが、私も一生懸命練習した書を1枚1枚これみよがしに並べて写真に撮ってすぐSNSに投稿してしまいました。ぜひそちらもご覧下さいませ(笑)」とウイカらしいウイットに富んだ“告白”をした。(編集部・石井百合子)
※注 参考文献:「ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 紫式部日記」(山本淳子編・KADOKAWA刊)