「光る君へ」吉田羊、道長のターニングポイントを語る 柄本佑と涙の名演披露
吉高由里子が紫式部(まひろ)役で主演を務める大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)で太皇太后・藤原詮子を演じた吉田羊が、その哀しく波乱満ちた生涯を振り返った。28日・第29回放送後、公式Xなどで公開されたインタビュー動画「君かたり」内で語った。
父・兼家(段田安則)の政治の道具となり、円融天皇(坂東巳之助)に入内(じゅだい)した詮子。しかし円融天皇は権勢を振るう兼家を警戒し、やがてその矛先は詮子に向けられることとなり、いばらの道を歩んだ。かつて兼家が円融天皇を毒殺する謀を知った時には怒り狂い、生涯薬を飲まぬことを誓い、病に冒されてもその決意は揺らがなかった。皇子・懐仁親王が帝(塩野瑛久)となってからは中宮・定子(高畑充希)に心を奪われるあまり政がおろそかになり、詮子との間に確執が生じた。
手塩にかけて育てた帝から「朕は母の操り人形だった」とののしられ、詮子の人生は苦労が絶えなかったが、吉田はその生涯をこう語る。「私は彼女の人生の暗い部分とか孤独な部分を救い取ってしまったので、本来の詮子さんはもっと政治に意欲的で、父への反骨心、モチベーションにもっと強い人だったのかなとかって。やらなかったこと色々想像しては、もっと違う人になれたかななんて思うところもありますけど。でも、彼女のセリフにもあるようにその時その時で彼女は大事にしてきたものを失いながら生きてきて、でも最終的に彼女に残されたのは藤原家という家柄で、それを守るという使命感をもってそれをモチベーションに彼女が生きられたとしたら、政治家・藤原詮子としてはいい人生だったのかなと思いたいです」
劇中、弟の道長(柄本佑)が詮子にとって唯一心を許せた存在として描かれたが、吉田は第26回のシーンを挙げながら、あらためて詮子の道長の関係を振り返る。第26回では相次ぐ天変地異を危惧した道長が安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)から娘の彰子(見上愛)を一条天皇に入内させるべしと助言を受け、道長はそれを詮子に相談。その際、詮子はこれまで道長は自分の手を汚すことなく幸運が重なって地位を手に入れただけだと諭し、「道長もついに血を流すときが来たということよ」と厳しく言い放った。
「貴族に生まれた女性の悲しき宿命みたいなものを理解してくれている存在だったので、やっぱり兄弟の中でも特別でしたし、彼女の生きる支えというかの存在だったかなとは思いますね。2人で話すシーンがあったんですけど、道長が政治の世界に深く足を踏み入れて、変わりゆくターニングポイントになるシーンだったんですよね。なので、そこでこれまでの道長のままでは甘いよと。これからあなたは変わっていかなければならないよと姉なりの鞭で送り出したシーン。なので、そこが道長が変わりゆく節目だったのかなと思いつつ、でもそのままならない政の中にあっても、彼本来の元々持っている優しさとか人間性みたいなものが政に反映されて、それが民衆に歓迎されて、いい国作りができるようになっていてくれよと願うところがあります」
第29回「母として」では詮子の四十歳を祝う儀式が盛大に執り行われたが、詮子の体調が悪化。息絶え絶えに、帝(塩野瑛久)と皇子・敦康親王(高橋誠)のために伊周(三浦翔平)の位を元に戻してほしいと道長に願いを託し、逝去。吉田と柄本が涙ながらの名演を見せた。(編集部・石井百合子)