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『ファーストキス 1ST KISS』松たか子のさらりとやっているようで実は凄いところ 初タッグの塚原あゆ子監督が明かす

『ファーストキス 1ST KISS』より松たか子演じる硯カンナ
『ファーストキス 1ST KISS』より松たか子演じる硯カンナ - (C) 2025「1ST KISS」製作委員会

 テレビドラマ「アンナチュラル」(2018)、「海に眠るダイヤモンド」、映画『ラストマイル』、『グランメゾン・パリ』(いずれも2024)などヒット作&話題作を連発し、快進撃を続ける塚原あゆ子監督の新作映画『ファーストキス 1ST KISS』が公開中だ。本作で脚本の坂元裕二と同じく初めて組んだ松たか子の魅力を振り返った(※一部ネタバレあり)。

松たか子&松村北斗メイキングカット<5枚>

 本作は、コロナ禍で大ヒットとなった映画『花束みたいな恋をした』や、カンヌ国際映画祭脚本賞に輝いた映画『怪物』(2023)などの坂元裕二が、タイムトラベルを題材にしたラブストーリー。松演じる、結婚して十五年目に夫・駈(かける/松村北斗)を亡くした硯(すずり)カンナが、タイムトラベルの術を手に入れたことから自分と出会う前の駈と再び恋に落ち、彼を事故死から救うべく奔走する。

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 松演じるカンナは夫の靴下を履き、皿を出す手間を惜しんでコーヒーのマグカップにトーストを乗せるような大らかさもある性格。必要に迫られてダサいTシャツを購入してしまったり、どこまでもキュートな人として描かれているが、カンナのキャラクターの妙を表すにあたってカギになったのが「靴下」だったという。

 「台本をいただいて旦那さんの靴下を履いちゃうような人というのがとっかかりになったかもしれません。描かれるのは、主人公が好きな人じゃなく嫌いになった人に会いに行く話で、もう忘れたいようなこともたくさんあった夫婦関係。それなのに、過去に遡ったらやっぱりいいなと思えるという、入口と出口の違い。そこにあるこの靴下の仕掛けが本当にすごいと思いました。靴下は丁寧に撮らなければと思いました」

皿を出さずにトーストをマグカップに乗せるカンナ(松)と、朝食は和食の駈(松村北斗)

 タイムトラベルを繰り返すたびに駈が愛おしくなり、死の回避ルートを必死に探し続けるカンナ。松は、喜びと悲しみが交互に襲ってくる難役を軽やかにこなしているが、塚原監督は本作で初めて組んだ松の印象をこう語る。

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 「撮影が始まる前に松さんが出演された坂元さんの作品を拝見していたこともあり、なんとなくチャーミングな方なんだろうなと思っていました。周りのスタッフからもすごく素敵な方と聞いていたので、お会いするのが楽しみだなと思っていたのですが、実際にとても素敵な方で。みんなが松さんを大好きになる理由がよくわかりました。松さんご自身がすごくチャーミングなので、コミカルな部分は自然に出てくるものと思っていました。ただ、1人ゼリフが多くて1人でボケて1人で突っ込まなきゃなかったりするので、そうしたところは難しかったかもしれません」

 なかでも塚原監督が特に注目したのが、松の「台本の読み方」だったという。

 「台本の覚え方って役者さんによって人それぞれで、大枠、感情だけを捉えて単語はあやふやに覚える人もいるんです。例えば、「昨日」と「夕べ」とでは、ちょっとニュアンスが違いますよね。だけど同義に捉えている役者さんは結構多くて。変えてもキャラクターに合っている場合は問題ないのですが、違った場合はダメじゃないですか。ですから“この人は本当に「夕べ」って言うかな”といった風に気を付けながらセッションをするんですけど、松さんは単語を一語一句違えずインプットしていらっしゃる。台本の中に身を沈めるような感じで、台本からはみ出ないのが松さんの読み方。はみ出さずにキャラクターを自分の中に投影するってかなり難しいことで。さらっとやられているけど、実は大変なことをやられていますし、素敵だなと思います」

 特に目を奪われたシーンを問うと、終盤のカンナと駈の台本12ページ分にも及ぶ会話を挙げ、「本来、コミカルになりえないシチュエーションながらちょっとクスリとさせますよね。緩急も含めたあの長丁場は、松さんだからこそもった気がしています。言葉で表現するのは難しいけれど、松さんならではの世界が展開されていてさすがだなと思いました」と圧倒された様子だった。(編集部・石井百合子)

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