長塚京三、79歳で「初めていい仕事したな」同級生から賛辞

俳優の長塚京三が15日、都内で行われた映画『敵』(公開中)の大ヒット記念舞台あいさつに登壇。国内外で高評価を得た本作を通して、長塚は79歳にして初めて「いい仕事をしたな」と同級生から褒められたことをうれしそうに語った。この日は、黒沢あすか、吉田大八監督も来場した。
本作は筒井康隆の小説「敵」を実写化したドラマ。妻に先立たれた元大学教授・渡辺儀助(長塚)が徹底した自己管理のもと穏やかな生活を送る中、ある不測の事態に襲われる。第37回東京国際映画祭では最高賞にあたる東京グランプリ、最優秀監督賞、最優秀男優賞の3冠に輝いた。
長塚は「道を歩いていると『おっ!』と、かなり年配の方に(声をかけられようになりました)。生まれてからずっと同じ区域に住んでいるので、何となく知っている方で『どうしようかなぁ』と今まで迷っていた方が『おっ!』と気安くあいさつしてくれるようになりました」と環境の変化を打ち明ける。さらに、同級生からは「今回初めてお前はいい仕事をしたな」と褒められたそうで、「とっても喜んでくれて、この作品のことを熱く語ってくれますよ。とってもありがたいことだと思います。今までそういうことはなかったですから」と喜んだ。

世間での高評価については「年のわりにはよく頑張ったなと思ってくださったのかしら。作品全体のグレードですからね。黒沢さんとのシーンなんか楽しかったですよ。それでそんなご褒美をいただいちゃいけないな。申し訳ない」と謙そんし、「僕も体力的にヘロヘロだったけど、スタッフも一般の木造の家屋での撮影はやりにくかったと思うんですよ。優秀な方たちで、いろいろなことをよくやってくださって、いちいち僕は助けられて。なんと言っても監督。深く理解が行き届いた(撮影現場で)ありがとうございました」と頭を下げた。
吉田監督は、「僕の中では撮影中はずっと長塚さんが儀助だったので、現場であまり『長塚さん』とお名前でお呼びしなかったと思います。『儀助さん』と(呼んでいました)。そうしようと思ってもなかなかできないこと。目の前に儀助さんがいるので、撮影中の演出は楽で楽しかったです」と得難い経験をしたと明かす。さらに「僕は何もお願い(演出)していないのに、信子(黒沢)が来たらこんな顔をするんだ。靖子(瀧内公美)が来るとこんなに格好つけるんだなとか、儀助さんを日々発見する毎日で、学ぶことも多かったです」と長塚の名優ぶりも紹介し、「ありがたかったです」と感謝の言葉を送った。(錦怜那)