【レビュー】『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』MCU新世界へ、アベンジャーズ再建への第一歩

映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は、2代目キャプテン・アメリカ/サム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)が本格始動するシリーズ4作目にして新章だ。サブタイトルの通り、新世界にマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)における新世界の到来を、サスペンスフルな物語と疾走感あるアクションで活写する。劇場公開を前に、一足先にネタバレなしでレビューする。
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スティーブ・ロジャース(クリス・エヴァンス)からキャプテン・アメリカの象徴である“盾”を継承したサムは、ドラマシリーズ「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」で正式に2代目キャプテン・アメリカとなり、本作では国家を揺るがす巨大な陰謀に立ち向かう。重厚な物語で厚い支持を獲得した『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)のようなポリティカル・スリラーに立ち返り、MCU初期の地に足の着いたサムの戦いが余すことなく描かれている。
マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギが本作の記者会見で発言した通り、この作品はサムがキャプテン・アメリカの後継者に相応しいことを証明している。テロ事件の関与を疑われた仲間を絶対に見捨てない優しきハート、窮地でも絶対に諦めない不屈の心、信念と責任が詰まった盾を背負い戦う姿を、ジュリアス・オナー監督が余すことなく作品に凝縮させた。スティーブのように超人血清を投与していない普通の人間だからこそ直面する葛藤も垣間見え、サム版キャップをもっと応援したくなる感情が湧き上がってくるはずだ。
「ファルコン&ウィンター・ソルジャー」では最終話のみだった新キャップのアクションも、冒頭からたっぷりと見せてくれる。サムの頼れる相棒・レッドウィングも出番が増え、肉弾戦ではスティーブの戦い方がチラつく瞬間も。本作で本格デビューを果たす2代目ファルコン(ダニー・ラミレス)との連携も見事で、戦闘機を相手にした空中戦は、『トップガン』のような疾走感が味わえる。

そして、本作のもう一人の主人公ともいえる人物が、アメリカ大統領に就任したサディアス・“サンダーボルト”・ロスだ。かつてアベンジャーズ分裂の火種を作った超本人が、今度はサムにアベンジャーズ再建を持ちかける。レッドハルク変身後も、ホワイトハウスを破壊する圧倒的パワーで存在感を放つ。2022年に亡くなった故ウィリアム・ハートの代役としてMCUに参戦したハリソン・フォードは、キャラクターに奥深さを与え、大統領としての重圧と向き合うロスの葛藤や苦悩を体現してみせた。『エアフォース・ワン』(1997)の正義感あふれるマーシャル大統領とはまた違う“大統領ハリソン”が堪能できるのも、映画ファンとしてはうれしいところ。
ロスといえば、本作はMCUの2作目にあたる『インクレディブル・ハルク』(2008)と深くリンクする。同作で起きたハルクとアボミネーションの死闘が少なからず影響するほか、ハルクの血清で頭が肥大したサミュエル・スターンズ(ティム・ブレイク・ネルソン)、ロスの娘でハルク/ブルース・バナーの元恋人であるベティ(リヴ・タイラー)が長い年月を経て再登場する。あくまで主役はサムだが、ロス視点から描く『インクレディブル・ハルク』の“準続編”としても機能しており、伏線回収やサプライズで往年のMCUファンを唸らせる。
ウルヴァリンにも関連する超金属「アダマンチウム」の争奪戦や、ロス大統領が求めるアベンジャーズ再建の行方など、来年に控える『アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)/ Avengers: Doomsday』(2026年5月全米公開)に向けても大きな一歩を踏み出す。キャプテン・アメリカを継承したサムが、新生アベンジャーズをどのように束ねるのか。期待が大きく膨らむ予習作としても申し分ない一本だ。(編集部・倉本拓弥)
映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』は2月14日(金)日米同時公開