【ネタバレ】「相棒」新たな傑作回誕生 右京が刺され…衝撃展開の連続

ドラマ「相棒season23」(テレビ朝日系・毎週水曜よる9時~)の第15話「キャスリング」が12日に放送された。山荘で怪しい男とチェスで対戦する杉下右京(水谷豊)と、その手足をとなって捜査に飛び回る亀山薫(寺脇康文)という構造の安楽椅子探偵ものかと思いきや、「ある意味もう一段越えた構造を持ったお話」という衝撃回で、「変だなーって思ってたらそゆこと!」「不思議で、切なくて、悲しくて、とても良い話だった」「深過ぎて未だに余韻に浸ってる」とその物語性に絶賛の声が続出。また、怪しい男を演じた佐野史郎にも「佐野史郎さんじゃなきゃ、あの役は出来ないよ…」「名優であり怪優である佐野史郎が作り上げる雰囲気があってこその、特殊な回だったと思う」と称賛の声があふれている。(以下、第15話の内容に触れています)
いつもは物語の冒頭が描かれてからはじまるオープニングテーマが、いきなりかかった第15話。右京は、山奥の山荘で奥田剛(佐野)と対峙し、チェスをうっていた。右京は劣勢のようで「僕は諦めません。必ずどこかに穴があるはず」と食い下がる。警察官であると名乗り、事件の被害者遺族に会いに来たと奥田に語る右京。15年前、高円寺で母と娘が刺殺され、犯人の遺留品は多かったのにいまだ解決にいたっていない事件だ。第一発見者である父親は外出中で難を逃れており、奥田はその当人だった。
奥田にアリバイはなく、疑いもかけられたが、遺留品のDNAが一致しなかったため、彼が目撃した不審な男が第一容疑者となっていた。技術の進歩で防犯カメラの画像解像度が上がり、凶器の包丁が万引きされたことがわかったと語る右京。その日の奥田のアリバイは、築地の仕事先を訪問していたという。右京はメールで薫に、その裏取りを依頼した。

美和子(鈴木砂羽)が作った何かの鍋をのぞき込み、「これ、美和子ブルー!」と顔が引きつる薫。「美和子ブルーを絶対に食べなくてはいけない戦いに挑む亀山ジャパンがんばれ」という応援の言葉も挙がっていたが、今回、コミカルな要素はここだけだった。
薫は該当の会社に聞き込みに行くが、当時を知る人は残っていないという。倉庫係ならまだいるかもしれないという奥田の話を右京経由で聞いた薫は、冷凍倉庫へ該当人物を探しに行く。だが扉が閉まってしまい、低温すぎて電話も通じず、扉をたたくも反応はない。意識を失う薫、絶体絶命……。
「大事な駒を失ったな」という奥田の声で現実に戻る右京。2人のチェスの手は、語る内容とリンクしている。「頭の中と現実をいったりきたり」と奥田に、事件の5日前に目撃した不審な男についてもう一度右京が聞きなおすと、当時の証言になかった特徴的なマフラーと手袋について語った。それらは取り扱い店が限られており、顧客名簿は手に入るも、両方を買った人物はいないと、薫はつきとめる。だがその特徴は、その場にあった新聞や雑誌から奥田が適当に挙げていただけだった。

なぜ嘘をつくのかと問う右京に、奥田は、自身は家族を持つべき人間ではなかったのだと告白した。凶器は現場近くのビルの給水塔に隠したと自供する奥田。薫がそのはしごを登るとネジが外れ、薫は落下する……。
「早く刺せ」という奥田に「これも罠ですね」と右京は返す。次の右京の手は、「いままでになく平凡」という手だった。基本に立ち返って奥田の当日の行動を調べるように薫にメールする右京。立ち飲み屋で奥田のアリバイがとれるも、共犯者の可能性がある。右京はあるアパートの住所を諳んじ、薫はそこに向かった。「僕はずっと、あなたの話の矛盾点を探し続けていました」という右京は「チェック」と告げた。
薫はアパートから被害者母子の写真と、行動メモを発見する。奥田がこれみよがしに感電死の話をしだすと、呼応したように薫がアパートで感電して倒れ、右京は電話で「亀山くん!」と連呼する。「大事な人間を失った気分はどんなだ?」という奥田の問いに、右京は「言葉にならない、すべての責任は自分にある、自分を許せない」と答えた。「あなたもそうだったのでしょうね」と右京。「どうしてそんなに暴きたがる?」という奥田に、「どんなに目を背けたいことであっても、真実と向き合うべきだと思うからです」と返す右京は、激高した奥田に刺され、息絶える。

家族を殺そうと機会をうかがっていた、凶器は万引きした、遺留品となる品を盗み、殺した……と奥田は思い込んでいた。「チェックメイト」。右京の声で奥田は、特命係の部屋にいることに気づく。「僕たちはずっとここで話していました」と語る右京。保険金で買ったという山荘は存在せず、奥田は「家族は死んでないから」と保険金受け取りを拒否、くだんのアパートに一人で住んでいたのが現実だった。「あなたは犯人ではありません」。AIによる防犯カメラの映像の鮮明化で有力な被疑者が浮上、奥田はその面通しに呼ばれていたのだ。幾重もの理屈で守られていた奥田の心の矛盾点を見つけ、その無実を証明するのが「僕のすべきこと」だったと右京は語った。
右京が奥田の供述の矛盾をいくつも突いたことから、「過去の供述覚えてるのこわいよぉ」「右京さんスペック発動!」「さすがだ」とその驚異の記憶力に驚嘆の声があがった。さらに「薫ちゃんがしんどすぎる回」「亀山かわいそう」「今週の亀山くんはIFで死にすぎでは」と薫に同情する意見も多数見受けられた。何より、「1時間ドラマの中で犯人と被害者遺族両方同時に演じるなんて難しい役、佐野史郎クラスの俳優にしかできんわな」「最後の写真のいいお父さんの佐野さんに涙腺来ちゃうよ」「好戦的な態度と、自らを責め苦しむさまを“静”の演技で使い分ける佐野史郎さん、凄かったなぁ」とゲストの佐野の演技を絶賛する書き込みでSNSは盛り上がっていた。
一筋縄ではいかない構成で、「相棒」ワールドの可能性をさらに深めた今回。「妄想劇場」「現実世界と想像世界を行ったり来たりしていて、不思議な世界観だった」「一緒に旅をした気分」「えええ!? と何度も驚く展開、スゴイ物語。何度も観返したい名作回でした」視聴者の満足度も高かったようだ。(文・早川あゆみ)