【ネタバレ】「相棒」“女心わからないブラザーズ”健在…右京の弱点がさく裂

ドラマ「相棒season23」(テレビ朝日系)の第16話「花は咲く場所を選ばない」が19日に放送された。画商が殺された事件で日本画の巨匠の娘が容疑者となるも、意外な着地点を迎える物語で、SNSでは「まさか、そこが犯人!?」「芸術作品の付加価値や評価というものについて考えずにいられない」といった声があがっている。(以下、内容に触れています)
小手鞠(森口瑤子)の誘いで菜の花畑を訪れた杉下右京(水谷豊)は、そこで日本画最後の巨匠と言われた虻川徹の娘・希美(松井愛莉)と出会う。彼女は学生ながら高く評価された画家であり、小手鞠は芸者時代から徹一家、特に妻・洋子(荻野友里)と仲が良く、希美のことも知っていた。そこは2か月前に徹が心臓発作で死亡した場所だった。
ギャラリーを経営する画商の星郁夫が、背中をハサミで刺されて死亡していた。発見者はギャラリースタッフの西野守(滝本圭)。星と関係が悪かった人として、彼は希美の名前を挙げた。

現場にはイヤリングが落ちており、右京がそれは希美のものだと確認した。付着していた血は、DNA鑑定によって洋子の娘のものだと確認されたが、希美は行方不明となっていた。彼女は半年前から家を出て、房総のホテルに泊まっているというが、事件当日にチェックアウトしていた。心臓発作で死んだ徹の薬を、星が隠したのではないかという噂があり、そうだとしたら希美が星を殺す動機になる。一方で右京は、ギャラリーに空の額縁があったのが気になっていた。
西野は、希美が星のせいで悩んでいたと証言した。徹の死の後、星の希美への扱いが軽くなったという。また、徹が若手画家の育成のために立ち上げた「菜の花プロジェクト」というグループ展に希美の絵が搬入される予定だった。さらに、倉田ひかり(山谷花純)の絵も。
ひかりを訪ねた右京と亀山薫(寺脇康文)は、持ち去られたのはひかりの絵ではないかと推測する。ひかりは、星に「菜の花プロジェクト」に誘われ、そこで注目を集めたために絵が売れるようになったという。まさに菜の花プロジェクトで羽ばたいた才能だが、同じプロジェクトに関わる希美とは接点がなく、「住む世界が違う」と語った。

希美のアリバイが証明された。誰かをかばっているとしたら母の洋子だろう。徹が遺産の半分を菜の花プロジェクト、つまり星に託すという遺言を残しており、陽子は星を恨んでいたことがわかったのだ。だが洋子は、犯行時間には加賀さゆり(小林さやか、正信(田中壮太郎)の喫茶店に小手鞠といたことが証明された。
ホットケーキが名物だという喫茶店には、希美の絵が飾られていた。加賀夫婦は徹のファンで、星にすすめられて娘の絵を買い込んだのだという。その中に、ひかりの絵と同じモチーフのものがあった。希美とひかりは仲がよかった時期があるのだ。
ひかりと希美は同じ誕生日で、同じ産院で生まれたという。さらに右京は、徹の死亡状況から、彼が光に敏感な遺伝性の目の病気「アーレンシンドローム」を持っていたことに気づき、ひかりもその症状を持っていることを指摘。赤ん坊の取り違えが起きたのだ。つまり、現場に落ちていたイヤリングはひかりのものだった。奥の部屋に隠れていた希美が姿を現し、ひかりとは菜の花プロジェクトで出会ったこと、自分たちの取り違えに気づいていたことを明かした。

2人はそれを隠そうと決めたが、星はそれを察して、ひかりの絵の価値を上げるために世間に公表しようと画策していた。それに抵抗したひかりが星ともみ合い、イヤリングを落としたのだ。正直にすべてを話せば母に取り違えがバレてしまうため、希美は姿を消したのだった。
ひかりの証言で現場にバニラの香りがしたことを知った特命係は、加賀夫婦を追求した。さゆりは、星がひかりを脅していた現場を目撃、希美が徹の娘ではないと知り、星に騙されたと怒りのあまり殺してしまっていた。徹の絵は買えなくても、そのDNAに触れたいと希美の絵を買っていたのだ。「愚かですねえ。生まれや遺伝子に囚われ、希美さんが描く絵の美しさを、あなたは見ていなかった。残念でなりません」と右京はさげすむように言い放った。
菜の花畑の中に一輪だけ色の違う花がある希美の絵は、「どこにいてもわたしはわたしだと思えるように描きました」という。洋子は希美を抱きしめ、ひかりにはこれからのことはまた話そうと笑顔を見せる。ひかりも「はい」とうなずいた。

右京は小手鞠に、洋子のために希美の様子を見てこようと、自分を菜の花畑に誘ったのだろうという。「半分正解です」と答える小手鞠。「なぜ半分なのでしょう」と真顔で聞く右京に、薫はワケアリな表情で「知りません」と答えた。
この右京の様子に、「鈍感な右京さんのオチも面白い」「あそこまで全てを見通せてるのにこてまりさんの言葉の意味は解らない右京さんと、そこには気付く亀山薫」「右京さん、やはり女心は致命的にわからない模様」「右京さん、朴念仁だなぁ」と微笑ましさ半分、あきれ半分の反響が続出している。やはり「女心わからないブラザーズ」という芹沢慶二(山中崇史)の指摘は正しかった。ブラザーズの片割れはいわずとしれた伊丹憲一(川原和久)だ。「滅多に無い《優位》を酒と共に味わう亀ちゃん」とオチもしっかりついていた。
希美役の松井とひかり役の山谷は、実際に同じ1996年12月26日生まれというのは今回の豆知識。「赤ん坊の取り違えがきっかけで起きてしまった闇深事件」ではあるが、「どんな場所でも美しく咲く花でいる若い二人のたくましさが素敵でした」とも。サブタイトルの意味の深さをかみしめたくなる物語だった。(文・早川あゆみ)