高橋文哉、犬の思いを代弁 西野七瀬と“トリプル主演”「うれしいワンと言っています」

俳優の高橋文哉が20日、TOHOシネマズ日比谷で行われた映画『少年と犬』の初日舞台あいさつに、ダブル主演の西野七瀬と劇中で活躍したジャーマンシェパードドッグのさくらと共に出席。高橋はイベント中、さくらの口元に耳を寄せ、思いを代弁する一幕があった。この日は伊原六花、木村優来、宮内ひとみ、瀬々敬久監督も来場した。
第163回直木賞を受賞した馳星周の同名小説を実写化した本作は、ある少年に会うために東北から九州へ向かう犬が、行く先々で出会った人々と交流するさまを描き出したドラマ。この日の舞台あいさつは映画上映後に実施されたということで、客席は作品の余韻に浸っていたが、そんな場内を見渡した高橋も「映画を観た後ということで、まだ目がうるんでいる方もいらっしゃって。皆さまのお顔を見ると、初日を迎えたんだなという感覚になって、うれしく思っております」としみじみ。西野も「今日という日を前の日からすごく楽しみにしていました。今日を楽しい時間にできたら」と意気込んだ。
この日は、劇中で核となる多聞を演じたジャーマンシェパードドッグのさくらも、高橋に連れられながら登場。「撮影から一年くらいたちましたが、その時はこんなにもさくらと一緒にいるなんて思わなかった。バラエティー番組にも出たし、初日の舞台あいさつまでやってくれて。僕としては(西野と高橋と)トリプル主演だと思っています」とさくらの協力ぶりに感謝を述べながらも、さくらの口元に耳を寄せると、「さくらもうれしいワンと言っています」とさくらの思いを代弁してみせた。
一方、瀬々監督にとっても本作は特別な思いがあるという。「実はこの映画は去年の3月に撮影したんですが、ちょうどその頃に父親ががんで入院しまして。余命1か月と言われて、まずいなと思ったのですが、何とか6月まで生きました。その時にお坊さんが言っていたのですが、人間の努力ではどうしようもないことがあって。それは老いであり、死であると。(犬の)多聞はそこをつないでいるんですけども、もうひとつ震災や天災というのも人間の努力ではどうしようもないこと。でも今回は多聞が僕たち人間を救ってくれるというテーマであり、そういう風につながっているので。そういう意味でこの作品が僕にとっては大切な話だと思っています」と語った。

舞台あいさつでは、本作のテーマに合わせてそれぞれの登壇者たちに「自分の胸に持つものは?」という質問も。宮内は、撮影中に親の病気に向き合っていたことを明かす。「実は撮影期間中に母が亡くなって。撮影現場と実家を行き来しながら看取ることができましたけど、母の愛情、強さをそこで感じましたし、今回は母親役をやりながらだったので、母のありがたさを感じました。もう会うことはできないけど、ここ(胸の中)にいると思って。この作品に参加できてよかった」としみじみ語った。
一方、西野が胸に持つものは「自分を大事にしようという心」だという。「もともとそういう考え方ではなかったんですけど、今はそういう風にしていて。もちろん誰かのためにという原動力はものすごく大切なんですけど、でも最後の瞬間に決めるのは自分なので。その自分を大事にしていきたい。わたしは直感をすごく大事にするので、直感を大事にすることが自分につながるのかなと思います」
対する高橋は「僕は人であり、言葉です」とコメント。実は高校生の時に志していたのは料理人だったとのことで、飲食店でアルバイトをしていたという。「そこで働いている時に芸能の仕事に興味を持ち始めて。たまに来るエリアマネージャーの方に相談した時に、『好きなことを仕事にしたいという感情は唯一まわりの人を振り回していいワガママなんだよ』と言われて。なるほどと。料理人か、俳優か、自分がやりたい仕事を選ぶ時に、自分の感情だけで道を変えていいのかと思った時にその言葉に救われたなと思いました。そして今でもその言葉は生きていて。やりたい作品のオファーをいただいた時に、スケジュールの兼ね合いでできないかもと思った時でも、自分がやりたいという感情を大事にしていきたい、というのは胸に残っている言葉です」と明かした。(取材・文:壬生智裕)