尾美としのり、「べらぼう」で妻お手製の“マイふんどし”着用 「鬼平犯科帳」中村吉右衛門から教え

横浜流星主演の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜NHK総合よる8時~ほかで放送中)で戯作者・朋誠堂喜三二(平沢常富)を演じる尾美としのりが役づくりを振り返り、撮影時に着用する“ふんどし”へのこだわりなどを明かした。
本作は貸本屋から身を興し、喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴、東洲斎写楽らを世に送り出し、江戸のメディア王として時代の寵児となった蔦屋重三郎(横浜)を主人公にしたストーリー。尾美の演じる平沢常富(朋誠堂喜三二)は、出羽国久保田藩(秋田藩)の藩士で、のちに蔦重(横浜流星)の最大の協力者となる戯作者。吉原にも出入りし、「宝暦の色男」の異名を誇った遊び人の顔を持つ……という役どころ。
9日放送・第10回まではほんの一瞬映り込むような登場の仕方で話題を呼んだ尾美だがこれ以降、本格登場といった感で徐々に出演シーンが増えている。大河ドラマには「草燃える」(1979)に始まり、「北条時宗」(2001)、「平清盛」(2012)、「おんな城主 直虎」(2017)、「麒麟がくる」(2020~2021)などに出演してきたベテランでもあり、こだわりも強い。
尾美は「今回は江戸時代が舞台。現場に向かう時はずっと落語の廓話(遊郭や遊里に関する落語)を聞きながら移動しています。江戸弁に自然と馴染めるようにしているんです。例えば『らりるれろ』はちょっと舌を巻いて話すとか。あと細かな所作も気にしていますが特に季節。今は何月くらいで暑いのか寒いのか。そういうことで(季節を感じる動きを違和感なく)自然にできたらいいなって」とアプローチに触れる。
宝暦の色男という設定についても「今回で言えば吉原に通い慣れていて、遊び方がうまいんだっていう意識で演じています。いい男っていうよりは“この人遊び慣れているな、綺麗な遊び方をしているな”っていうのが伝わればいいなって。ただ自称という設定ですけどね(笑)。相手に楽しんでもらって自分も楽しむ。そういう色男だと解釈してやっています」と平沢を分析する。
平沢には共感できるところも多いといい、「僕自身も台本を読んで、この人すごく素敵な人だな」としみじみと話す。「物事をはっきりさせないところが好きだったりします。“楽しければそれでいいんだよ”ってセリフがあって、そういうところも好きです。素敵な言葉を持っていて、素敵な人柄を持った人だと思います」と憧れる一方、「あまり思いつめて仕事をしないところは僕と似ていると思います」とシンパシーを寄せる。その上で「僕自身は仕事はあんまり好きではない。恥ずかしいんです、人前でお芝居をするということが」と謙遜しながら笑顔を見せた。
また、過去に出演したテレビ時代劇「鬼平犯科帳」(フジテレビ)での火付盗賊改方同心・木村忠吾役を振り返り、「彼と似た役だと思いました」とも話す。「同じ時代ということで長谷川平蔵宣以とも(ドラマの中で)お会いしたかったですね。彼が『本所の銕(てつ)』と呼ばれていた時代ですね」としみじみ回顧。
「鬼平犯科帳」以降、今も行っている時代劇出演の際のこだわりがふんどしであるとも明かし、「鬼平の時に撮影中に映り込みとか何かあってはいけないって(衣装の下に)ふんどしを穿いて演技をしていたんです。今回もふんどしを穿いていて、今日も私服の下はふんどしです。下着のラインが出てはいけないとか考えてそうしているんです。特に今回は吉原です。何か(アクシデントが)あって見えても、“でもふんどしだし”と安心できるようにしようって」と明かす。
また尾美は「朝、家からふんどしをつけて出るんです。ふんどし穿きながら、俺何やってんだって、冷静になる瞬間もありますよ。いい歳こいてなんで俺はふんどしをつけているんだって」と笑うが、そのふんどしが実は妻のお手製であることも紹介。「女房に作ってもらったんです。僕が今つけているのは白のふんどし。時代劇の時は大体ふんどしを穿きます。時代劇をやるとうちの物干し場にはふんどしが吊るされるんです(笑)」
時代劇出演の際にふんどしを着用するようになったのは「鬼平犯科帳」で共演した中村吉右衛門からの教えによるものだったそうで「吉右衛門さんと共演させていただいた時に、そういう風にしたほうがいいって教わったんです。お弟子さんもそういう風にされていましたから、僕も真似させていただいたんです。20代の頃からずっとそうさせていただいています」とそのきっかけを回顧する。
普段ふんどしを着用することは……? との問いには「普段はつけていないです。撮影の時だけです」と苦笑い。「通気性はいいけど、トイレの時は大変ですよ。今も撮影中トイレに行くとなると面倒臭いんです。ふんどしを抜いて肩にかけないといけないので(笑)」と意外な苦労話も明かしていた。(取材・文:名鹿祥史)