ADVERTISEMENT

市原隼人「べらぼう」鳥山検校と瀬川の切ない関係振り返る 「見えすぎるからこそ負のスパイラルに陥る」

瀬川(小芝風花)と鳥山検校(市原隼人)
瀬川(小芝風花)と鳥山検校(市原隼人) - (C)NHK

 横浜流星主演の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜NHK総合よる8時~ほかで放送中)で吉原の花魁・瀬川を身請けした盲目の大富豪・鳥山検校を演じる市原隼人。とりわけ注目を浴びているのが瀬川(瀬以/小芝風花)との関係で、6日放送・第14回では不当な借金取り立ての罪で捕らわれる事態となり、鳥山の切ない決意が描かれた。市原があらためて鳥山の生きざま、そして本シーンの撮影を振り返った。

【画像】鳥山検校&瀬川の出会いから別れまで

 本作は、喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴、東洲斎写楽らを世に送り出し、“江戸のメディア王”として時代の寵児になった蔦屋重三郎(通称:蔦重)の生涯を描くストーリー。市原にとって大河ドラマへの出演は、本作と同じ森下佳子が脚本を手掛けた「おんな城主 直虎」(2017・傑山役)、そして「鎌倉殿の13人」(2022・八田知家役)に続いて3度目となる。

ADVERTISEMENT

 鳥山が瀬川と出会ったのは2月23日放送・第8回。鳥山は、初会では花魁が客としゃべってはいけない吉原のしきたりを破って本を読んでくれた瀬川に心を許し、3月9日放送・第10回で瀬川を莫大な金で身請けした。瀬川は瀬以と名を改め新生活を始めるも、鳥山は瀬以の蔦重(横浜)への秘めた想いを察知し、夫婦仲がぎくしゃくし始める。第11回では、蔦重と再会してはしゃぐ瀬以に鳥山が「ずいぶん楽しそうだな、お瀬以」と含みをもたせた言葉を投げかける場面があり、SNSは「何もかもお見通し?」「嫉妬スイッチ入ったな」「嫉妬怖い」と沸いていたが、市原自身の解釈は異なるという。

 「蔦重への嫉妬という見方もあるかもしれませんが、僕自身は瀬以を自分に向けられない自分自身への悔しさだったのではないかと思っています。(盲人であるという)抗うことが出来ない人生のもどかしさを常に感じている彼の、自分自身への憎悪だと思うんです。瀬以を自分のものにできず、瀬以へ当たり前のようにできることができないことへの悔しさがあったと思います」

蔦重(横浜流星)と再会してはしゃぐ瀬以に複雑な鳥山

 そうした鳥山の「負のスパイラル」は、「東京視覚障害者生活支援センター」での視覚障害者への取材を通し、理解を深めたとも語る。

ADVERTISEMENT

 「初めに視覚障害をお持ちの方々とお話したところ、目が見えないぶんさまざまな感覚が研ぎ澄まされていくんだそうです。だから鳥山は人の気持ちもより深く理解できる。瀬以の衣擦れの音や声のトーンなどから感情を読めてしまう鳥山だからこそ、逃げ場のないスパイラルにはまってしまうのかなと。社会というものは人の理性が働いて成り立っているのだと思いますが、鳥山は見えすぎるからこそ、生きていくことすら苦痛になっていくような人生だったと思うんです。そんな中で初めて見えた一筋の希望の光が、瀬川(瀬以)だった。それゆえに瀬以が自分の方に向いていない状況に苦しんでいく。おそらく蔦重の存在自体はあまり気にはしておらず、それが誰であっても鳥山は瀬以を自分に向けられなかったことにもがいている。どうすればいいのか、まるで禅のような、答えがわからない中で生きているような感覚だったと思います」

 第14回では鳥山が捕らえられたのち、瀬以は奉行から鳥山との離縁と言い渡される展開に。奉行によると鳥山は、今後瀬以の面倒をみることは遠慮したいという。なぜ、鳥山は苦しみながら愛してやまなかった瀬以を手放す決意をしたのか? その心境について、市原はこう解釈を巡らす。

ADVERTISEMENT

 「鳥山は高利貸しなど、自分がしてきた非道な行いに対して覚悟を持ちつつ、どこか後ろめたさがあったと思うんです。当時、幕府に庇護されていた中で、検校という自分の立ち位置を与えてくださった人や、善意で支えてくれた人もたくさんいたと思うんです。そうした助けを得て、生きていく術として悪と呼ばれる道にも進んでいた人間ではありますけれども、最終的に人道までは踏みにじれなかった。瀬以や蔦重に固執するのではなく、自分と向き合った中で葛藤のすえに出した答えだったのではないかと感じています」

第14回より捕らわれた鳥山

 では、鳥山が瀬以との別れを意識したのはいつだったのか?

 「もちろん、身請けしたときには考えていなかったと思います。でも、どこからかだんだん瀬以の気持ちが自分にないと感じるようになった。蔦重と会った瀬以の手をつかんで“脈が速い”と気づいたり、弾んだ声を聴いてしまったり。普段自分といる時と違う、繕った姿ではない、縛られていない、ありのままの姿をさらけ出しているのを見て徐々に感じるようになって、その逃げ道が三味線であったりしたんだと思います。息をするたびに敵が増えるような、何も信じられないような暗闇の中で、手探りの状態で生きてきた検校にとって、瀬以が現れたこと自体が人生の中で予想外の出来事だったんじゃないかと。ですから、もとの環境に戻っただけと言いますか。ただ、描かれてはいませんがすごく苦しかったと思います。第13回で瀬以から『重三はわっちにとって光でありんした』と告白される場面がありましたが、その時点で彼の心は決まっていたのではないかとも思います」

ADVERTISEMENT

 鳥山が瀬以を離縁したことに対しての真意は最後まで明かされないままだが、市原は「それもまた鳥山の美しさ」だと語る。

 「第13回で鳥山が瀬以に『どこまで行こうと女郎と客……そういうことだな』と言うんですけれども、どこまで行っても取り繕った2人であったかもしれない。でも、描かれてはいませんが、“あの日あの時あの場所に戻りたい”と思えるような、忘れられない燃えるような時間があったかもしれません。2人の関係を単純に終わらすことなく、結局本心がわからないところが鳥山の1つの美しさでもあると思います。瀬以は最終的には本心を打ち明けますが、逆に鳥山は最後の決意が本心なのかわからない。そこに振り回されてしまったお瀬以もいると思うんです。“人間ってこういうものなのか……”と思いましたし、森下さんが描く愛は美しく、そして歯がゆいなと。切なさを感じる関係性が描かれていたなと思いながら最後のセリフを言っていました」

 共演シーンの多かった小芝については「すごく尊敬しています」と市原。「共演させていただいてすごく幸せだと感じる女優さん」だとも語り、「ちょっとした声、仕草、全てで魅了する。もちろん視聴者の皆さまもそうだと思いますが、撮影現場にいたスタッフ、キャストもしかりで、全ての空気を一気に自分の方に向けるような魅力がある方。なかなかお会いできない方なのではないかと思い、僕も最後に『あなたのお芝居のファンです』とお伝えしました。風花ちゃんが演じられたからこそ、瀬以の繊細な人間愛、蔦重との関係、この作品の空気感が出来上がったと思いますので、これからが楽しみだなと。1年間続いていく作品に期待を持たせてくださるかけがえのない存在だと思います」と魅力に触れた。

ADVERTISEMENT

 なお、特に気に入っているシーンについては、第11回で鳥山が瀬以に「そなたが望むことは全て叶えると決めた。私はそなたの夫だから」と告げる場面を挙げた。「あれは瀬以への純粋な気持ち、彼の本心だったと思います。あとは三味線を弾く場面では、単に音を奏でるのではなく、いろいろな思いを込めて弾かせていただいたので、なかなか他の作品ではできない表現の仕方になっていると思います」と振り返っていた。(取材・文:編集部 石井百合子)

関連作品を配信サイトで視聴

※VODサービスへのリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、リンク先での会員登録や購入などでの収益化を行う場合があります。

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT