森田まほ
映画が好き!現場で働きたい!その思いがこうじて単身アメリカ、ハリウッドへ渡り、現場でインターンとして日夜現場を飛び回る日々であったが、ある日アメリカ人の青年と結婚。その後予定外の妊娠をするが、無事出産。現在はグリーンカードを取得すべく待機中。 |
おそるべし、小学生のガキ共とぷるぷる震えながらすれ違った私。でも、ほっと一安心した矢先に隣に並んで歩く人影に気付いたのだった。
ぎ、ぎゃぎゃーーー!!!
と、叫びたいところだったんだけど、恐怖のあまり声が出ない。とにかく口をぱくぱくさせていたら。人影がちょろっと月の光に照らされた。
照らされたおっさんは、温厚そうな黒人のおっちゃん。なんか、格好を見てると神父さんみたいだ。
「お嬢さん。道に迷ったんですか?」
うむ。お嬢さんね。なかなか紳士じゃん。とりあえず、ハリウッド目指して歩いていることを伝えると、神父さんは超親切。
「この辺は、おかしな輩が多いので気をつけて下さいね。特にさっきの2人組なんてどう見てもちびっ子ギャングだ」
「確かに。ちびっ子ギャングですな」
そこで、気付いたんだけど、このおっさん。あの子達が、カップルだと思うように隣に来てくれたんじゃないの? イイヤツじゃん。神父。
この時点で、私は完全にこのおっさんに心を許した。おっさん、私をハリウッドまで守っておくれ。
おっさんは、ひたすらいろんな話をしてくれた。しかも、暗くて見えねえっつうのに名刺までくれた。私の心を安心させるために。
でも、言ってることは30パーセントくらいしか分からん。すまねえおっちゃん。
私は、今の自分の仕事を片言英語で一生懸命説明した。ジャパニーズマフィア映画のスタッフをしてて、もうすぐ撮影に入るんだー。
興味津々のおっちゃんは、マフィアについていろいろ聞いてきた。入れ墨のこととか、兄弟仁義の話とか。指ツメとか。
迫力ある私を見てもらおうじゃないのと、寺島進さんのまねとかもしてみた。
「てめえ、もいっぺん言ってみろ、ゴラアアアア!!!!!」
私のへったくそな寺島セリフは空しく暗やみの大通りに響いた。
やっべえ。こんなの、自分で強盗呼んでるもんじゃないのよ。
実際、どう作用したかは知らないけど私を最後まで守ってくれるはずだったオヤジはなぜだか私の迫力のない(はず)「ゴッラアアア!」に完全にびびった模様。
「あ、ゴメンナサイ。私こっちに行きます」
お嬢さんじゃあね。と手を振るとそそくさと消えてったのよ。
うえーん。また一人ぽっちい。それもこれも私がやくざぶるからだわ。なんてお馬鹿さんなの!
でも、ハリウッドはもう目の前だった。おほほ。着いた着いたー。見慣れた手形のある通りに出るとようやく力が抜けたのでした。
そして、ネオン輝く明るいハリウッド通りで私はようやくおっちゃんの名刺を見てやった。やっぱ、神父かしらね。そのカードには一輪のバラが。そして、そこにはメッセージのようなものが。
「今すぐ、私の唇にキスをしてください。そして私の、部屋で熱い抱擁を交わし、あなたを天上へと導きましょう」
ぐああああああ!
森田まほチャイニーズシアター周辺にて全身の毛穴が開く。
次週につづく
お知らせ:月刊フリックスでまほちゃんが、「好き勝手クロスレビュー」の連載を始めました。ハリウッドのカリスマビデオ店員マイケルのちょっと辛口レビューも要注目!
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