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2003年2月

私的映画宣言

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映画ライター
性別不詳を狙ってイラストで帽子を描いてもらってましたが、春なので(?)ハゲ・カミングアウトです。でも若ハゲだよって何のフォローにもなってないか。マスクは花粉症なので。いやホントにもう隠し事はないですって。
ライター
そろそろ花粉症の季節。薬を飲まなくてはと思うが、飲めば眠くなる。ただでさえ、春眠暁を覚えずの時期になり、もともと睡魔にも弱い私。試写も見なくてはなんないし、つらい戦いの日々だ!
ライター
フルーツ・チャン監督『人民公厠』の主演俳優・阿部力君と会っていたら、侯孝賢監督&行定勲監督と合流することに。その後、新宿のバーで『D.I.』のエリア・スレイマン監督と遭遇。改めて、「東京って国際都市なのね」と実感。
 アレックス
ストーリーマルキュス(ヴァンサン・カッセル)とピエール(アルベール・デュポンテル)が、ゲイバーで1人の男を捜している。2人は偶然、救急車で運ばれる女性を目撃。無惨な姿のその女性は、マルキュスの婚約者アレックス(モニカ・ベルッチ)だった。
日本公開:2月8日
(渋谷東急3他)
上映時間:1時間38分
配給:コムストック


最初に「時はすべてを破壊する」とか言うんです。「でも、時は癒してくれるし、育むって事もあってそっちの方が見たいんだよね」って思ってたら、映画は吐き気を催すと話題のレイプと殺人シーンから時間を逆行し始めた。つまり最悪の状況からより良い過去に時間をさかのぼってるんだよ。ありがちな時による癒しが見たいヤツはこれで満足でしょってわけか……ってドアホ! ノエ監督って自覚的問題児なんだろうけど、マジメに露悪的な所が嫌いだ。世の中を茶化す余裕が欲しいな。


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ギャスパー・ノエだもんな。何かやって当然と思ってましたが……目が回る。ワンシーンワンカットの多用にはああイライラ。さらにブンブン続く悪趣味な暴力シーンには勘弁してよ。レイプシーンに至っては、モニカ・ベルッチの根性は買うけど、女優魂賭けるほどの意味はあったのか? わ、わからん。観終わった後は、映像によっていたぶられた感じがして、もうぐったりげんなり。というワケで、この作品についての好き度はパス! どうしても観たい方、心身ともにとっても元気な日に行くことをお勧めします。


正直、ギャスパー・ノエは苦手だった。神経逆なでするような変態描写で話題性を作るその手法が。しかし今回は、映倫が一番問題視したと言われる暴力描写も、カンヌ映画祭で物議を醸しだしたレイプシーンも、一応理由付けされて描かれているので納得。何より、エンディング・クレジットから時間が遡っていくそのアイデア、98分間突っ走るパワーに圧倒され、スクリーンに釘付けとなった。そしてラストの、モニカ・ベルッチの幸福感に満ちた微笑み……。この映画後、なぜか別居してしまったヴァンサン&モニカの私生活も相まって、切ない。

 戦場のピアニスト
ストーリー1940年、ドイツ占領下のポーランド。ユダヤ系ピアニスト、シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)は家族と共にゲットーへ移住。やがてユダヤ人の収容所移送が始まり、家族の中で彼だけが収容所行きを免れた。食うや食わずの潜伏生活を送るある日、遂に1人のドイツ兵に見つかる。
日本公開:2月15日
(日劇1他全国東宝洋画系)
上映時間:2時間28分
配給:アミューズピクチャーズ



ナチスのユダヤ人の迫害ってテーマはあまりに悲惨でやり切れなくってもう辛いんです。さらに収容所経験のあるポランスキー監督じゃ益々陰惨で……。でもポランスキーは体験に縛られてしまうような凡庸な監督じゃなかった。絶望のどん底で発揮される“善意”なんてモノをさらりと描く。おまけにそこはかとなくユーモラスだった。過去の話しではなく今の自分の問題として、自分が絶望的状況にある時に第三者の命を救うために行動できるだろうかって、真剣に考えさせられたな。


これは凄いっ! の一言だ。実話に基づいているとはいえ、やはり自身が幼い頃ゲットーで過ごした経験があるポランスキー監督だからこそ、戦争の不条理がリアルに、淡々と描かれている。家族や仲間を失い、食べるものもなく、ピアノもない。ないない尽くしで、明日を生き抜けるかどうかの望みすらない。それでも、生きようとする主人公。とくに想像上のピアノを弾くシーンは圧巻で心揺さぶられる。16キロダイエットしてまで役作りしたエイドリアン・ブロディも素晴らしい。彼の憂いを帯びた瞳、当分忘れられそうにない。


確かに、いい映画です。感動を約束してくれます。でも言葉を返せば、ユダヤ人の悲劇を描いた王道中の王道映画で、面白味に欠ける。カンヌ映画祭の時も、『ボウリング・フォー・コロンバイン』のパルム・ドール受賞を支持していた方でして。天の邪鬼な性格の私としては、『ライフ・イズ・ビューティフル』や『ムッソリーニとお茶を』。最近では『バティニョールおじさん』のような、戦時下の苦しい時こそユーモアを忘れない人間を描いた作品の方が胸にズシンと来る。ただ主演のエイドリアン・ブロディだけは、アカデミー賞で応援しよおっと。

 ビロウ
ストーリー第二次世界大戦下、米国潜水艦タイガー・シャークはドイツ軍に撃沈された病院船の生存者3名を救出。だがその中の1人は、潜水艦の疫病神=女性であった。彼らの乗艦以降不可解な現象が頻発し始め、乗組員たちは心身ともに追い詰められていく。
日本公開:2月22日
(丸の内ルーブル他)
上映時間:1時間45分
配給:ギャガ・ヒューマックス


水に潜る瞬間の潜水艦の映像などなど、迫力があってワクワクしながら見始めた。美しい女性が乗り込んできた時にも、こりゃ新たな展開で潜水艦モノの傑作『Uボート』をついに越える作品が来ちゃったよ! って喜んでたのに、そこからがどうも……。あれだけリアルに潜水艦設定したなら、次から次へと襲いかかるに危機に乗組員たちがアイデアと男気(と女気)で立ち向かって欲しかったなぁ。オカルトに仕立てちゃうなんて逃げだよ。『Uボート』の勝ちだな。『U-571』にも勝てず。


ダーレン・アロノフスキーが作品に噛んでいるからと期待した。が、サスペンスなのか、ホラーなのかどっち付かずで進むストーリーが今一つ練れてないし、人間描写も雑把。要はあれもこれも取り入れて怖がらせようとして、中途半端で終わってる。女性が潜水艦に乗ると不吉というタブーも、さほど生かされてもいない。潜水艦サスペンスは観てるこっちまで息苦しくなってこそのものだと思うが、息苦しさが物足りん。あ、イギリス映画好きにはジェイソン・フレミングを拝めますが……。


潜水艦映画と言えば、体臭漂ってきそうなムサ苦しい男たちの人間ドラマが定番。そこにホラーというジャンルを持ち込んだのは新鮮だった。確かに、深ーい海の中、あらゆる物音が不気味に鳴り響き、密閉された空間というのは人間を心理的に追い詰め、怖さ倍増。ただ、メジャー俳優が出演していない低予算映画なので、ちょいとセットが安っぽい。潜水艦マニアの方は、あまり期待しない方がよろしいかと。なぜかプレスにプロフィールも載せてもらえてないが、『カーテンコール』のジェイソン・フレミングも出ている。あのシワがたまらん。

 007/ダイ・アナザー・デイ
ストーリージェームズ・ボンド(ピアーズ・ブロスナン)は危険人物ムーン大佐(ウィル・ユン・リー)を暗殺するために北朝鮮に潜入し、大佐を滝壷に突き落とすが、あえなく捕らえられ14か月の間拷問にかけられる。ある日、ボンドは手を縛られたまま1本の橋を前に進むように命じられるのだが……。
日本公開:3月8日
(丸の内ルーブル他)
上映時間:2時間13分
配給:20世紀フォックス


相変わらず荒唐無稽の007シリーズの一作。つまり水戸黄門は印籠出し、寅さんはマドンナにフラれ、ボンドは世界を救う。でも今作はギャグが冴えてた。絶対不可能な状況で助かっちゃったので、照れ隠しに大鐘を鳴らしてみましたぁ! ってな自嘲の笑いのセンスがね。それにしてもハル・ベリーがベッドの中でボンドに「ツヨイ」って言ってたけど、年齢の設定が謎だが、ボンドって実行の伴った大スケベだ。でも彼には「愛」と「心」がないね。そんなの誰も求めてないか……。


スパイもんが好きで、ピアース・ブロスナンはオヤジ俳優好きな私のツボにハマるもんで、星が多くなる。もっとも、今回はハル・ベリー扮するジンクスが目立ち、ボンドは働きが薄い。彼女を口説く文句は強引すぎる。ダサイおっさんになっちゃうよ! 加えてピアース自身の動きもチョイ鈍い。しかしな、北朝鮮相手にやりたい放題のリー・タマホリ監督、部分的に特撮がチャチです、雑です。シリーズ最高なぐらい、荒唐無稽の連続に、こんなバカなとツッコんでみたり、老けたマドンナはどこに? と探してみたり。文句言っても見どころ満載の007!


朝鮮民主主義人民共和国がお怒りになるのもごもっとも。冒頭、ジェームズ・ボンドがまさかのサーフィンで密入国だ(爆笑)。金●日氏にしてみれば「我が国の軍事力をナメるな!」。そんな冗談はさておき、38度線という南北両国が最も神経を尖らせている場所で、ドンパチやっちゃ配慮がないと言われても仕方ない。しかし今回のボンドは「あり得ない」こと連発。消える車に、機体に穴が空いても飛び続ける飛行機に、『フェイス/オフ』もビックリ! の東洋人が西洋人になってしまう整形技術。『オースティン・パワーズ』への挑戦状か!?

 キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
ストーリー1960年代半ば、詐欺師フランク・アバングネル(レオナルド・ディカプリオ)はFBIから指名手配されていた。FBIの捜査官カール(トム・ハンクス)は彼を追っていた……。
日本公開:3月21日
(丸の内ルーブル他)
上映時間:2時間20分
配給:日劇1他


原作を先に読んじゃった。だから冷静に映画としての出来が判断できなくなった。「あっ、このエピソードは、あのエピソードと合体させてある」とか、「ホントはジェット機の構造を調べ尽くしてるから逃げられたんだけど、その説明は省いちゃったな」なんて頭の中で原作で得た知識を補強しちゃってるんです。というワケで映画の評価はあんまり信用しないでください。でも原作は物凄く面白かった。さすが詐欺師は語るのがウマイ! 映画見終わって釈然としなかったら是非一読を。


オープニングの洒落たタイトルバックから楽しませてくれる。それにしても、実年齢は28歳なのに16歳に見えるレオは凄い。しかも、パンナムの制服を着れば、イケメンになる。レオ好きにはたまらない彼のコスプレ! 詐欺のエピソードは痛快だし、大人のふりして実は少年という役柄は演技力の見せどころ。また、父親クリストファー・ウォーケンは出色。落ちぶれても「俺は父親」という姿には泣けてくる。一方、あっさりと夫を見捨てた母親を演じるのが、熟女ナタリー・バイ。このヘンのキャスティングもグー! 久々素直に楽しめたスピルバーグ作品。 


まず脳裏に浮かんだのが、今年公開予定の日本映画『油断大敵』のコト。実話が原作で、本作品同様、追う者と追われる者の奇妙な友情がテーマだ。柄本明が大泥棒の通称“ネコ”を、役所広司が刑事役を演じ、こっちの方がレオ&トムより10倍スリリングで、駆け引きが面白い! なのに後発となると、二番煎じと言われちゃいそうで……。それくらい、この映画の目玉であるはずのレオVSトムの競演が希薄で喰い足りない。でもオープニング・タイトルのアニメのカッコ良さと、レオのコスプレが堪能できる事に免じて、好き度に★1つおまけ。

イラスト:micao
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