第7回 ハリウッドの“問題児”事情
LA発! ハリウッド・コンフィデンシャル
こんにちは! 皆さんお元気ですか? |
トラブルで悪名高いヤング・スターの代表といえば、ブリトニー・スピアーズが日本でも有名(?)ですが、最近のアメリカゴシップ誌の常連は、ハリウッドの新鋭シャイア・ラブーフ。日本でも映画『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』で、インディ・ジュニアとしておなじみになった彼ですが、実はこのシャイアくん、穏やかそうな外見からは想像しがたい問題児なのです!
シャイアが7月に飲酒運転で事故ったというニュースは日本でも報道されましたが、実はシャイアのアルコール問題は今回が初めてではなかったのです。去年11月に、シャイアが飲酒絡みの事件でシカゴ警察に逮捕されていたのを皆さんはご存知だったでしょうか? 夜中の2時過ぎにウォルグリーンというドラッグストアに現れたシャイアは、すでに泥酔状態。あまりに騒々しいので、ガードマンが店を出て行くように頼んだところ、完全拒否。ガードに散々タテをついた揚げ句、大騒ぎしてしまいます。業を煮やした警備員がついに警察に通報して、シャイアは逮捕……となったわけです。充血した目でニンマリするシャイアの逮捕写真は、翌日あちこちの新聞・雑誌、ゴシップ・サイトでトップを飾りました。
インディー・ジュニアにあるまじき、なんとも情けない話しですが、去年の事件に輪をかけてもっと情けないのが、懲りないシャイアの今回の飲酒事故です。7月26日にハリウッドの人気ライブハウス「トルバドール」で、バンドを見ながらウイスキーのショットをガンガン飲んでいたシャイア。目撃者によると、「見さかいなく踊りまくっていてクレイジーだった!」らしいのですが、普通ここまで酔ってたらタクシー呼びますよね? それか友だちにSOSするとか……。ところがトラブルメーカー・シャイアは、そこで運転という最悪の選択肢を選んでしまったのです! それから間もない深夜2時45分。ライブハウスから数キロ離れた交差点でシャイアの運転するトラックが、逆さま状態で道の真ん中に転がっていました。原因は無茶な左折をして、対向車を避けようとハンドルを切ったための横転事故。幸い、対向車の女性にもケガはなく、シャイアの助手席に座っていた女優イザベル・ルーカス(彼女は映画『トランスフォーマー2』の共演者)も大したケガはありませんでした。ですが、シャイアの左手首は数個所に渡って複雑骨折となってしまいました。
不幸中の幸いだったとはいえ、ここで大問題になったのは、シャイアの責任感。このとき彼は、来年夏の大作『トランスフォーマー2』の撮影を開始したばかりだったのです。大切な主役がいきなりギブスをはめて登場するわけにもいかず、シャイアがしばらく降板ということは、彼中心に組まれていた撮影のスケジュールが大幅に狂うことになるのです。短気で有名なマイケル・ベイ監督がシャイアの不祥事について爆発したかどうかは知る人ぞ知るところですが(わたしの予想では、きっと助監督あたりに八つ当たり中!)、この事故のせいでマイケル監督だけでなく、ほかの共演俳優たち、そして製作陣全体に大変な迷惑がかかってしまったのです。シャイアの酒ぐせのせいで失われた1日当たりの損失は数百万円以上になっているはず。
子どものころからテレビや映画に出ていた俳優たちはシャイアやブリトニーに限らず、大人になってから有名になったタレントたちよりもトラブルを起こす確率が非常に高いようです。子役時代は、天使のようだったリンジー・ローハンもゴシップ誌の常連で、ブリトニーの後を追っているのではないかと思えるほどトラブルが耐えません。
映画『E・T』で幼い時にデビューをしたドリュー・バリモアも、今でこそステキな女優に成長してビジネスでも大成功してますが、「12歳のころからドラッグをやっていた」と告白しています。
映画『エクソシスト』で一世を風靡(ふうび)したリンダ・ブレアや、映画『スター・ウォーズ』シリーズのレイア姫で世界中の人気者になったキャリー・フィッシャーも、子どものころからスポットライトを浴びており、思春期から20代前半にかけてとんでもなくメチャクチャな生活を送っていたということです。
ヒット映画やテレビに出演して、分別のつかない幼少時代から大人たちにチヤホヤされ、成長するに従って忘れ去られていく商品のような子役スターたち。嘆かわしいのは、そんな状況から子どもたちを守らなければならない、周囲の大人たちが、実は諸悪の根源だったりするのです。
皆さんは、映画『ホーム・アローン』シリーズの主人公で、メチャクチャかわいいケビン坊やを演じたマコーレー・カルキンを覚えてますか? 彼の子役人生は、華やかな外見とは対照的で、ステージパパだった父親に、どんなに疲れていてもお構いなしに仕事のスケジュールを組まれ、仕事を強要される悲惨な子ども時代だったようです。それがたたってか、『ホーム・アローン』シリーズが終了して、カワイイ少年の面影が失くなりだしたころ、マコーレーはとんでもないトラブルメーカーに成り果て、よくゴシップ誌をにぎわすようになってしまいました。
その後数年して成人した彼は、自分の利益しか考えていない強欲な父親と完全に縁を切り、一時期映画業界を引退していましたが、2003年の映画『パーティ★モンスター』で見事に映画界に復活を果たしました。映画『シックス・センス』で旋風を巻き起こした天才子役ハーレー・ジョエル・オスメントもまったく同じパターンで、現在20代の彼もドラッグや飲酒問題などでトラブルが絶えません。
もっとも悲しいのは、子役スター時代を経て体は成長しても、大人に成り切れぬままこの世を去ってしまうスターたちの寂しい幕切れです。
記憶に新しいところでは、ジョエル・シューマカー監督の『依頼人』で輝かしいデビューを飾ったにも関わらず、去年25歳の若さでこの世を去ってしまったブラッド・レンフローでしょう。10歳のときにテネシー州の田舎でスカウトされ、スーザン・サランドンとトミー・リー・ジョーンズ主演の『依頼人』に出演。ベテランも舌を巻くような演技を披露しました。その後はスティーヴン・キング原作の『ゴールデンボーイ』に主演して絶賛されたものの、ドラッグに飲酒などで良からぬニュースばかりが続き、今年の初め、ついにオーバードーズ(麻薬過剰摂取)により25歳の若さで生涯を閉じてしまいました。この悲劇で思い出される事件は、1993年に起きたリヴァー・フェニックスの麻薬過剰摂取による急死です。映画『スタンド・バイ・ミー』で、一世を風靡した彼も、まだ23歳の若さでこの世を去りました。
さて、一度ならずも二度にわたって警察のお世話になってしまったシャイアですが、彼に限らずエンタテイメント業界には、しっかりとしたマナーや分別を学べないまま外見だけが大人になってしまったオトナ・コドモたちがはんらんしています。かといって、子役がすべて問題児になるわけではありません。子どものころから業界で活躍していても、きちんとした大人に成長して成功している、ジョディー・フォスターや、イライジャ・ウッド、ブルック・シールズのような大スターもいるわけです。
皮肉なことにシャイアが飲酒事故を起こす数日前に行なわれた、「ディテール」誌のインタビューで、「僕は一杯で酒をやめることができなくなっている」と告白していたことがわかっています。シャイアのお父さんは、アルコールとドラッグの両方で問題を抱えていたようで、それを見て育ったシャイアは幼いころから悪影響を受けてしまっているのかもしれません。手遅れになる前にヘルプを得て、今回の事件をきっかけに立ち直ってほしいものです。
取材・文 神津明美 / Addie・Akemi・Kohzu