サードシーズン2009年8月
私的映画宣言
ヒュー・ジャックマンとダニエル・クレイグが共演する舞台を見るため、10月末にニューヨークを目指します。警官で親友同士という設定に早くも萌えちゃう。季節的にもいい感じだし、3年ぶりのブロードウェイも楽しみ。
PCが壊れてしまい、ひどい災難でした。書いた原稿(8ページ分)さらにインタビューのテープ起こし(2人分)、全部パア。『ウォーリー』を観たとき、あんなにバックアップが大切だと思ったのに、生かしてなかった。
アクション&スリラー好きにとって晩夏から秋の新作は、うれしいラインナップ。映画『96時間』『アドレナリン:ハイ・ボルテージ』『ワイルド・スピードMAX』といったエクストリームな作品の登場に狂喜。中でもオススメは映画『マッドマックス』とスピリットあふれる『ドゥームズデイ』だっ!
昨年セット・ビジット取材をした、ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の新作SFホラー映画『Splice』がついに完成! 9月のトロント国際映画祭で、ワールドプレミアされることになりました。何とか応援に駆けつけられるといいのだが……。
とある取材で現地に行ったら1時間30分押し! 5~10分はよくあるけれど、1時間越えで待つ場所もないので、喫茶店に。で、オーダー直後に「始まります!」って……。まぁ、この仕事ではよくある話なんですけどねぇ。
HACHI 約束の犬
1987年に公開され、大ヒットを記録した日本映画『ハチ公物語』をハリウッドでリメイク。物語の舞台を日本からアメリカに移し、一人の大学教授と彼に育てられた飼い犬の心温まる愛ときずなを描く。監督は『サイダーハウス・ルール』のラッセ・ハルストレム。主人公の教授を『最後の初恋』のリチャード・ギア、その妻を『ボーン・アルティメイタム』のジョーン・アレンが演じる。国境を越えて共感を呼ぶ普遍的なテーマと感涙のラストに注目だ。
[出演] リチャード・ギア、ジョーン・アレン
[監督] ラッセ・ハルストレム
犬ラバーなのでハチを演じた秋田犬たちの演技力にコロリとやられてしまった。駅で迷子になった子犬が大学教授をすがるように見るつぶらな瞳、遊びを教えようとはいつくばるご主人様を「何が面白いの?」とキョトンと眺める顔つき、そして帰らぬご主人を辛抱強く待ち続ける切ない表情。あ~、思い出すだけで涙が……。ただし父娘ともにハチをでき愛するのに、ジョーン・アレン演じる妻だけが犬と距離を置こうとするのはリアルさに欠ける。後半の忠犬ぶりと対比させるためだろうが、単なる犬嫌いに見えてしまうのだ。
導入部の妙に日本を意識した映像には不安を覚えたけど、全体的にはオリジナルの世界観を尊重した丁寧な作りで好感度高し。日本人には好みだが、果たしてハリウッドの観客にはどうなのか。せっかくリメイクしたからにはハリウッドに銅像が建つぐらい、ヒットしてほしい。犬の演技が本当にうまく、特に後半のヤサグレ・ハチの目つきが最高だった。ギア様ファン向けなのか、バスルームにキャンドル的なエロチック展開にはちょい失笑。
犬映画というジャンルには確実に需要があるが、そこにあざとさを抑えたまっすぐな視点の本作が投入されるのは歓迎すべきだろう。かわいらしさだけで売るあまたの犬映画に比べて質は高いし、感傷が鼻についたオリジナルを超えていると思う。ただし、個人的には犬は苦手……。リチャード・ギアの首をベロン、ベロンとなめるワンちゃんは、ある意味好演だが、申し訳ないが自分は観ていて鳥肌が立った。犬好きには感動作でも犬嫌いにはホラー映画!?
監督が人間ドラマの職人、ラッセ・ハルストレムなだけに、さすがに手堅い作品を仕上げてくる。リチャード・ギア(アリクイ似)は、あの物語の世界観にマッチしており、舞台をアメリカに移した点もまったく違和感はなかった。が、ハチ公とご主人様のきずなという、肝心要のドラマがイマイチ掘り下げて描かれていないので、ただ犬がお利口でかわいい子ども向けの安易な感動作、という印象を持った。“忠犬”の概念は、アメリカと日本では異なるのだろうか?
扱えば泣く人が後を絶たない“動物モノ”ゆえ、ある程度のカタルシスが保障されている企画だけど、主役をリチャード・ギアではなく、ハチ公に完全に任せている製作の姿勢に高評価。ありそうでなかった“犬目線”の演出もいやらしくなく、今後もギア様には日本の良質なマテリアルをガンガン扱ってほしい。ギア様は、動物、特に犬との相性がよろしいようなので、取り急ぎ次回は『マリリンに逢いたい』をリメイクしてもらいたい。
3時10分、決断のとき
刑務所に連行される強盗団のボスと彼を護送する牧場主との男同士のきずなを描く西部劇。1957年公開の異色西部劇『決断の3時10分』のリメイクで、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』のジェームズ・マンゴールド監督がメガホンを取る。主演は『グラディエーター』のラッセル・クロウと『ダークナイト』のクリスチャン・ベイル。さらに、ピーター・フォンダやベン・フォスターら癖のある俳優が脇を固める。早撃ちなどのアクションはもちろん、男のプライドのぶつかり合いに胸が熱くなる。
[出演] ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベイル、ピーター・フォンダ
[監督] ジェームズ・マンゴールド
ラッセル・クロウvs.クリスチャン・ベイルが話題だが、カリスマ犯罪者ウェイドを演じたラッセルよりもベイルが演じた地道ながらもまっすぐに生きる農夫ダンに惹(ひ)かれてしまった。愛し、大切にするものを知っていて、正義をまっとうし、難局から逃げることはしない。まさに、わが人生にブレなし。そんな彼に影響されウェイドもダンの息子も物語が進むにつれ人間性が変化していくのが物語のミソだ。残虐な悪党や復讐(ふくしゅう)に燃える賞金稼ぎ(ピーター・フォンダ、最高!)、銃撃戦といった西部劇的な要素を盛り込みつつ、深い人間ドラマに仕上げた監督に拍手!
ラッセル・クロウのオレ様演技、さく裂! セリフはいちいちかっこいいし、ポーズは決まっているし。しかも、それをくさいと思わせない、あの色気、すご過ぎ。いい人クリスチャン・ベイルの奥さんですら、くらっとなってしまうほど。そして、相変わらず二番手のサエない人が似合うベイル。すっかり独自のポジションを見つけた感あり。冷静に考えたら、絶対こっちのがイケメンなのに。ラッセルのあの自信はどっからくるんだ。もちろん、ラッセルだけが見どころではなく、父子映画としても感動的。
女性に理解できるかどうかはわからないが、思春期の男子には父親を見下してしまう時期があるものだ。しかし大人になり、少しは世の中が理解できるようになると改めて尊敬の念を抱く。本作の肝は、まさしくそんな物語。クリスチャン・ベイルふんする主人公は一見、主張しないダメ男だが、言葉ではなく行動で示すと同時に、誇りを懸けて危険と対峙(たいじ)する姿にシビレた。父親も息子とともに成長するということを改めて教えてくれる。男性映画の傑作。
男泣きの傑作! クリスチャン・ベイルとラッセル・クロウという、今のハリウッドを代表する実力とカリスマを兼ね備えた名男優が顔をそろえた時点で、本作の成功は約束されたようなものだが、その二人が期待を裏切らないスリリングな演技バトルを披露。銃撃戦も見ものだが、対照的な男二人が静かに心を通わしていくストーリー展開が秀逸で、西部劇映画の古典であるオリジナル版とは異なるラストに、魂を震わされること間違いなし。西部劇アレルギーの人も、これを観たら体質が変わるかも。
安易なリメイクかと思われたが、これは西部劇の秀作! ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベイルの好演とあいまって、男らしく生きるとはどういうことか? がガツン! と描かれ、泣ける、泣ける! このテーマは、西部劇がはやらない現在のアメリカで、どうしても映画化したかったジェームズ・マンゴールド監督が自身のプロダクションで製作した事情と重なり、説得力あるものに。西部劇とかジャンルを意識せず、観てほしい一作。
トランスポーター3 アンリミテッド
リュック・ベッソンがプロデュースするアクション・シリーズ、『トランスポーター』シリーズの第3弾。『バンク・ジョブ』のジェイソン・ステイサムふんするクールな天才運び屋がヨーロッパ中を愛車で駆け巡る中、ウクライナ国家と産業廃棄物業界、そして警察が駆け引きを繰り広げる。テレビドラマ「プリズン・ブレイク」シリーズのロバート・ネッパーやK-1選手のセーム・シュルトなどが、敵役で共演。前2作に代わり『レッド・サイレン』のオリヴィエ・メガトンがメガホンを取り、ストーリー、アクションともにグレードアップした展開に最後まで目が離せない。
[出演] ジェイソン・ステイサム、ロバート・ネッパー、フランソワ・ベルレアン
[監督] オリヴィエ・メガトン
運び屋フランクのキャラが魅力的で、筋が通らない第1弾は彼の紹介だったと好意的に解釈。シリーズ化された第2弾は、フランクの人間的な面が強調されたドラマも加わり「おおおっ」と思わせたのに……。えっと、第3弾は何? リュック・ベッソンが街角でナンパした美容師を出したかっただけ? 主人公の自分を律するストイックさは消え、冒頭から敵のワナにはまるというマヌケさ。こんなのフランクじゃない! 脱いだジャケットを武器にしたりとアクションはそれなりに見せるんだけど、斬新さがないのが残念。
ナタリー・ポートマン、広末涼子、そしてミラ・ジョヴォヴィッチの流れを組む、ベッソン好みのロリコン女がヒロイン。かわいいとは思うが、一般男子が感じるいい女ではないだろう。当然、ジェイソン・ステイサム演じるフランクの好みとも、到底、思えない。彼女の功績といえば、いい体ジェイソンにシャツの着脱を要求したくらいか。この場面、超セクシーで必見(この場面だけで2点追加)。どうもありがとう。さらにいえば、彼女と恋愛に発展なんかせず、ジェイソンが悶々(もんもん)とする展開だったら、点数は高かったのだが。
無手勝流のカーアクションと肉弾戦が本シリーズの魅力であることを踏まえると、期待を裏切らない。車から20メートル離れると爆発する腕輪爆弾の設定を生かし、車から置き去られ、必死に自転車で後を追う主人公の必死ぶりは妙味。着ているものを脱いで武器にし、同時に肉体美を披露する合理的ストリップ・アクションも面白い。ただ、これまで厳格にルールを守ってきたストイックな主人公が、あんなビッチにほれてしまうのはどうよ!? シリーズのファンとしては、その点が不満。
トゥーマッチな痛快爆裂アクションが圧巻だった前作には、そりゃエキサイトさせられましたが、今作は残念ながら全体的にトーンダウン。肝のアクションは、果敢なチャレンジはしているのだがスケール感にとぼしく、もはやネタ切れでは……。プロデューサーのリュック・ベッソンに見初められ抜てきされたヒロインは、魅力にとぼしく実力不足で、明らかに映画の足を引っ張っていた。でも、ジェイソン・ステイサムの肉体美を堪能したい人には必見かと。
キチンと洋服をたたんでからバトルに臨む、几帳面でストイックな運び屋フランクがスクリーンに三度目の登場。この夏は超バカ映画仕様の『アドレナリン:ハイ・ボルテージ』とともに2か月連続で、ステイサム映画が楽しめるステキなシーズンとなったが、本作はこのシリーズを面白くさせていた大事な要素をブチ壊すという暴挙に! が、ステイサムのファンが楽しめない作りになったとは言い難く、豪快なカーアクションだけでも十分満足だ。