第82回アカデミー賞予想!
私的映画宣言
今年のアカデミー賞の注目は、興行収入世界一となった『アバター』(ジェームズ・キャメロン監督)と元妻キャスリン・ビグロー監督が手掛けた『ハート・ロッカー』が最多ノミネートでガチンコ対決! というわけで、今年も私的ライターの皆さまに、アカデミー賞の行方を予想してもらいました!
いきなり作品賞のノミネートが5本から10本に。それだけ特出した作品のない、佳作ぞろいってことやね。何せ一番の話題作が『アバター』だもん。アホな現代人が異文化を無遠慮に侵害したり、私欲のために戦争しかける愚かさなんて、宮崎駿監督は昔から訴えているし、アメリカ映画だって何回も描いているやん。お前ら、学習能力ないんか! と言いたい。だったらよほどジェームズ・キャメロン監督の元妻キャスリン・ビグロー監督の方が「今」をとらえた男前な映画を作ってるで。というわけで、注目の元夫婦対決はキャスリンに一票! ほか、伏兵といえば『プレシャス』だけど、お堅いアカデミー会員は功労賞的な意味合いも兼ねてベテランにあげがち。サンドラ・ブロックの復活劇が今年の見せ場かな。でも、地味だね。
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まずは作品賞、個人的には傑作SF『第9地区』の受賞を熱望するが、『アバター』と『ハート・ロッカー』の一騎打ちになるだろう。『ハート・ロッカー』と言いたいところだが、ハリウッドのクリエイターたちも批評家も大絶賛する(なぜだ!?)、世界興収記録を塗り替えたモンスター・ヒット作『アバター』が3D時代幕開けの象徴として受賞するのでは? 監督賞はジェームズ・キャメロンではなく、そろそろ女性監督にあげようよ、ということで男気満載キャスリン・ビグローで。助演は男女とも鉄板で付け入るすきなし。主演は、『クレイジー・ハート』(原題)で崖っぷち人生を歩むアル中シンガーに魂を吹き込んだジェフ・ブリッジスと、昨年一年を通じて大活躍したサンドラ・ブロックが受賞するだろう。
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作品賞の候補作が増え、冷遇されていたSFやインディーズ作品が日の目を見るのはいいけど、『(500)日のサマー』や『かいじゅうたちのいるところ』が完全無視されたのは納得いかないなぁ。作品の質と出来でいうなら、『第9地区』より『スター・トレック』の方が上じゃね? 作品賞は『アバター』と『ハート・ロッカー』の対決で、監督賞と分け合う可能性大。ジェームズ・キャメロン監督はすでに監督賞を受賞したことがあるし、男前で役者の信頼も厚いキャスリン・ビグロー監督で「女性監督初」と盛り上げたい。作品は観ていないけど、主演男優賞はジェフ・ブリッジスで決まり。これまでの功績と「We Are The World」のリメークアルバムにも参加した美声もプラス要素。主演女優賞では、演じたキャラが良かったサンドラ・ブロックが業界内で愛されているのも強み。ジェレミー・レナーとガボレイ・シディベは候補となっただけでも満足でしょうし、マギー・ギレンホールやマット・デイモンは今後も受賞の可能性があるので、今回は見送りでしょう。
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10本になった作品賞候補は、公開が秋以降だったら『ハングオーヴァー』(原題)や『スター・トレック』も可能性があったはず。滑り込みセーフの『しあわせの隠れ場所』は作品賞ノミネートの発表時に歓声が上がり、サンドラ・ブロックの主演女優賞はカタそうだ。主演男優賞候補はジョージ・クルーニーあたりよりロバート・ダウニー・Jrの方が「演技してた」よなぁと感じつつ、『クレイジー・ハート』(原題)を観たら、ジェフ・ブリッジスの(たぶん本人の)人柄がにじみ出た哀愁演技に勝る相手ナシと実感した。今年は演技部門の予想は楽勝……では嫌なので、助演男優を功労賞とみなし、懲りずにサプライズを希望。3D映画ブームを定着させたい業界の意向で作品賞は『アバター』に。見返りで監督賞では元妻が栄冠を勝ち取ってニュース的に盛り上がる、というのはどうでしょう。
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マット・デイモンには『インフォーマント!』と『インビクタス/負けざる者たち』で主演助演のダブルノミネートを期待したのに! どちらも実在の人物に肉体改造で挑んだ作品。まあヒーロー役の本命が残ったから良しとしよう。『NINE』のペネロペ・クルスは素晴らしい。でも、似たような魔性の女で二度受賞はないか。『プレシャス』で鬼母を熱演したモニークの気迫に一票。ジェレミー・レナーの迫力も秀逸だ。サンドラ・ブロックは消去法で。でも賞を取りやすい実話ものとはいえ、このキャラはちょっと弱い気がする。作品賞と監督賞はやっぱり『ハート・ロッカー』か『アバター』で割れる展開を予想。キャスリン・ビグローに女性初の監督賞受賞の期待を込めて。
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今年の予想ポイントは『アバター』の取捨。史上最大ヒットの勢いで受賞する可能性もあるが、世間にヒヨったという声も聞かれるゴールデン・グローブ賞の結果にアカデミーが追随するだろうか。ゴールデン・グローブの授賞式でジェームズ・キャメロン監督は「キャスリン・ビグローが受賞すると思っていた」と述べたが、これが業界人=アカデミー会員の一般的な認識と受け止めて『ハート・ロッカー』を上位に予想。助演はいずれも鉄板。主演は悩ましいところだが、男優は過去4度受賞を逃しているジェフ・ブリッジスがそろそろ受賞どきか。メリル・ストリープはキャリアの初期に受賞して以来11度もノミネートだけに終わっているのが、いかにも不自然。『恋するベーカリー』効果もあって、この大女優に風が吹いていると見た。
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作品賞はパワフルにして驚きに満ち、感動もあった『第9地区』にあげたい! だが、前半のグロさにオスカーのお歴々は引くだろうと踏んで、『ハート・ロッカー』。『アバター』の貢献度はメチャ高としても、ジェームズ・キャメロン監督がまた王様ヅラするのかと思うとイヤーだー!(ゴールデン・グローブ賞授賞式の妙な気配り発言もいやらしかったんで)。なので、監督賞は元妻のキャスリン・ビグロー! 主演男優のジョージ・クルーニーは、ハリウッドの当代随一の兄貴分としての貢献度で。メリル・ストリープはもういいだろと思うが、今年のオスカー司会二人は『恋するベーカリー』で共演のオッサンたち。受賞したらショーが盛り上がるぅ~。助演二人は完全主役食いまくったで賞、ってことでいかが。
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個人的に関心は薄かったが、世界規模でメガヒットしている事実と、去年が小作品だったので作品賞は『アバター』でキマリ! 監督賞はクエンティン・タランティーノにぜひあげてほしいのと、怪演が大好きなアカデミー会員は『イングロリアス・バスターズ』のクリストフ・ヴァルツを助演男優賞に選ぶはず。奇人変人キャラに比べれば、パンチ力は弱いものの、『インビクタス/負けざる者たち』のモーガン・フリーマンは誰が観ても素晴らしい演技だったので、個人的な願望によって主演男優賞。『プレシャス』のガボレイ・シディべの主演女優賞受賞は本命!? 助演女優賞候補はよくわからなかったので、『NINE』のペネロペ・クルスが連続受賞という事件(!?)を期待します。
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作品賞を10本にするという視聴率改善対策の結果、一般受けする作品も入ってよかったと思う(『カールじいさんの空飛ぶ家』の扱いには疑問)。しょせん、年に一度のお祭りなんだから、今後はもっとコメディーやアクションなどにも門戸を広げてほしいものだ。そんな世間一般にひよった姿勢からすると『アバター』が作品賞という可能性は高いのかなあと思いつつ、脚本も俳優もエントリーしていないことだし、ここは『ハート・ロッカー』で。監督賞はぜひともキャスリン・ビグローに取ってほしい。助演部門は功労賞的な意味も込めて。一方で個人的に最も心を動かされたのは『プレシャス』。原作より口当たりがよくなっていたとはいえ、そのメッセージは未熟な映画ながらも強烈だった。
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