サードシーズン2010年5月
私的映画宣言
ジャスティン・ビーバーの人気に「アメリカもジャニ系がいいのか?」と暗たんたる気持ちになっています。生田斗真のヌード、女子は本当に見たいの? 『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』のジェイク・ギレンホールみたいな肉体にうっとりしようよ~。『川の底からこんにちは』の満島ひかりもよかったけど、5月オススメの『処刑人II』(5月22日公開)を観てくれ!
5月12日からカンヌ国際映画祭。今年はその前にパリに寄り、北野武監督がカルティエ現代美術財団で行っている展覧会と、ポンピドゥー芸術文化センターでの特集上映に足を運ぶ予定。北野ざんまいの日々。
・5月の私的オススメ映画は『ビルマVJ 消された革命』(5月15日公開)。大泣き。
ちょっと早いが、夏休み映画『ようこそゾンビランドへ』と『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』が面白過ぎる! どちらも笑えて、痛快で、前向きな気持ちになれる快作。公開規模は小さくなりそうだが、応援したい。
・5月の私的オススメ映画は『ヒーローショー』(5月29日公開)。
G.W.進行真っ最中のわたしの心の癒しが韓流ドラマ「IRIS -アイリス-」。第1話で大学院生のイ・ビョンホンを見たので、今後は何が起きても驚かない予定(笑)。ついでに再放送の「オールイン 運命の愛」も見たのにまた見て、仕事にならず。
・5月の私的オススメ映画は『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』(5月15日公開)。
昔から世話になっている先輩みたいな人がシンガポールへ行くことに。長期滞在でしばらく帰れないそうだが、現地でDJの仕事をするとか。子どものころからの夢の実現。40歳オーバーが夢見ても、いいんですね。ええ話。
・5月の私的オススメ映画は『パリより愛をこめて』(5月15日公開)。
グリーン・ゾーン
『ボーン・スプレマシー』『ボーン・アルティメイタム』のマット・デイモンとポール・グリーングラス監督が、3度目のタッグを組んだサスペンス・アクション。イラク中心部のアメリカ軍駐留地域“グリーン・ゾーン”を舞台に、大量破壊兵器の所在を探る極秘任務に就いた男の決死の捜査を描く。共演には『リトル・ミス・サンシャイン』のグレッグ・キニア、『ハリー・ポッター』シリーズのブレンダン・グリーソンらが顔をそろえる。銃撃戦などのアクション・シークエンスを手持ちカメラで活写した臨場感あふれる映像は圧巻。
[出演] マット・デイモン、グレッグ・キニア
[監督・製作] ポール・グリーングラス
世界をだましたイラクの大量破壊兵器隠匿にまつわるアメリカ政府のウソにぐいぐい迫る筋書きが今っぽい。アメリカ国民が同時多発テロの復讐(ふくしゅう)に燃えていた数年前までは作れなかった映画で、人々の戦争疲れが切実に伝わってきた。ポール・グリーングラス監督お得意のハンディカメラ多用のアクションには相変わらずワクワクするが、スリラーを実話に限りなく近づけたブライアン・ヘルゲランドの脚色があってこそだ。国防省役人役のグレッグ・キニアが漂わせる邪悪さが素晴らしく、脇の配役もいいが、主人公マット・デイモンのヒーローぶりがやや鼻についた。腕は立つし、マスコミに流す文章は知的だし……出来過ぎでしょ。
あ~残念! アメリカのイラク侵攻の大義名分・大量破壊兵器問題の真実を暴く骨ある映画になるはずだったんだけど。激しいアクションと、アメリカ軍の規律に反発した男のヒーローもので終わっちゃった。ブッシュ政権を批判するのならもっと堂々と、腹を据えて描いてくれないと。「イラクを舞台にしたサスペンス映画」なんて言って、逃げるんじゃない! 監督さんよ。『ブラディ・サンデー』と『ユナイテッド93』で買っていたのに。ガッカリ。
『ユナイテッド93』の社会性と、『ボーン・アルティメイタム』の娯楽性の融合というべきか。とにかく、グリーングラス監督の持ち味が存分に発揮された作品であることに疑問の余地はない。イラク戦争のペテンを告発する姿勢も、どこで何が起きているのかを無駄なく的確に伝えるソリッドなアクション演出にもシビレる。『ハート・ロッカー』の撮影監督を迎えた効果か、リアルな迫力もひとしお。ヌルい3D映画より、はるかに臨場感を抱かせる力作!
イラクを舞台にした映画だからといって、一くくりにするのはどうかとは思うけれど、『ハート・ロッカー』の衝撃後では本作はエンターテインメント性が高過ぎる。かといって娯楽で観るには社会性が強過ぎる。大事なことを描いているのはわかるのだけど、中途半端な印象を受けた。監督とマットのコンビだとつい『ボーン』シリーズを期待してしまう観客へのサービスが仇(あだ)となった感じ。リアルかエンターテインメントか。もっと覚悟を決めたら良かった。
マット・デイモン&ポール・グリーングラス監督と聞いて、まず思い浮かべるのが「ジェイソン・ボーン」シリーズだが、今度の主人公は普通の人間。とはいえ、軍人ゆえに常人よりはタフ、手持ちカメラによる臨場感も健在で、名コンビによるアクション映画としての期待に応えつつ、自国の恥部をストレートに描いていていく、あっぱれな1作。ボーンの成功で、スタンドプレーに不安感を抱かせないマットの奮闘は、説得力があってイイ!
パリより愛をこめて
ジョン・トラヴォルタとジョナサン・リス・マイヤーズ演じる諜報(ちょうほう)員が、爆弾テロリストと戦うスタイリッシュなアクションムービー。アメリカ政府の要人を狙う暗殺計画を知った二人が、フランス・パリを舞台に激しい銃撃戦やカー・アクションを繰り広げる。監督は、『96時間』がスマッシュ・ヒットを飛ばしたピエール・モレル。すべてのスタントをこなしたジョンの、50代とは思えないキレのあるアクションに注目。
[出演] ジョン・トラヴォルタ、ジョナサン・リス・マイヤーズ
[監督] ピエール・モレル
久々に萌えた『96時間』のピエール・モレル監督の新作だが、ストーリーの緩さよりも許せないのがデブのアクション演技。諸悪の根源はジョン・トラヴォルタね。CIAの鉄砲玉チャーリーは税関でフランス人蔑視(べっし)コメントを連発し、中国人ギャングやアラブ系テロリストを虫けらのごとく射殺するバッドアスなんだけど、肥満体のトラヴォルタの動きが鈍い。あんたが殺されてるっつーの! スパイ志願の外交アタッシェがそんな彼に振り回される展開はいいが、鉄砲玉が狂気不足なのがすごく残念。エッフェル塔ロケは意味不明だし、オマージュをささげられた007も困るかも。
リュック・ベッソン率いるヨーロッパ・コープ製作。この会社って二匹目のドジョウで金稼ぎするのがお好き。本作の場合、同じパリを舞台にした暴走親父映画『96時間』の線を狙ったんでしょう。でもトラヴォルタがやり過ぎで、かなり引く。トラヴォルタも『フェイス/オフ』と同じ芝居をしてちゃダメでしょ。唯一見どころはジョナサン・リス・マイヤーズの中国語。南京大虐殺を描いた『チルドレン・オブ・ホァンシー 遥かなる希望の道』に出たのが役立ったね。
始まりから終わりまで迷いなく突き進んだ『96時間』の監督ゆえ期待していたが、物語がどこに向かっているかわからない、軸の定まらない展開は不満。しかしヨーロッパ・コープらしい漫画チックなアクションとして観れば、それなりに楽しめる。カーチェイスを繰り広げつつトラヴォルタがロケット砲をぶっ放すシーンをはじめ、随所にさく裂する破天荒な見せ場に味がある。「カジノ・ロワイヤル」を連想させる一抹の哀愁が新味といえば新味か。
近ごろのリュック・ベッソン印である「大味だけどたいていの人が喜べる」という意味では予想通りの展開。そして、銃撃の容赦なさ度はといえば想定外だった。ここまでやるかとちょっと衝撃。ストーリーは予想通りにどうでもよかったけれど、フランス人のアメリカ人嫌いを逆手に取ったドぎついジョーク等は適当に楽しかった。それにしても、どんどん箍(たが)が外れていくジョン・トラヴォルタ。彼がどこに向かっているのか、もはや楽しみの一つだ。
映画のようなスパイにあこがれる見習い諜報(ちょうほう)員が、完全現場主義のたたき上げ、怪物のようなベテラン諜報(ちょうほう)員の登場によって、ファンタジックな幻想をバリバリはがされていく過程が痛快! 並みの映画なら、中盤で衝突してラストで理解し合うという展開に落ちるだろうが、この映画はお互いにバランスのいい距離を保ちながら、任務を軸にコトが進むので、友情だのといった感情的な中だるみがない。今後のピエール・モレル監督の活躍が楽しみ。
ローラーガールズ・ダイアリー
テキサスの田舎町で退屈な日々を送る女子高生が、ワイルドなスポーツのローラーゲームに魅了され、猛練習をこなしながら成長していく姿を描くガールズ・ムービー。人気女優のドリュー・バリモアが念願の初監督を務め、『JUNO/ジュノ』の演技派若手女優エレン・ペイジが自分の居場所を探して奮闘する主人公の少女を好演する。共演のジュリエット・ルイスを含め、豪華キャストの体当たりゲームシーンが圧巻の爽快(そうかい)青春グラフィティー。
[出演] エレン・ペイジ、マーシャ・ゲイ・ハーデン
[監督・製作] ドリュー・バリモア
ドリュー・バリモア監督作と斜めに見たら、意外にも実直な作りでうれしい驚き。中休みはあったけど、だてに4歳から業界で活躍してないわ。17歳の少女ブリスの自分探しや母親との確執&和解、ガールパワーは彼女が思い入れるテーマなのでそしゃくも上手にできるはずだが、定石通りに作った手腕を買いたい。物語も映像もセリフも予定調和が過ぎるという意見もあるだろうが、奇をてらい過ぎて観客を置いてきぼりにするよりは100倍いい。ジミー・ファロンら映画人生で培った人脈やミュージシャンとの交際で体得した音楽センスも生きているし、ドリュー監督ならではのチャーミングな仕上がりだ。
ビッチなバリモアちゃんらしい、アメリカのはすっぱ姉ちゃんたちが大暴れするわかりやすいアメリカンな映画。バリモアの監督としての才能はイマイチわからなかったけど、ジュリエット・ルイスにゾーイ・ベルなど個性派女優を集めたこと。そして彼女たちにきちんと、スタントなしでローラーゲームをやらせたのは女優出身の監督らしいところかも。何てったって、ローラーゲームを生で見たくなったもの。初監督作としては及第点ということで。
フツーの女の子が未知の世界に飛び込んで自己を発見する青春映画なんて目新しくはないが、それでもコレは十分にフレッシュ。勝因は、現実的な生活感を踏まえた点にある。家庭でも学校でもバイト先でも、日常には倦怠(けんたい)が転がっているが、それをリアルに伝えるからこそ、ローラーゲームという特別な場が輝きを増す。ヒロイン、エレン・ペイジの素朴なキャラも良いが、武闘派女子ジュリエット・ルイスのキャラも味。女子映画でもアツいぞ!
映画からの愛、映画への愛がいっぱい詰まった作品。ドリューの才能豊かなのはもちろん、周囲の人たちからものすごく愛されているんだろうなと彼女のパーソナリティーがうかがえるようなステキな仕上がりになっている。ストーリーはひねりが利いたスポ根ものでわかりやすいけれど面白い。衣装や音楽だってポップなんだけど、確実に通をもうならせるテイストで彼女らしい。個人的にはドリューとジミー・ファロンの愉快な2ショットに、何だか得した気分。
美人コンテストで優勝すると、どんだけ幸せな将来が待っているのか、アメリカの社会事情はよく知らないが、夢破れた親が子どもに自分の夢を託す負の連鎖は、どこの国も同じだなと。おかげで主人公は反動で自分が夢中になれるものに出会うわけだが、誰もがそうなら幸せだよね~って話。監督はドリュー・バリモアで、女子目線で男を観察。たまーにチクチクする瞬間とともに男が女子にどう見られているのかがわかり、それもまた収穫。