叶わない恋に思いを馳せる天才バイオリニストに見る<忘れられない恋>の対処法は? 志茂田景樹がカゲキにアドバイス!
死を決意した天才バイオリニスト、ナセル・アリ(マチュー・アマルリック)の生涯一度の恋の思い出を、漫画家マルジャン・サトラピがファンタジックにつづったラブストーリー『チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~』。今、ツイッターの人生相談や名言で人気沸騰の直木賞作家、志茂田景樹先生が、本作の主人公ナセルの切ないエピソードをサンプルに、現代人の恋のお悩みをズバっと解決します!
取材・文:壬生智裕 撮影:金井堯子
大切なバイオリンを壊されたバイオリニストのナセルは絶望のあまり、死を決意。食事も拒否し、ベッドに横たわり衰弱していく彼は、「生涯に一度の記憶」を回想するのでした。
別れた恋人のことが忘れられません。どうしたらこの苦しみから解放されますか?
なくした恋を美化してもいいと思うんです。その時期、あなたは確かに幸せだったのですから。ただし、それだけで満足しなければいけません。「失恋した相手への未練はしっかり断ち切らないと、素晴らしかった恋の思い出までも色あせてしまう」、無理やりにでもそう自分に言い聞かせた方がいいですよ。そうしないと、ナセルのようにいつまでも引きずってしまいますから。
ナセルはバイオリニストとしては一流でも、夫、父親としては最悪。もちろん、ファランギースも彼の才能に恋して結婚したわけだけど、バイオリンを弾いているだけでは生活は成り立たないわけで……。
いつもダメ男ばかり好きになってしまいます。こんなわたしは幸せになれないのでしょうか?
ダメ男を好きになることが一概に不幸だとはいえないと思うんですよ。昔からダメな男を支えるタイプの女性って、いますからね。結婚したら、違う種類の「育児」が始まると考えればいいんですよ。きっとそういうタイプの女性は、ダメ男の育児は嫌いじゃないと思いますしね。そうやって手塩にかけて育てたダメ男が、いつか大化けして、すごい人間になるかもしれませんよ。
ひと目ぼれした美女との燃えるような恋に破れたナセルは、「愛は後から芽生えるわ」という母の助言に従い、母の薦める女性と結婚。二人の子どもにも恵まれますが、家族に心を開かず、いつも悲しげです。
正直、結婚相手を本当に愛しているのかわかりません。結婚と恋愛って別物なんですか?
恋愛結婚、お見合い結婚とかたちに関係なく、相手に100パーセントを求めない方がいいんですよ。この映画のお母さんのセリフのように「後から芽生える愛情」というものも確かにありますから。一緒に生活をしていくうちに情が涌いてきて、そこから愛が生まれるということがね。そういう相手が後々、大化けすることもあるんです。だから無理に自分で枠を作らなくていいんじゃないですかね。
壊されたバイオリンには、どうやら妻ファランギースが関係しているもよう。ファランギースは心ここにあらずで自分を無視し続けるナセルに失望し、日々ケンカが絶えません。二人の心が通じ合う日は来るのでしょうか……。
何をするにも母親のことを1番に考える夫。わたしのことはいつも後回しで、不満でいっぱいです。
これはいわゆるマザコンというたぐいの問題ですが、男は妊娠や出産ができないので、ついつい母親を偉大な存在と思いがちなんです。そんな母親と無理して張り合うくらいなら、むしろ仲良くした方がいいですよ。「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」ということわざもありますしね。そうすれば旦那さんも安心して、次第に心の中のナンバー1、ナンバー2といった序列があやふやになってきます。
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