第46回 『007』新作に待望の『ホビット』! 絶対見逃せない超大作とその周囲
LA発! ハリウッド・コンフィデンシャル
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『007』新作に待望の『ホビット』!絶対見逃せない超大作とその周囲
映画ファンの皆さんお元気ですか?まだ10月で暑さも残っているというのにハリウッドはすでに年末モード! 11月末の感謝祭~12月のクリスマス・シーズンに公開される大作の話題で大にぎわいです。その中でもひときわ目を引いているのが007シリーズ新作『007 スカイフォール』、そして世界中で大ヒットを記録した『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの前編ともいえる映画『ホビット 思いがけない冒険』です。今回はこの話題作2本の映画完成までのウラ話や作品にまつわるこぼれ話をお伝えしまーす!
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原作になっているのはJ・R・R・トールキンの「ホビットの冒険」という小説です。映画『ロード・オブ・ザ・リング』で主人公フロドに 「一つの指輪」を預けたビルボがそもそもなぜ「一つの指輪」を持っていたのかという時点にさかのぼり、ビルボが若かりし頃に体験した大冒険、そしてゴラムなどの重要キャラクターたちとの出会いなどを描いたのが『ホビット 思いがけない冒険』です。メガホンを取ったのは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズと同様、ピーター・ジャクソン監督。しかしジャクソン監督就任までにはさまざまなドラマがあったのです!
ハリウッドの映画業界、外見は華やかですてきですが、フタを開ければエゴと見栄が横行していて醜いバトルもしばしば。新作『ホビット』シリーズの周囲も製作前からし烈なドラマがあったのです。
『ロード・オブ・ザ・リング』の製作・配給を手掛けたニュー・ライン・シネマは、その前編ともいえる『ホビット』シリーズも手掛けるだろうといわれていました。そんなときジャクソン監督が、映画から派生したキャラグッズなどの利益をスタジオ側がきちんと配当していないため、会計監査を入れてほしいという訴訟を起こしたのです。監督はハリウッドの訴訟騒ぎなどよくある話で大したことではないとタカをくくっていたようです。
ところが訴訟の話を聞いてブチ切れたのがニュー・ライン・シネマ創設者の一人であるロバート・シェイ氏でした。「ピーターは強欲で失礼なヤツだ」とカンカン! 監督との絶交を言い渡します。しかしその後ニュー・ラインは、裁判所からの会計監査要請を無視したことから高額の罰金を支払う羽目に。おまけに『ホビット』に共同出資する予定だった映画スタジオMGMの責任者が「ジャクソン監督なしなら協力できない」と製作に待ったをかけます。この後、失敗作を連発し経済的に追い込まれたニュー・ラインは、ジャクソン監督に再度アプローチを掛け、関係を修復。しかし結局、監督はメガホンは取らずに製作総指揮の座に就くことを発表します。
いったんは落ち着いたかに見えた新作『ホビット』の製作ですが、この後も製作スタジオであるニュー・ラインをめぐる騒動はとどまるところを知りません。今度は何と『ロード・オブ・ザ・リング』原作者であるJ・R・R・トールキンの遺産相続者たちから契約通りの配当をもらっていないと訴訟されたのです。さらにニュー・ラインの資金面でのパートナーだったMGMは、長年の経営不振が高じて破産申請。法律上のすったもんだを繰り返しているうちに、肝心の『ホビット』は製作ストップの憂き目に遭ってしまいます。
新監督として雇われていたギレルモ・デル・トロ(代表作『パンズ・ラビリンス』『永遠のこどもたち』)は終わりが見えない製作停止命令に業を煮やし、ついに降板してしまいました。結局はジャクソン監督が再びディレクターの座に収まるわけですが、この後もロケ地に予定されていたニュージーランドで俳優を含む映画関係者たちのストライキにぶち当たったりと、とにかく苦労の連続。しかし最終的にはその苦労は報われて素晴らしい作品に仕上がったようで、一見の価値あり。日本でも大ヒットすること請け合いですよ!
さて年末の公開が心待ちにされているもう一つの大作が『007 スカイフォール』です。本作でシリーズ23作目、監督には映画『アメリカン・ビューティー』(1999)でアカデミー監督賞を受賞したサム・メンデスを迎えています。悪役には金髪と化したハビエル・バルデム。彼のブロンド髪は不気味なオーラが出ていて悪キャラにうってつけ。新作ではジュディ・デンチ演ずるMが大きな役割を占めていて、彼女に絶大な信頼を置いているボンドが、その忠誠心ゆえにピンチに立たされ、諜報(ちょうほう)部MI6の存在が危機にさらされるというあらすじです。悪役ハビエル・バルデムに加えてレイフ・ファインズも共演していて、監督のサム・メンデスも含めると主要メンバーだけでアカデミー受賞&候補経験者は5人という豪華な作品です。
今回の映画では日本の長崎沖にある通称・軍艦島こと端島が使用されていて、この日本の小さい島が映画内でどのように使われているのか見るのも一つの楽しみです。端島にはかつて炭鉱があったのですが、そこが閉鎖されてからは島民も島を離れ、今では廃虚となっています。当時のまま、団地などのビル棟が放置されており、その荒廃した風景が映画やドキュメンタリーなどのロケ地として重宝がられているそうです。外国の撮影チームだけでなく、日本のアーティストB’zなども「MY LONELY TOWN」のPVでロケ地として使用したそうですよ。
そして今年は映画『007/ドクター・ノオ』(1962)のリリースから50周年というボンドにとってはおめでたい年。先日「ジェームズ・ボンド:50周年記念オークション」と題して007映画で実際に使用されたグッズが競売に掛けられ、収益金をチャリティーに寄付するというイベントが行われました。その中で注目されたのはダニエル・クレイグが『007/カジノ・ロワイヤル』(2006)で着用したブルーの海パン。イギリスの放送局BBCによると、10月5日に行われたオークションにはジュディ・デンチが壇上に登場して、競売品の海パン紹介のMCをしたそうで開口一番、「実はこの海パン洗っていないの」と話して会場を爆笑の渦に。結局、ダニエル着用済み海パン落札値は何と4万4,000ポンド(日本円で約559万円/1ポンド127円換算)でした。
さて、そのダニエルですが、一時はこの作品の後007役を降りるといううわさが広まっていたものの最近になって気を変えたらしく、あと2本は007シリーズに出演するという契約を交わしたそうです。ダニエルがショーン・コネリー以降、一番カッコいいボンドだと思っているのはわたしだけではないはず! あ~、よかった!
というわけで、今日はこの辺で。皆さん秋バテに気を付けてまた次回お会いしましょうね!
(取材・文 明美・トスト / Addie・Akemi・Tosto)
高校留学以来ロサンゼルスに在住し、CMやハリウッド映画の製作助手を経て現在に至る。アカデミー賞のレポートや全米ボックスオフィス考など、Yahoo! Japan、シネマトゥデイなどの媒体で執筆中。全米映画協会(MPAA)公認のフォト・ジャーナリスト。
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朝夕は涼しくなったものの日中はまだまだ暑いロス。こんなときに日本の紅葉が懐かしくなり温泉につかりたくなります。