第4回 『42(原題) / 42』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』
最新!全米HOTムービー
世界の映画産業の中心、アメリカの最新映画情報を現地在住ライターが紹介する「最新! 全米HOTムービー」。今回は、『42(原題) / 42』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』を紹介します!(取材・文:吉川優子、細谷佳史)
■『42(原題) / 42』
今から66年前にブルックリン・ドジャースに入団し、黒人として初めてメジャーリーグ選手になったジャッキー・ロビンソンの伝記映画『42(原題) / 42』が、予想以上の大ヒットとなっている。無名の新人が主演の低予算映画ながら、作品の評判に後押しされ、全米の公開週の週末だけで興収約2,750万ドル(日本円で約24億7,500万円 / 1ドル90円換算)を記録、ナンバーワンヒットに輝いた。
ハリソン・フォードがメイクで作り込んで演じるブルックリン・ドジャース社長兼GMのブランチ・リッキーは、周囲の猛反対を押し切ってロビンソンを契約すると発表。ロビンソンはあちこちで激しい人種差別に遭うが、リッキーに約束した通り、一切抵抗せずにプレーだけでファンを魅了、少しずつ人種差別の壁を乗り越えていく。ロビンソン役に大抜てきされたのは、無名のチャドウィック・ボーズマン。今後の活躍が楽しみな大型新人の登場だ。
監督は、『ボーン・スプレマシー』などの脚本を担当し、『ROCK YOU! [ロック・ユー!]』を監督したブライアン・ヘルゲランド。ロビンソンの頑張りに、声援を送らずにはいられなくなる感動作に仕上げていて見事。ロビンソンの背番号「42」は、今もドジャースだけでなく、全てのメジャーチームで永久欠番となっており、野球人がいかに彼の功績を高く評価しているかを物語っている。
■『スター・トレック イントゥ・ダークネス』
ハリウッドを代表するヒットメーカー、J・J・エイブラムスの手で2009年にリブートされ、新たなスタートを切った『スター・トレック』シリーズ。待望の続編『スター・トレック イントゥ・ダークネス』が5月中旬、全米で公開される。今回も監督はエイブラムスが担当。カーク役のクリス・パイン、スポック役のザカリー・クイントなど、主要キャストのほか、イギリスのテレビドラマ「SHERLOCK(シャーロック)」で人気のベネディクト・カンバーバッチが、悪役ハリソンを演じて注目されている。
先日、ラスベガスで世界中の劇場主向けに行われた「シネマコン」のイベントでは、仕上げに忙しいエイブラムスに代わって脚本家兼プロデューサーのデイモン・リンデロフがパインやクイントらと登場。迫力満点のオープニングシーンや、宇宙服を着たカークとハリソンが、宇宙空間を飛ぶという、手に汗握るシーンを披露し会場を沸かせた。大画面で見る3Dの映像は圧倒的な臨場感で、出だしでカークとマッコイが崖から飛び降りるカットでは観客から悲鳴が上がったほど。
未熟だったカークが本物のキャプテンに成長していくストーリーだけではなく、アクション、VFX、スケール感など全てにおいて前作をはるかに上回っている印象だ。全世界で約3億8,600万ドル(日本円で約347億円 / 1ドル90円換算)を稼いだ前作を上回るヒットになるのは間違いなさそうだ。
■『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』
ライアン・ゴズリングとブラッドリー・クーパーという、今最も旬な若手二人が共演するインディーズ映画『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』。監督は、ゴズリングと『ブルーバレンタイン』でも組んだデレク・シアンフランス。社会の底辺で生きる者たちへの温かい視線が感じられ、どこか1970年代の映画をほうふつさせる。
ストーリーは三つのパートに分かれており、第1部の主人公は、ゴズリング演じるバイクのスタントマン、ルーク。短い関係を持ったロミーナ(エヴァ・メンデス)が、自分との子どもを生んでいたことを知り、息子のために銀行強盗を働くことになる。
1部の最後に、クーパー演じる警官エイヴリーが登場、第2部の主人公はエイヴリーに。負傷しながらも犯人を捕まえ、ヒーローになったエイヴリーが、警察内部の腐敗を告発して地方検事補になる様子を描く。第3部は、15年後。ルークの息子ジェイソンとエイヴリーの息子AJが偶然友達になったことで、二人と周囲の人々の運命が大きく変わることになる。
暴力を振るうゴズリングは『ドライヴ』を思い出させるが、ちょっとした表情の変化で多くを語る演技がすごい。また、クーパーは、いつものイメージとはかなり違う役どころを好演し、改めて確かな演技力を印象付けた。さらにメンデスも素晴らしい。お見逃しなく!
【今月のHOTライター】
■吉川優子
俳優や監督の取材、ドキュメンタリー番組や長編映画の製作など、幅広く映画に関する仕事を手掛ける。
■細谷佳史(フィルムメーカー)
プロデュース作にジョー・ダンテらと組んだ『デス・ルーム』など。『悪の教典 -序章-』『宇宙兄弟』ではUS(アメリカ側)プロデューサーを務める。