『ペタル ダンス』ブルーレイ&DVD特集:宮崎あおいら人気女優がアドリブ演技を披露!女優たちを夢中にさせる匠の技
6月5日 ブルーレイ&DVD ON SALE
宮﨑あおい、忽那汐里、安藤サクラ、吹石一恵の豪華共演で繊細な女の友情を描いた『ペタル ダンス』。本作のブルーレイ&DVD発売を記念し、若き演技派女優たちから絶大な支持を受けて本作を作り上げた石川寛監督に、直撃インタビューを敢行。『tokyo.sora』『好きだ、』に続く7年ぶりの新作で、女優たち自身の人生の一ページをのぞき見しているかのようなリアルな息遣いと、女性特有のデリケートな感情をとらえた石川演出の魅力に迫ります!
(取材・文:那須千里/撮影:高野広美)
女優たちとのコミュニケーションに欠かせない手紙
Q:演技を超えた生身の人間のやり取りを引き出すために、脚本にとらわれない即興的な演出を用いるそうですが、具体的にはどんなことをされたのでしょうか?
石川寛(以下、石川):毎日の撮影の前に、出演者全員にそれぞれ個別の手紙を渡していました。吹石さんは僕からの手紙を「ラブレター」と呼んでいたようです。(吹石さんの演じた)ミキが心の中で考えていることを推し量るような文面を、ラブレターのように感じてくれたみたいです。出演者のみなさんからは、その手紙への返事をカメラの前でもらったという感じでした。
また、映画の中であらかじめ何らかの関係を持った役を演じる役者さん同士には、事前に顔を合わせて話をしてもらいました。相手がどんな人なのかを知ることによって、自分の役についても知ってほしかったんです。それとは逆に、映画の中で初めて出会う関係の人たちは、撮影まで会わないようにしてもらいました。
含みのあるセリフが引き出す生のリアクション
Q:冒頭でジンコ(宮崎あおい※「崎」は正式には旧字。「大」が「立」になります)が川田(風間俊介)に言う「はしょらないで」というセリフが印象的です。ここはアドリブではなく脚本にも書かれていたそうですね。
石川:この映画は、どうしても「はしょらないで」という言葉から始めたかったんです。今まで出会ってきた女の人たちが、心の中で(男性に対して)「大事なことや言うべきことをはしょるな」と言っていたように感じられたので。最初は宮崎さんがこの言葉になじみがないようだったので、言いづらかったら言わなくてもいいと手紙に書いたんですが、それだとやっぱり自分が描きたかった女性像にならず、言ってもらうように変更しました。
Q:忽那さんの先輩役の後藤まりこさんが話す「さようならば」のエピソードも心に残ります。
石川:「さようならば」の語源には諸説あるんですが、そこから「ば」が取れて「さようなら」になったというのはどの説にも共通しているんです。でもそれが別れの言葉として使われるようになった理由ははっきりしない。後藤さんには、そのことをかみ砕いて自分なりに解釈した先輩の言葉として言ってほしいとお願いしました。逆に忽那さんには、その言葉を初めて聞いたリアクションを求めていたので、その「さようならば」という先輩からのひと言は伝えないようにしました。
後藤さんは、彼女が一人でカメラに向かってしゃべっている動画が面白くてオーディションに来てもらったんですが、普段から映画に出てくるままの感じに近い人です。僕は、キャスティングの資料として映画やドラマを観るときも、役者さんの演技より、その本人がどんな人なのかを考えながら観るようにしています。だからキャスティングにはその人自身の生き方や物事の考え方が大きく影響しているような気がします。
匠の技2:等身大の女の子をフィーチャーしたストーリー
Q:『tokyo.sora』から一貫して女性の気持ちに寄り添った作風なのはどうしてですか?
石川:男の人は同性という点で自分に近い存在なので、こういうときにはこんなふうに感じるだろうなあというのが、何となく想像がつくんです。それが女の人になると反応が僕の予想を超えたものになることが多い。同じ状況でも性別が違うとこんなふうに感じるんだ、だからこんなことを言うのかという発見の連続で、自分の書いた言葉でも自分にはない感じ方で言ってもらえる、それがとても魅力的に思えたんです。
Q:異性である女性の気持ちを描くコツは何でしょうか。
石川:身近にいる女の人からヒントを得たりしているかもしれません。昔から女友達の多いほうでしたし、姉がいましたので、家族の中でも姉や母親を通じて女性のことはよく見ていたと思います。そういう経験が作品につながっているのかもしれません。あと、自分があらかじめ考えていた言葉を相手がどう超えてくるかというところで、僕の撮影方法は、女性の方がより合っているような気もします。
匠の技3:ポイントは句読点!? 想像力をかき立てるタイトルの妙
Q:『tokyo.sora』『好きだ、』などユニークなタイトルが特徴的ですが、『ペタル ダンス』の由来はどこにあったのでしょうか?
石川:実は、僕の映画では初めてタイトルが先に決まった作品なんです。「ペタル」は花びらの意味で、英語だとちょっとカッコつけ過ぎな印象がありますけど、日本語のカタカナにすると耳慣れないその響きが新鮮ですよね。「ペタル ダンス」という言葉の組み合わせは脚本を書いているときに思い浮かんだもので、一度散った花びらが再び風で舞っているようなイメージだったんです。
花びらは、一ひらだけで舞うよりも、何枚か同時に舞う方が、観る人の心に何かが触れるんじゃないかと思いました。今回は1作目の『tokyo.sora』みたいに一人一人が点のように独立した存在の女の人たちをそれぞれに見守るオムニバス風の群像劇ではなくて、何人かの女の人が互いに関わり合う中でおのおの感じる心の揺れを描きたかったので、このタイトルが本編の内容に合うんじゃないかと思ったんです。
9月25日(水)ブルーレイ&DVD発売 DVD同時レンタル開始
発売元:バップ
貴重な舞台裏をキャッチしたメイキング(未公開シーン含む)や、女優陣4人の座談会など、映画の魅力をより味わえる特典映像を収録。特製ブックレットと青森のロケ地マップも付いた、観ると大切な人に会いたくなる一本。
- 発売元:バップ
- 東京で一人暮らしをする6人の女性たちの日常に潜む迷いや孤独を見つめた石川監督の映画デビュー作。映像詩のように美しい空の下、井川遥や本上まなみといった華やかな顔ぶれが女優としてのフレッシュな横顔を見せているのも見どころ。
- 発売元:バップ
- お互いに惹(ひ)かれ合いながらも「好きだ」のひと言が言えない高校生の男女の恋模様と、二人が再会した17年後の姿を描く。高校パートを宮崎あおいと瑛太、大人パートを永作博美と西島秀俊がそれぞれ演じた切ないラブストーリー。