第15回 ロッテルダム国際映画祭の魅力に迫る!
ぐるっと!世界の映画祭
オランダで開催されるロッテルダム国際映画祭は、若手監督の登竜門、またインディペンデント映画の祭典として毎年約35万人を動員します。映画『のんきな姉さん』(2004)の七里圭監督が、現地時間2013年1月23日~2月3日に開催された第42回大会に、短編『DUBHAUSE:物質試行52』を引っ提げて初参戦。今まで味わったことのない刺激を受けたようです。(レポート・写真:七里圭、編集・文:中山治美)
河瀬も三池もここから
1972年にスタート。商業、自主、実験映画と多様な作品を約700本も上映する。特に新人監督対象のコンペティション部門を筆頭に新鋭発掘には定評があり、河瀬直美監督『萌の朱雀』(1997)はココでの評判がきっかけにカンヌ国際映画祭への道を開いた。
また同時期に開催される企画マーケット、プロデューサー&若手批評家のセミナーなどの人材育成や交流の場を提供している。「1週間映画漬けの日々を送ってみたところ、つくづく世界にはいろんな映画があると実感。日本に入ってくる映画は何かしら“売り”があるものだが、そうではない映画も数多く製作されていることを知りました。特に、ウクライナの映像作家キラ・ムラートワの特集がユニークで面白かった」(七里監督)。
ハプニングも楽しむ
七里監督が建築家の鈴木了二と共同監督を務めた短編『DUBHOUSE:物質試行52』は、 鈴木の2010年の東京国立近代美術館でのインスタレーションを収めた記録映画だ。映画祭では、気鋭監督の最新作を集めたスペクトラム短編部門で上映された。「映像作家・牧野貴さんの勧めで応募しました。
わたしたちの作品は、真っ暗闇の中で目が慣れてきた頃にうっすら見える映像がポイントなのですが、途中入場のお客さんの席を捜すためにスタッフがペンライトを点けたために台無しに。こういうハプニングも映画祭ならではですが、上映後に『素晴らしかった』と声を掛けてくれた方も多数。フレンドリーでカインドネス。牧野さんが本映画祭を勧めた理由がわかりました」(七里監督)。
映画祭との面談で開眼
上映以外にも七里監督は、知人の映画監督からの「上映だけじゃダメ。積極的に何かをつかんでこい」というアドバイスの下、今後の展開についてアドバイスが受けられる、映画祭との個別面談に参加した。
「自分としては実験的な手法で劇映画を撮っているつもりだったのですが、欧米では一般映画と実験映画は完全に別。『どちらかはっきりさせないと戦略が立てられない』と言われました。ならば、“郷に入れば郷に従え”で今回は実験映画だと答えたら、ドイツのヨーロピアン・メディアアート・フェスティバル(4月24日~28日)を勧められ、参加してきました。アドバイス通りで全く商売っ気のない映画祭。規模は小さいけれど、プログラムは充実していました」(七里監督)。
モダニズム建築の宝庫
ロッテルダムは第2次世界大戦でドイツ軍の爆撃を受けたため、比較的新しい建物が多い。「街全体がモダニズム建築の実験場という感じで、どこを歩いても不思議な建物ばかりで魅力的でした」(七里監督)。
その街の至るところにあるのが揚げたてフライドポテトのスタンド。マヨネーズをたっぷり掛けて食べるのがオランダ流だ。「映画館から映画館へ移動しながら食べ歩くのが最高でした」(七里監督)。
またカフェ・ブラッスリーDudok(デュドック)は、映画祭関係者も集う人気店。名物はボリュームたっぷりのアップルパイで「オススメです」(七里監督)。
ロッテルダムの常連・小林政広監督もこの味を求めて足しげく通っている。
助成金で自己負担なし
ロッテルダムまでは、日本からアムステルダム・スキポール空港まで直行便で飛び、そこから電車か車で。映画祭ゲストには、空港からロッテルダムまでの送迎車が用意されている。
今回、七里監督は宿泊費3泊分が映画祭からの招待で、残り4泊分と交通費の計約15万円は自費。しかし文化庁が行っている「日本映画海外展開支援事業」に申請を出し、渡航費支援の審査が通ったため全額助成を得ることができた。詳細はユニジャパン公式サイトで。
作品募集中!
次回、第43回大会(2014年1月22日~2月2日)へのエントリーは、短編(60分以内)は10月1日、長編は10月20日まで受け付け中。
「特に気負う必要はありません。スタッフも街の人もとにかく親切。特に日本語ペラペラの通訳や、“エンジェル”と呼ばれるボランティアスタッフが語学のつたない日本人監督たちをサポートしてくれます」(七里監督)。エントリーの詳細は、ロッテルダム国際映画祭公式サイトで。