『鑑定士と顔のない依頼人』特集:表編&裏編~見方を変えれば180度違うストーリーに!?~
『ニュー・シネマ・パラダイス』の名匠ジュゼッペ・トルナトーレの最新作は、人嫌いで女性と縁のない美術品鑑定士が姿を見せない依頼人に心惹(ひ)かれていくミステリードラマ。オークションや美術品を背景にした甘美で絢爛(けんらん)な物語のようだが、その正体は予測不可能な裏の顔を持った衝撃作だ。まずは表のストーリーを注意深くチェックし、待ち受けるドンデン返しの衝撃度をさらに大きなものにしよう!
自身がオークショニアを務める競売で、狙いを定めた美術品の真価を公表せずに価格を操作。落札者を装った画家崩れの友人ビリー(ドナルド・サザーランド)とタッグを組んでは、それらを安値で落札して秘蔵コレクションを増やすヴァージル(ジェフリー・ラッシュ)。巧みな采配で値段を操る彼と、あうんの呼吸で落札するビリーの名コンビぶりが痛快だ。
依頼人クレア(シルヴィア・ホークス)の屋敷地下で見つけた金属部品を、ヴァージルは修理店主ロバート(ジム・スタージェス)に調査させる。すると、それが希少な18世紀の機械人形のものであることが判明。屋敷で部品を集めるうちに募らせるクレアへの恋心、恋多きロバートの歯に衣(きぬ)着せぬ恋愛指南を受けながらの機械人形の修復と、重なるように進む双方のプロセスに引き込まれる。
姿を見せない割に、気まぐれな言動でヴァージルを振り回すクレア。「広場恐怖症」を患っていることを知り、何かと面倒を見るうちに、ヴァージルにとって彼女は掛け替えのない存在に。患者のように扱われるのをかたくなに拒絶するクレアが、真摯(しんし)な彼の思いに固く閉じた心を開き、「女」として接していくさまが胸を打つ。
クレアの屋敷を一望するカフェに居座り、意味不明な数字や言葉をつぶやく女を不審がるヴァージル。だが、彼が暴漢に襲われているのを目撃して通報しようとするところを見ると、どうやら悪人ではなさそう。店の窓際で屋敷を眺めていることが多く、ヴァージルは突然姿を消したクレアの動向を彼女に尋ねるが……。ミステリアスな恋の行方を握る重要人物!?
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